映画『オフィーリア 奪われた王国』  映画関係

[映画紹介]

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シェイクスピアの「ハムレット」を
ハムレットの恋人、オフィーリアの側から描く
という意欲作。

オフィーリアを演ずるのは、
デイジー・リドリー

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そう、あの「スター・ウォーズ」新シリーズで
レイを演じたフレッシュな女優さんだ。
「スター・ウォーズ」以外は出演作は数えるほどなので、
まだ新鮮なうちに、
シェイクスピア作品のスピン・オフ作品に出るというのは、
好企画だし、選択は正しい。
ただ、この人、
口の形が時々下品になる。

物語の前半は、前日談で、
貧しい出身のオフィリアが
どうやって王妃の侍女になったか、
ハムレットとどのようにして恋に落ちたかが描かれる。

そして、先王(ハムレットの父)が毒殺され、
その王の死に疑問を持ったハムレットによる復讐物語となって、
本来の「ハムレット」に戻る。

誰でも知っている有名な作品を
別の角度から描く、
というのは、よくある手だが、
「ハムレット」に関してはまだなく、
斬新さが期待された。

しかし、出来映えは、
オフィーリアの側から描くという意図が
有効に生かされたわけではなく、
平凡な出来に終った。

というより、妙な改変がされていて、
「ハムレット」を愛する人にとっては、
トンデモ作品になっている。

以下、どんな風に改変されたかを述べるが、
実際にこの作品を観て、
驚きたい方は、
以下は、読まないで下さい。

まず、

○オフィーリアは大臣ポローニアスの娘のはずだが、
貧しい平民の出身、となっている。
ガートルードに気に入られて侍女になる。

○原作では、ハムレットが先王の亡霊と会って、
毒殺されたことを告げられるのだが、
その亡霊の場面はなし。
オフィーリアのもたらした「魔女」の情報により、
ハムレットは毒殺の疑いを抱く。

○この「魔女」、実は森の奥で営業する毒薬使いで、メヒティルトといい、
原作にはなく、この映画の創作人物
ナオミ・ワッツが王妃ガートルードとメヒティルトの両方を演ずるように、
このメヒティルトはガートルードと姉妹関係(双子)。
それだけでも驚くのに、
ハムレットの叔父クローディアスの子供を妊娠、流産していて、
村人に追われた際、毒薬を3滴だけ飲んで仮死状態となり、
生き延びたという過去がある。
クローディアスが先王を殺す毒薬は、メヒティルトから入手する。

○ガートルードは先王が亡くなってから、
王位を継承したクローディアスと結婚するのだが、
先王の存命中から不倫を匂わせており、
オフィーリアに目撃されている。

○オフィーリアはハムレットではない別の男と結婚させられる。

○改変ではないが、ハムレットは最後までチンピラみたいで、
これは演じたジョージ・マッケイ(「1917 命をかけた伝令」の主役)のせいか、
苦悩する王子、という雰囲気はなし。
従って「to be, or not to be 」というセリフの場面はない。

○他の有名なセリフ「尼寺に行け、尼寺に」
はあるが、字幕では「修道院に行け」となっていた。
「尼寺」とはニュアンスが違う。

○母のことを言う「弱き者、汝の名は女なり」はない。

○オフィーリアの錯乱は、相手の目をくらます偽装ということになっている。

○最後のくだりで、
クローディアスを殺すのはハムレットでなく、ガートルード。
クローディアスの胸に深々と刀を刺して殺す。

○ガートルードは毒入りの酒を誤って飲むのではなく、
クローディアスを殺した後、
毒薬をあおって死ぬ。

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○そして、最大のびっくりは、
オフィーリアは川に流されて溺死する前に
毒薬を3滴飲んで、仮死状態になり、
ホレーショウへの謎かけ言葉で棺桶を開けてもらう。
(「ロミオとジュリエット」の応用?)

