『介護のうしろから「がん」が来た!』  書籍関係

[書籍紹介]

クリックすると元のサイズで表示します

認知症の母につき合って二十余年、
母がようやく施設へ入所し、
一息つけると思いきや、
今度は自分が乳がんに!?

という実体験を
直木賞作家が綴ると、
かくも面白い読物になる、という本。

目次

発見
入院まで
再建の決断
手術
院内リゾート
退院
手術後25日の海外旅行
日常復帰
二度目の手術へ
解禁
乳房再建その後
波乱含みの年明け
介護老人保健施設入所の経緯
ホーム巡礼 八王子十四ヵ所
ここは絶海の孤島!? パラオ
グループホームに引っ越し
エッセイは終わっても人生は終わらない
“特別対談”篠田節子×名倉直美(聖路加国際病院・形成外科医)

というわけで、
がんの発見から入院、切除手術、再建手術
克明に綴る。
さすが作家、体験を観察し、
書籍にしてしまうのだ。
62歳、子どもなしの篠田節子だから出来るわざ。

私は男だから、
乳がんにはならないし、
身近にも乳がんの人はいないので、
ああ、そういうものか、と参考になった。

乳ガンになると、様々な選択が迫られる。
まず、治療法の選択。
抗ガン剤か、放射線治療か、手術か。
手術でも、切除手術か温存手術か。
切除した場合、再建手術をするかどうか。
篠田さんは、切除で再建、を選ぶ。
シリコンを入れる再建手術を選んだのは、
プールで泳ぎたいから。
水着の中にパットを入れて泳いで、
そのパットが取れて、
水の上にぷかぷか浮かぶ、
というのはいやだから、と。

切除手術は4泊5日。
再建手術は約半年後に2泊3日。
その間のあれこれを興味深く綴るのは、やはり作家魂。

聖路加病院の都市伝説というのがあって、面白かった。
聖路加病院は全室豪華なセレブ個室で,帝国ホテルより高い、
というのは嘘。
スタンダードで差額ベッド代は3万円は相場。
国立がんセンターや虎の門病院でも同じ位で、
帝国ホテルはもっと高い。
食事が豪華で、希望すれば
最上階のフレンチレストランから取れる、
というのも嘘。
普通の病院食で、
そもそも病院の最上階にレストランなど存在しない。

中高年飲み会で
盛り上がる話題は「病気と健康法」といを話も面白かった。

だが、そこには明確なヒエラルキーが存在する。
何といっても重い病ほど偉い。
がんの転移をあちこちに抱え、
「明日からまた抗がん剤だぁ」とぼやきつつ、
生ビールを追加注文し、
元気に楽器を奏でるおっさんの前では、
狭心症持ちも、脳梗塞後遺症持ちも、
乳がん手術一カ月目も、
鬱サバイバーも、だれも大きな顔はできない。


介護のうしろから「がん」が来たかと思ったら、
今度は前から介護の問題が再び迫って来る。
というのは、施設に入れた認知症の母親が問題を起こし、
退所をうながされ、
引き受けてくれる介護施設を探さなければならなくなったからだ。
これがなかなか大変。
とにかく順番待ちの施設ばかり。
認知症はわがままだから、入ったからといって、
うまく適用できるとは限らない。
年寄りは変化を嫌う。

などという乳がんと介護に関する実話を
篠田節子一流の前向き姿勢が乗り越える。
とにかくへこたれない。
根底にちょっと暗めなユーモアが漂う。
どんな状況でも、仕事(小説)はきっちりこなす。
いずれにせよ、この人、なんだな、と思う。

最後に書くことが厳しい。

世の中には自称専門家の手による
認知症理解を訴える啓蒙書、
美談を重ねて在宅介護を
精神論で乗り切れると誤解させる
タレント本や雑誌記事、
介護に絡ませて家族愛を謳い上げる小説やドラマ、
マンガまでが溢れている。
そんなものをいちいち糾弾する気はない。
議論する気もない。
今のところ現実への対応で、手一杯だ。
一冊の本と違い、
人生は死ぬまで終らない。
悲劇も喜劇もオチもない。






AutoPage最新お知らせ