小説『銀花の蔵』  書籍関係

[書籍紹介]

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奈良の古い醤油蔵の物語。

冒頭、蔵の立て替え工事で、
床下から子どもの白骨死体が発見される。
それを見た、主人公の銀花が
「座敷童」(ざしきわらし)とつぶやく。
幼い頃、父から聞かされた話が蘇る。

「蔵には座敷童がいるんや。
座敷童が見えるのは、山尾家の当主だけ。
つまり、座敷童を見た人間は当主の資格があるということや」

銀花には、座敷童を見たことがあった。

というプロローグの後、
話は1968年に飛び、
小学生だった銀花の一家が大阪の文化住宅から
奈良の実家の「雀醤油」に引っ越して来るところから物語は始まる。
そう、銀花の50年の半生の話だ。

銀花の父は・尚孝は売れない画家。
醤油蔵を継ぐのがいやで画家になったが、
先代が亡くなったのを受けて、
雀醤油を継ぐために戻って来た。
母・美乃里は美人だが世間知らずで、
その上、盗癖がある。
ただ、料理の腕だけは確かで、
尚孝の好きなものを作るのが大好きだ。

雀醤油は、昔は大きな醤油蔵だったが、
時代の流れで縮小し、
今では杜氏の大原と尚孝の母・多鶴子の二人だけで回している。
歳の離れた尚孝の妹の桜子
(銀花の叔母に当たるが、一学年しか違わない)がおり、
美人だが、驕慢な性格で、
婿を取って蔵を継ぐのなどまっぴらだと言っている。

この老舗の醤油蔵を守るための
多鶴子や銀花の奮闘を描く。

時代背景として、大阪万博やオイルショックなどが描かれる。
上野の東京国立博物館に「モナ・リザ」が来た時の騒動にも触れる。
暴走族や、1975年の「シクラメンのかほり」のヒットなども出て来る。

尚孝と大原は川で溺れて死に、
雀醤油には、4人の女が残される。

いつも厳しい顔をした「きりきり」の多鶴子と、
夢見がちの「ふわふわ」の母、
女王様のように気位が高い「つんつん」の桜子、
そして、能天気な「へらへら」の銀花だった。


特に、母の美乃里の造形が面白い。
やがて美乃里の過去と銀花の出自などが明らかになる。
銀花が見た「座敷童」の真相も明らかになる。
更に、床下の子どもの死体の謎も・・・

全体的に不幸満載の暗い話だが、
銀花のキャラクターで、明るく、温かい雰囲気の小説だ。
昭和から平成の50年以上の、
その前も合わせれば4世代にわたる話で、
テレビドラマの原作のように見える。
だが、小説を読むコクには欠ける。

醤油の製造方法も説明があり、
酒蔵の酒の仕込みは年1回だが、
醤油蔵は、真夏を除き、春秋冬ほぼ隔月で仕込みをする、
など、知識も増えた。
大手醤油メーカーの攻勢で、
地方の中小メーカーの苦しい事情も知れた。

遠田潤子の書き下ろし。
先の直木賞候補だが、選ばれなかった。





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