ドキュメンタリー『運命の子供たち』  映画関係

[映画紹介]

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インドのタミルナド州にある
シャンティ・バヴァン寄宿学校を描く
Netflix のオリジナル・ドキュメンタリー。

シャンティ・バヴァン寄宿学校は、
インドの1日2ドル以下で暮らす
「最下層民」(ダリット)と呼ばれる人々の
子どもを対象に教育をほどこす施設だ。

毎年、3つの州から選んだ4歳の男女を
12人ずつ計24人受け入れ、
入学初日から就職するまで
手厚い支援を提供している。
生徒は人身売買される直前の子供や
ゴミ拾いで生計を立てている家の子供たちだ。
最下層民の子供たちにチャンスを与え、
社会の指導者となる人材を育てるのが目的だ。
広く恩恵を及ぼすために、
一家族に一人という制限がある。

その支援期間は14年に及ぶ。
全員寮生活で、年に2度しか家には帰れない。
学費は全て学校持ちだ。
教育は全て英語で行う。
英語が世界への道を広げるからだ。

創設者は、
アメリカの企業家、ファブラハム・ジョージ

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若い頃から貧しい人々に手を差し伸べたい思いを持っていた彼が、
銀行勤めの後、会社を起こし、
25年ほど前、49歳の時、
自分の会社を売却した資金で創設した学校。
当初はいろいろな噂が広がったという。
子供たちの臓器が売られるとか、
キリスト教に改宗させられるとか。

その理念は、
子供を一人救えば、
その子が何百人を救う

国のリーダーになるかもしれない、というもの。

映画は、生徒の中から年長の4人と

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年少の1人を選び、その足跡を辿る。

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原題が「Daughters of Destiny」とあるように、
このドキュメンタリーで焦点が当てられているのは、女子だ。
男女差別が激しいインドでは、
女性の自立が必要だから。

ナレーションはなく、
必要に応じて字幕で説明されるのみ。
ほとんどが5人のインタビューと、
園長、事務局長、教師たちのインタビューのみで構成する。

家に縛られていた子供たちが
初めて広い世界を知り、
その驚きの中で成長する姿が描写される。
時には女子だけ集められて、
生理について教える場面などもある。
また、成績が上がらず、悩む場面や
共通試験を前に緊張する姿も描かれる。

特に後半、年長の4人に卒業が訪れた後を克明に描く。
それぞれ奨学金で大学に進み、
政治学、看護学、法律、ジャーナリズムを学ぶ。
都会に出ての生活の戸惑い、
裕福な学友たちとの格差、
などが描かれた後、
就職の時を迎える。

彼女たちの願いは、
いい大学に進み、
いい仕事を得て給料を稼ぎ、
家族に楽をさせてやりたいというものだ。

創立者の資金はじきに枯渇し、
それを息子の事務局長、アジッド・ジョージ
資金調達で支える。

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経費削減を相談する会議なども出て来る。

家に帰った時、
家族の窮状に胸を痛める彼女たち。
なにしろ、茶を買う金もないほどの貧しさなのだ。
ある母親は、マッチの中箱を作る内職を延々と続ける。
ある母親は採石場で力仕事だ。
ある母親は「私の人生は問題ばかり。
幸せなんかなかった」
と言う。
ある生徒は
「チャンスを生かして家族の生活を変えてみせる」と断言し、
他の生徒は、
「私が前に進むのを邪魔するのは
いつも家族だったように思う」
と嘆く。

学校に入れた姉をうらやみ、
その後、自殺してしまった妹の話も出て来る。
そのことで言い争う家族の姿には涙を禁じ得ない。
どの母親も、娘の幸福を願って、
そのために犠牲をいとわない。
インドの母の心情に触れると胸が震える。
                                        
背景には、インドの階級制度(カースト制)と
極度の貧困、それに男女差別がある。
家にいれば、習慣や因習で埋没し、
親と同じ生活を強いられる子供たちに
まず必要なのは、教育だ、というわけで、
学校では徹頭徹尾学習が義務づけられる。

困難の中、貧困から抜け出せるのは、教育だ、
の信念のもと、
邁進する創設者の姿がまぶしい。
映画の公開時、彼は70歳だ。
既に息子に任せることを考えている。

彼は言う。
「シャンティ・バヴァンの未来は卒業生にかかっている。
いずれ彼らが運営するだろう。
何百年も続いてくれるよう願っている」
                                        
「“最下層民”と呼ばれる人々は
インドに3億人存在する。
シャンティ・バヴァンの卒業生たちは
法律、報道、医療、ITなどの職に就いた。
彼らは家族の中で初めて
自由を手にした者たちとなった」

そして、次の彼の言葉が含蓄深い。

「運命や宿命は信じない。
でも子供たちの出自を考えると、
両親と同じ運命を感じてしまう。
我々の使命は、
その連鎖を切ること。
両親が負った運命を断ち切ることだろう」

その時、
「運命の子供たち」の題名が深く胸に刺さる。

生まれる国と親は選べないというが、
生まれた以上、
その運命を受け入れなければならない。
しかし、その運命から抜け出すことを助ける
こういう学校もあるのだということを訴える、
必見のドキュメンタリーだ。
世の中には、偉い人がいるものだ。

監督はバネッサ・ロス

1話が大体1時間。
4話で4時間かかる。

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