○その後、修道院に逃れて、
そこでハムレットの娘を産んで
平穏に暮らす。
うへ〜。

というわけで、
「ハムレット」を大胆に脚色、
といえば、聞こえはいいが、
名作のエッセンスを生かせず、
ただ変えただけでは思いつきの範囲。

ナオミ・ワッツは無駄使いだし、
クローディアスのクライヴ・オーウェンも精彩なし。
監督は女性監督のクレア・マッカーシー

2018年の作品だが、
出来が悪かったせいか、
日本では未公開。
WOWOWで放送された後、
DVDになった。

なお、オフィーリアは画家の題材として魅力があるらしく、
いろいろな芸術家によって描かれている。

一番有名なジョン・エヴァット・ミレイの作品。

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ポール・アルベール・ステック

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ウジューヌ・ドラクロワ

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ジュール・ジョゼフ・ルフェーブル

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マーカス・ストーン

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アーサー・ヒューズ

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ジョルジュ・クレラン

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トマス・フランシス・ディクシー

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アレクサンドル・カバネル

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タグ: 映画

マスク文化  様々な話題

マスク

つい最近まで、
日本に来たアメリカ人が驚くことの一つに、
日本人のマスク姿があった。
花粉症対策や風邪ひきのエチケットだと説明すると、
「へえー」と感心する一方、
「日本らしいね」と、
日本の文化の一つとして片づけられてしまった。
アジアでは結構マスク姿はあるにもかかわらず。

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その根底には、「カッコ悪い」と、
マスク姿を見下している雰囲気があった。
鼻の高い欧米人には、
マスクが邪魔になり、
その点からも、鼻の低い東洋人独特の習慣と思われたらしい。

ところが、今は、
アメリカでもヨーロッパでも、
マスクをするのが当たり前になった。
公人でしていないのはトランプ大統領くらいだ。
これでトランプ大統領がコロナに感染したら、
何を言われるのだろう。

かつては、アメリカではマスクを着けている人は
「病気持ち」だと思われていた。
のみならず、「病院から脱走したのではないか」とさえ言われた。

顔を隠すのは、犯罪者のしるしだと思われた。
昔の銀行強盗のイメージだ。
「顔を覆うことは、顔の表情が分からないため、よくない」
というのが共通認識だった。

「正義の味方は目を隠し、悪役は口を隠す」と、
口を隠すのは元々悪いやつの代名詞だという。
口元を隠す悪役=イスラム過激派という感覚さえある。

欧米人は相手の口元を見て相手の感情を推し量るため、
マスク着用は嫌悪感が生まれ、
これまでマスク着用は嫌がられた。
一方、日本人は相手の目を見て感情を読み取るため、
サングラスを掛けられると嫌悪感を覚える。

日本では逆にサングラスは接客にふさわしくない、
というイメージがある。
不良や反社会的勢力と思われたりもする。
「自分の目の表情を相手に読まれたくないから
サングラスをしている」
ととらえられ、
「やましいことがある人」
「何かを隠している人」と見なされたりする。

オーストリアでは、
2017年に
公の場で顔を覆ってはならないという法律ができたため、
マスクの着用も原則禁止だった。
コロナウイルスの蔓延により
今年4月からはスーパーマーケットなどでのマスクの着用が
法律で義務づけられており、
「顔を覆ってはいけない」を覆すものとなっている。

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WHOは最初、「マスクは予防の役に立たない」と言っていた。
アメリカでも、「高機能マスク(N95)以外は予防にならない」
と言われていた。
ウィルスのサイズに比べてマスクの隙間のサイズ差から
「科学的には無効」ということだった。
しかし、ウィルスは単体では存在できず、
空気中のダストや飛沫に付着して浮遊するのだから、
マスクの繊維格子でそのダストや飛沫粒子を捕捉できる。
マスクが効果ないはずが無いのだ。
こうして、
「全くしないよりした方がいいかもしれない」という考えが広がり、
4月初めにアメリカ疾病対策予防センターが
マスク着用を勧めたこともあり、
マスクをする人たちが一気に増えた。

州によっては、マスク着用が義務づけられた州もあり、
そういう決まりがなくとも、
マスクをしていないと周囲から厳しく注意されることもあるという。

フェイスブック上では、「バカティー」という名のTシャツが売れ出したという。
Tシャツには2匹のウサギが描かれ、
マスクをしている1匹が、
着けていないもう1匹を引っぱたいている絵柄で、
すぐ下には「Baka!」と書いてある。
マスク文化だけでなく、日本語まで同時に「輸入」したのが笑える。

