小説『ヒート』  書籍関係

[書籍紹介]

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堂場瞬一による駅伝小説「チーム」の続編
しかし、今度はマラソン小説
「チーム」の登場人物の山城悟(やましろ・さとる)が主人公。

神奈川県知事の松尾が神奈川県内を走るマラソンレースを発案する。
その名も「東海道マラソン」
目的は、日本男子マラソンの長期低迷傾向に歯止めをかけるためで、
そのために記録の出やすいコース設定を命令する。

その特命を受けたのが、
県教育局スポーツ課の職員音無太志(おとなし・ふとし)で、
箱根駅伝で走ったことがある、ということが人選の理由。
知事との面談で、
知事から「世界最高記録で日本人選手を優勝させろ」
という命令を受けた音無は、
その条件を3つ挙げる。

@超高速コースの設定
A勝てるランナーの招請
B強いペースメーカー

音無は地図と首っ引きで@の高速コースを模索する。
その結果、直線が多く、
高低差も最大5メートルの平坦コースを選定する。

Aは、山城に白羽の矢を立てる。
「チーム」の箱根駅伝の後、
初マラソン日本最高記録を打ち立てた男で、
世界最高記録に最も近いところにいる。
しかし、「チーム」時と同様、
超個人主義で、
我儘で究極の利己主義者、
傲慢な性格のため、
ベルリンマラソンを標的にした自分の予定を変更する気配は見えない。

「誰かのために走ろうなんていう考えは、
陸上に対する侮辱ですよ。
自分のためだけに走ればいいんです。
それ以外は、全部嘘だ。
誰かのために、なんて言っている奴は、
自分を欺いている」


Bのペースメーカーは、
甲本剛(こうもと・ごう)に交渉する。
ペースメーカーとは、
マラソンの序盤、先頭に立って
30キロあたりまで                               
ハイスピードで選手を引っ張る役割の走者。
(たまに、完走してしまい、その上優勝、なんていう珍事も起こる。
そのため、契約書に、
完走しない、という項目を入れるともあるという。)

当然30キロまでは、
マラソンランナーより早いペースで走れる人でなければならず、
ハーフマラソンの日本最高記録保持者の
甲本は最適だったが、
甲本は拒絶する。
裏方で記録は残らず、途中で消える役割なんて、
何のためになるか、
自分は現役のランナーだと。
しかし、音無は甲本に1千万円の報奨金を提示する。
甲本は不遇のランナーで、
所属したチームが立て続けに解散の憂き目にあい、
早朝の弁当工場でのアルバイトをしている身なのだ。
金は欲しいが、プライドが邪魔をする。

音無は、コースを入念に検査し、
風対策として看板を立てるなどして、
世界最高記録を出すためのコース作りを腐心する。
先導の白バイに電光掲示板をつけて
タイムを1キロごとに知らせたりする案も立てる。
それもこれも、
山城に世界最高記録を出させるためなのだ。

物語は、頑なな山城がレースに出るかどうか。
プライドに拘る甲本がペースメーカーを引き受けるかどうか、
を焦点に展開する。

最終的に、二人は受け入れる。
そうしなければ、小説が進展しないからね。
その話の展開のために、「チーム」の重要な登場人物、
山城と一緒の学連選抜チームで10区を走った浦大地(うら・だいち)と
選抜チームの監督をした吉池が登場する。

そして、後半3分の1の150ページは、
レースの描写。
自身マラソンランナーではない堂場が、
よくこんな描写が出来るものだと、
小説家の想像力に感心する。
それほど、レースの描写は、熱い。

実は、山城と甲本には、
それぞれ、レースについての思惑があり、
それは30キロを過ぎたあたりで明らかになるはずだ、
というサスペンスもはらむ。

そして、最後は、すさまじいデッドヒートが展開され、
ページをめくる手が止まらない。

結果は・・・
実は、本篇では結果が書いていない。
それは、続編の「チーム2」の冒頭で明らかになるのだが・・・

編中、男子マラソン低迷の原因として、
駅伝のことがやり玉に挙げられているのは、
注目に価する。
知事の松尾の指摘。

「各大学の陸上部は、箱根駅伝に焦点を合わせて調整する。
その結果、どうなる?
20キロしか走れないランナーの出来上がりだ」
箱根駅伝出身で、
マラソンで成功した人間がどれぐらいいると思う?
あれだけたくさんのランナーが走るのに、
数えるほどだぞ。
箱根で頑張り過ぎると、
マラソン転向に失敗するんだ」






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