『生物はなぜ死ぬのか』  書籍関係

[書籍紹介]

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著者の小林武彦氏は、1963年生まれの生物学者
生物学者の立場から「生物はなぜ死ぬのか」という命題に挑む。

目次は
                                     
第1章 そもそも生物はなぜ誕生したのか
第2章 そもそも生物はなぜ絶滅するのか
第3章 そもそも生物はどのように死ぬのか
第4章 そもそもヒトはどのように死ぬのか
第5章 そもそも生物はなぜ死ぬのか

宇宙の始まりと拡大から始め、
生命の誕生と進化、
そして、「死」という生物の最後の到達点までの
意味を探ろうという壮大な試み。

とても新書で扱うような内容ではないが、
新書的に平易に、分かりやすく展開する。
それでもDNAやRNAなどの領域の
専門分野に入ると、
読者の能力の範疇を越える。

そこで、読んでいて、興味をそそられた内容を挙げることにする。

○生き物は、進化が作ったもので、
死も進化が作った生物の仕組みの一部
(どうやら、筆者の言う「生き物」とは、主に動物のことらしい。)

○生き物の死に方には大きく分けて二つあり、
一つは食べられたり、病気をしたり、飢えて死んだりという、
「アクシデント」による死。
もう一つの死に方は、「寿命」によるもの。
一般的に自然界では、大型の動物は「寿命死」が多く、
小型は「アクシデント死」によるものが多い。

○小型の生き物は食べられて死ぬことが多く、
ある程度食べられても子孫が残せるくらい
沢山の子供を産む個体が生き残った。

○「寿命」という死に方は、実はなく、
死亡診断書に「寿命」とは書かれない。
実際は老化による老衰死

○原生生物のミドリムシは、細菌のように分裂で増えるが、
興味深いことに老化する。
ゾウリムシは1日に3回ほど分裂するが、
約600回分裂すると、老化して死んでしまう。
つまり200日が寿命。
ただ、他の個体と「接合」すると、
リセット(若返り)して、
また0回から分裂のカウントダウンが始まる。

○地球には、名前のついているものだけでも
約180万種の生物種が存在する。
その半分以上の約97万種は昆虫
最も進化して複雑化した生物が昆虫。

○昆虫の幼虫の仕事は、食べて大きくなること。
成虫になった昆虫の仕事は、生殖。
生殖が終わり、産卵の後は、バタバタと死んでいく。
人間のような老化期間はない。
                                        
○人間ほど寿命が変化した生き物はいない。
旧石器〜縄文時代(2500年前以前)の
日本人の平均寿命は13〜15歳。
(平均だから、それ以上長く生きた人はいる)

○人間の体内には、
細胞を死なせるプログラム
遺伝子レベルで組み込まれている。

○生き物にとって、死とは、進化
つまり「変化」と「選択」を実現するためのもの。
「死ぬ」ことで生物は誕生し、進化し、生き残る
生き物が生まれるのは偶然だが、
死ぬのは必然
壊れないと、次ができない。

○死は生命の連続性を維持する原動力
奇跡的に生まれた命を次の世代へと繋ぐために死ぬ
命のたすきを次に委ねて「利他的に死ぬ」。

というわけで、
「生物はなぜ死ぬのか」という問いに対する回答は、
意外と哲学的な内容になっている。

細菌のレベルから始めて単細胞動物から
多細胞動物になり、
組織を体に持つようになり、
様々な進化の過程を経て、
人類が生まれ、
その「死」をも思うようになった。
奇跡と言える。
その奇跡を引き継いだ者として、
死を受け入れていかなけれはならない。

4日前のブログ「シグナル」で
広大な宇宙の観点から地球の生命をみつめたが、
こちらは、その細胞レベル、DNAレベルからの考察。
生命にあふれる地球は、まさに「奇跡の星」
「シグナル」の中で述べたように、
数々の偶然が生んだ地球の特殊性。
天の川銀河におけるロケーション。
太陽系の位置。
太陽の適度な大きさと寿命。
地球の外側の軌道の質量の大きな惑星、木星と土星の存在。
月の果たしたスタビライザーの役目。
地球の内部構造。
二酸化炭素という温度調整システム。
地球の大きさ、大陸の存在、酸素や水の量。
どれ一つが欠けても、人類はこの星で文明は築けなかった。

その奇跡の星に生を受けたものとして、
生命を謳歌し、死を受け入れよう。





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