マスク文化を基本的には排除してきた欧米だが、
新型コロナウイルスの登場により、
そんなことも言っていられなくなったのだろう。
命の方が大切だからだ。
新型コロナウイルスにより、
世界のいたるところでマスク着用がスタンダードとなってしまった。

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こうしたマスク文化について、ネットでは、次のような意見が出ている。

○日本があれだけ早くから感染が始まって、
非常事態宣言も最も遅い4月になってから発信したのに、
それほど深刻な事態に陥らなかったのは、
元からマスク文化があったからなのは明らかでしょう。
特にインフルと花粉のシーズンで、
コロナ関係なしにマスクをしている方が多かったので、
よりコロナ感染が防げた面は大いにあると思います。
日本人はどうしても自身のことを卑下しがちですが、
今回に関しては明らかに欧米諸国とは
感染のスピードも深刻さも違っています。

○マスクというものは、元々感染しないためにかけるものではなく、
他人に感染させないためにかけるものだ。
つまり公徳心から、
他人様に迷惑をかけないようにと言う配慮から
かけるものであって、利己的な目的のためにかけるものではない。
日本の、この公徳心というのが、
海外にはなかなか理解して貰えないし、
マスクをかけるというこのひと事も
本来の意味が理解されない。
文化の違いと言えばそれまでだが、
利己主義が中心の欧米文化と、
公を重視する日本の文化の違いだろう。

○人様に迷惑かけないようにしなさいと小さい頃から言われてれば、
咳やくしゃみしたらマスクしないとと思う。

○日本人の私からすれば咳しててもマスクしない文化の方が異様。

○マスクをする以外にも、靴を脱ぐ習慣、
ウォシュレットやハンドドライヤーの普及、
除菌ハンドソープなど、
日本人はキレイ好きなんだと思います。
また、欧米人は握手やハグをするし
顔を近づけて話をしますが、
日本人はお辞儀して間合いをとります。
日本人の習慣や文化が、結果的にですが、
ウイルス感染に対してはいいほうに作用しているんだと思います。

○外から帰ってきてそのまま土足で室内を歩く、
ろくに手も洗わず風呂やシャワーも数日に一回、
友人知人と会ったらハグ、
会話は面と向かって大きな声で。
どれもこれもコロナの拡散を招く行為ですね。

○マスク文化、栄養あるバランスの良い食事(食育) 、
掃除文化(衛生面が良好) 、お辞儀で挨拶(人に触らない) 、
物静かな日本語(デカイ声で話す英語やラテン語話者より唾が飛びにくい) 、
国民健康保険の特権(初期段階で病院にかかれる)、
土足禁止文化に風呂文化うがいに手洗いは普通に言われなくとも日々のルーティン、、、などなど。

○WHOがマスク不要論を延々と唱え続けたせいで
マスク習慣のない国で爆発的に感染が広がりましたね。
武漢肺炎に関するWHOの罪は果てしなく重いことばかり。

○現時点では、日本は、欧米式のロックダウンもせずに
緊急事態宣言のみで感染者数も死者数も桁違いに少ない状況だ。
この状況でとどまれているのは、
マスクがすべてだとは思わないが、
マスクをする日本人を嘲笑していた欧米人は忸怩たる思いであろう。たぶん。
3月から欧米でロックダウンが進む中、
ロックダウンをしない日本政府の対応の甘さを
上から目線で批判していた「欧米在住の日本人たち」。
現在、この状況を彼らはどう見ているのか。ぜ
ひ聞いてみたい。

○むしろ報道とは真逆に徐々に日本の動きは評価されつつあります
当初の乗船の客を隔離したことについて批判されていましたが
「感染力の高さ」が知られると「あの判断は正しかった」と
アメリカでも同様に「船から客を降ろさない」
隔離という対処をしています

○利権疑惑など国民の怒りを買ったマスク配布ですが
結果は「転売屋のマスク買い占めを阻止」に成功
フランスが追って
「国民全員にマスクを配布する」ことが決定。
イギリスでは「CTで確認して疑いがある人を優先的にPCR検査をする」
という日本式の手順を
「非常に効率的である」と評価したことが記事に。

○「やっと気づいたか」という感じもあるが、
そう思うようになってきてもらえたのは、素直にうれしいかな。

○マスクに対する偏見が無ければ
米国人の死者はここまでひどくなかっただろう。
他人事ではなく他文化や習慣を自身に当てはめて
論理的かつ合理的に取り入れる寛容さは大切と感じた。

○日本の立派なところは
欧米のマスク批判に屈しなかったところ、
今では世界的にマスク文化は普及しつつあるが
それでも日本は「それみたことか」とも言わない、
きわめて冷静というか無関心だ。


小説『とめどなく囁く』  書籍関係

[書籍紹介]

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桐野夏生の新聞連載小説。
東京新聞他4紙に2017年8月から2018年9月まで連載。

塩崎早樹、41歳は、
相模湾を望む超高級分譲地「母衣山庭園住宅」の山頂の
豪華な邸宅で暮らしている。
夫の塩崎克典はゲームソフト会社を経営していた資産家で、
今は息子に代を譲って、悠々自適だ。
早樹とは、フリーライター時代に経営者訪問の取材で知り合い、
その後、食事を共にするようになり、結ばれた。
克典は前妻を病気で亡くしたが、
必ずしも妻に時間を割いていたわけではなく、
その罪滅ぼしのように、早樹と一緒に時間を過ごしていた。

早樹は、8年前、
前夫の庸介が釣りに出かけた海で行方不明になり、
ついに遺体があがらなかったため、
中途半端な状態でいたが、
7年経って死亡認定されたのを契機に克典の求婚を受け入れた。
克典には、息子と二人の娘がおり、
長女の亜矢は神戸に嫁いでいたたため、
数えるほどしか会っていない。
長男の智典の妻・優子と次女の真矢は早樹と同い年で、
真矢は早樹の結婚式にも出席せず、
まだ早樹は会えずにいた。

早樹は夫から大事にされているようで、
実は静かな支配の中におり、
老成したような暮らしをしていた。
相模湾をのぞむ眺望と
広い庭の屋敷での暮らしは、
早樹にとっては安楽なものそのものだった。
再婚して2年目、
そろそろ仕事をしたいという願望も頭をもたげるが、
克典には、まだ遠慮していた。
自分はリタイアした克典の相棒として
迎えられたと思っているからだ。

ある日、もう縁遠くなったはずの、
前夫の母親・菊美から電話があり、
会って話すと、庸介の姿を2度ほど目撃したのだという。
見間違いではないかと思う一方、
実家の父も庸介に似た人を見たという。
それを契機に、庸介の昔の釣り仲間に会って、交わるうち、
早樹の知らなかった庸介の姿が浮き彫りになってくる。

妻である自分が一番よく知っていると思っていたのに、
他の誰よりも知らないのだった。


中でも庸介が中学2年の時、長期家出し、
女性の世話になっていたという話は心にひっかかった。

そうこうしているうちに、菊美に無言電話がかかってくるようになり、
早樹にも無言電話がかかってきた。

一方で、妹の真矢がブログで、
父への嫌悪と、後妻が財産目当てで結婚したと書いたため、
父が誰であるかの詮索が起こり、
会社としては放置しておくことができなくなる。
そんな中、真矢が勤務していた税理士事務所の所長と不倫関係になり、
狂言自殺をしたため、
真矢を引き取らざるをえなくなり・・・

というストーリーが、
445ページ2段組みで、
詳細に綿密に描かれる。

今さら8年前のことを問題にするのがおかしいと言えばおかしいが、
海難事故で亡くなった夫が、生きているのではないか、
別人として生き、自分はだまされたのではないか、
だましてまで姿を消したかった理由は何か、
という疑念が、
「とめどなく囁」きかけて来、
それがミステリーとなって、読者を引っ張る。

72歳の夫と41歳の妻の生活がどんなものか、興味津々。
夫の克典は、立派な大人であり、
ゲームソフト会社を経営していた人物で、
早樹を包み込み、魅力的。
早樹も美人であることは間違いないので、
いろいろ女優の顔を思い浮かべながら読むことになる。
桐野夏生はどちらかと言えば肌に合う作家で、
どの本も読みやすいが、
これは、少々納得しかねる早樹の心理が
まことに詳細に描かれるので、
ちょっと読み進むのに時間がかかった。

最後の謎解きも、
手紙一本での解明なので、
少々困惑。
もう少しひねりがほしかった。



ドラマ『東京裁判 TOKYO TRIAL』  映画関係

[ドラマ紹介]

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極東国際軍事裁判(東京裁判)の判事たちを描く
日本、オランダ、カナダ、オーストラリアの
合同制作によるテレビドラマシリーズ。
2016年12月12〜15日、
4夜連続で、「NHKスペシャル」枠にて放送されたものを
Netflix のラインナップで配信。

日本の放送時は吹き替えだったが、
配信では英語他の原語であり、
草笛光子による日本語ナレーションは英語のナレーターに変更。
(音声は選べば、日本語で観ることは可能。)
各放送回のラスト数分間の「ドキュメントパート」、
ドラマ制作の舞台裏、各判事の横顔、東京裁判の秘話などは、
日本人アナウンサーによる日本語で残されている。

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第二次世界大戦での日本の敗戦後、
戦時中の内閣の政治家や軍人28名をA級戦犯として裁いた
「東京裁判」における
2年半に渡る議論(1946年(昭和21年)5月3日から1948年(昭和23年)11月12日)を
戦勝各国から派遣された11人の判事たちの視点で描く意欲作。

NHKが8年もの月日を費やし、
世界中の記録、判事の日記、覚書等の膨大な資料を元に、制作された。
当時の法廷のセットが再現され、

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東條英機をはじめとする被告、弁護士、証人の映像は
全て実際の記録フィルム(白黒)をカラー処理して使用している。

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1946年春、
日本の戦犯たちを裁くために、11人の戦勝国代表判事たちが
まだ瓦礫に埋まる東京に集まった。
11人の判事の出身は、
オーストラリア、アメリカ、イギリス、
ソ連、フランス、中華民国、オランダ、
カナダ、ニュージーランド、インド、フィリピン

アメリカ代表の判事が途中で交代した以外は、
終始この11人の判事が裁判をつとめた。
宿泊先は帝国ホテルだった。

裁判では、
「平和に対する罪/侵略の罪」
  (侵略戦争を起こした指導者の責任を問う)
「人道に対する罪」
  (戦場ではない場所の自国民を含む大量虐殺や迫害)
「通例の戦争犯罪」
  (以前からの国際法上の犯罪。戦場での残虐行為など)
の3つが起訴された。

判事たちは当初、
ニュールンベルク裁判(ナチスドイツの戦犯を裁く裁判)と同時に制定された
侵略の罪(平和に対する罪)によって
簡単に戦犯たちを裁けると踏んでいたが、
弁護人の清瀬一郎
「日本が戦争を始めた時、
『侵略の罪』を盛り込んだ国際法は制定されておらず、
事後法にあたる」
とする問題提起を行ったことで
議論は紛糾し、裁判は長期化していく。

事後法とは、
法令の効力はその法の施行時以前には遡って適用されないという
法の不遡及の一般原則のこと。
侵略戦争が犯罪になったのは、
1945年8月のロンドン協定からである。

清瀬弁護人の意見:
「1928年のパリ不戦条約は
国の政策としての戦争は
とがめて非としておりますけれど、
これを犯罪なりとは言っておりません。
当裁判所においては
平和に対する罪(侵略の罪)につき
お裁きになる権限がないということです」

これにインドのパル判事、オランダのレーリンク判事らが同調し、
判事たちの議論は紛糾する。

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遅々として進まない裁判の行方に業を煮やしたイギリスのパトリック判事、
カナダのマクドゥガル判事、ニュージーランドのノースクロフト判事ら
イギリス連邦出身の判事たちは、
ウェッブ裁判長(オーストラリア代表判事)の弱腰が原因だとして
辞意をちらつかせ、ウェッブを一時的に本国へ召還させる。
その後、ウェッブは本国での仕事を終わらせ、裁判長に復帰する。

当初半年で終ると思われていた裁判は、
2年半にまで及び、
多数派と少数派の対立を残したままで、
ウェッブ裁判長による判決文に並行して、
多数派の判事たちによる判決文も書かれる。
最終的にウェッブ裁判長は、
多数派の判決文を受け入れるが、
量刑については全員で検討するよう同意を取り付ける。
つまり、                                    
判決はイギリス、アメリカ、中華民国、ソ連、カナダ、
ニュージーランド、フィリピンの7か国の判事による多数判決であった。

最初、判事室の出来事は秘密で、
多数決であった場合でも全会一致とする、
という約束は果たされず、
判決文と同時に、個別意見書が5つ出された。
ハラニーニャ(フィリピン)の賛成意見書、
裁判長のウェブ意見書、
パル(インド)、レーリンク(オランダ)、ベルナール(フランス)の反対意見書。
極東国際軍事裁判所条例ではこれら少数意見の内容を
朗読すべきものと定められており、
弁護側はこれを実行するように求めたが、
法廷で読み上げられることはなかった。

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判決は英文1212ページにもなる膨大なもので、
ウェッブ裁判長は
7日かけて、10分間に約7ページ半の速さで判決文を読み続けた。
パル意見書は判決文より長い1235ページもあった。
読み上げるには時間がかかり過ぎるということらしい。

(それにしても、ワープロもコピー機もない時代、
タイプライターだけで書類を複数作成する労力は
とんでもないものだったろう。)

1948年(昭和23年)11月12日に刑の宣告を含む判決の言い渡しが終了した。
「平和に対する罪(侵略の罪) 」の共謀として25人中23人が有罪となった。
「人道に対する罪」は適用できなかった。
7人への死刑判決は「通例の戦争犯罪」によるものだった。

という経過を、判事たちの人間ドラマとして描くのがこの作品。
かなりの部分が判事室の議論についやされ、
「12人の怒れる男たち」という戯曲と映画があるが、
さながら、「11人の悩める男たち」の趣。
中でも、「平和に対する罪」に反対するインドのパル判事と
オランダのレーリンク判事を中心に描かれる。

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ヴァイオリンを趣味としていたレーシンクと
日本に滞在していた
反ナチのドイツ人音楽家エタ・ヘーリック・シュナイダーとの交流や、
ドイツ学者竹山道雄(「ビルマの竪琴」の作者として有名)との交流も描かれる。

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集められた判事は、それぞれ誇りを持っており、
異論を述べるパル判事が、
他の判事から「裁判の憲章を認めないなら、辞任したらどうか」と言われて、
「私が来たのは、意見を切り捨てられたり、帰されるためではない」と答える。
また、本国から「多数意見に同調しろ」と圧力を受けたレーシンク判事が、
「私は一人の判事として、ここに来ている。
判事として正しいことをする」
と拒絶する場面はしびれる。

「南京大虐殺」の証言や
天皇の責任問題での東條英機の証言など見どころのある場面も多い。
また、当時のニュース映像も挟まれ、
よくあの瓦礫の中から復興したものだと、
日本人の底力に感心させられる。

俳優はどの俳優も見事な演技で、
これだけの俳優を集めたキャスティング力は称賛されるべきだろう。
判事役を演じる俳優たちの多くは、それぞれの判事の母国出身だった。
オール外人キャストの中で、
竹山道雄役の塚本晋也が一人日本人として気を吐く。

「人は戦争を裁けるのか?」
というテーマは重く、深い。
侵略行為をしたことのない国家などなく、
人を裁ける権利と資格のある人間は本当にいるのか?
しかも、当時は、まだアジアの諸国は独立を果たしておらず、
欧州列強による植民地は世界中に残っていた。
自国の侵略行為/植民地政策を棚に上げた
西欧列国が日本をさらしものの如く裁判にかけたのは自己矛盾だったのだ。

アメリカのブレイクニー弁護人の次の意見は注目に価する。

「戦争において人を殺すことは罪ではありません。
殺人罪ではないという根拠は、
戦争というものが合法であるからです。
この合法化された殺人、
厳密にいえば正当な殺人は、
どれほど不快でおぞましくとも、
これまで一度も刑事責任があるとみなされておりません。
真珠湾攻撃におけるキッド提督殺害が殺人罪なら、
我々は(以下の殺人罪の)名前をあげてみせます。
広島に原爆を投下した者の名前です。
その作戦を計画した参謀総長も
それを行わせた国家元首の名前も」


国家元首とは、もちろんアメリカ合衆国大統領のことである。

この発言の後、法廷はただならぬ騒音に包まれる。

日本政府及び国会は
1952年(昭和27年)に発効した
平和条約第11条により
東京裁判の判決受諾し、
異議を申し立てる立場にないという見解を示している。

↓ドラマの11人の判事たち。

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↓実際の11人の判事たち。

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ドラマは、11人の判事のその後を記し、
後の研究の様子などを示して終わる。

4話完結で、
計3時間34分
息をつめて見入ってしまう、
見事な歴史ドラマ、人間ドラマである。
魂を揺すぶられる、と言ってもいい。

監督は高木徹他、外国人の演出家も含む。
中島ノブユキによるテーマ音楽と
ロバート・カルリによる音楽が素晴らしい。


ブレイクニーの意見をもう少し詳しく書く。

「戦争は犯罪ではない。
戦争法規があることが戦争の合法性を示す証拠である。
戦争の開始、通告、戦闘の方法、
終結を決める法規も戦争自体が非合法なら全く無意味である。
国際法は、国家利益追及の為に行う戦争を
これまでに非合法と見做したことはない」
「歴史を振り返ってみても、戦争の計画、遂行が
法廷において犯罪として裁かれた例はない。
我々は、この裁判で新しい法律を打ち立てようとする
検察側の抱負を承知している。
しかし、そういう試みこそが
新しくより高い法の実現を妨げるのではないか。
“平和に対する罪”と名付けられた訴因は、
故に当法廷より却下されねばならない」
「国家の行為である戦争の個人責任を問うことは、
法律的に誤りである。
何故ならば、国際法は国家に対して適用されるものであって、
個人に対してではない。
個人に依る戦争行為という新しい犯罪を
この法廷で裁くのは誤りである。
戦争での殺人は罪にならない。
それは殺人罪ではない。
戦争が合法的だからである。
つまり合法的人殺しである殺人行為の正当化である。
たとえ嫌悪すべき行為でも、犯罪としてその責任は問われなかった」
「キッド提督の死が真珠湾攻撃による殺人罪になるならば、
我々は、広島に原爆を投下した者の名を挙げることができる。
投下を計画した参謀長の名も承知している。
その国の元首の名前も承知している。
彼らは、殺人罪を意識していたか?
してはいまい。
我々もそう思う。
それは彼らの戦闘行為が正義で、
敵の行為が不正義だからではなく、
戦争自体が犯罪ではないからである。
何の罪科でいかなる証拠で戦争による殺人が違法なのか。
原爆を投下した者がいる。
この投下を計画し、その実行を命じ、これを黙認したものがいる。
その者達が裁いているのだ。
彼らも殺人者ではないか」

(「キッド提督〜」以降の発言が始まると、
同時通訳が停止した。
理由は定かではない。
日本語の速記録にもこの部分のみ「以下、通訳なし」としか記載されなかった。
ただ、記録フィルムはこの発言は残っている。)

ブレイクニーは、他の弁論でも、
イギリスとソ連のパリ不戦条約違反を主張するとともに、
原子爆弾は明らかにハーグ陸戦条約第4項が禁止する兵器だと指摘している。

アメリカは広島、長崎の原爆投下で、
沢山の民間人を殺した。
東京その他への空襲でも、
沢山の人々を業火で焼いた。
戦争は戦闘員同士で行われるものであり、
非戦闘員への爆撃は、
まさに、「戦場ではない場所の自国民を含む大量虐殺や迫害」で、
「人道に対する罪」そのものだが、
罪に問われることはなかった。
戦勝国だからである。

実は、戦勝国が敗戦国を裁判で裁く、
というのは希有な例で、
通常は終戦時に停戦を決定し、
講和会議で、
敗戦国に賠償などを求める。

第2次大戦の後のニュールンベルグ裁判と東京裁判は、
「次の戦争を起こさないために」という目的で、
敗戦国を裁く必要があったのである。

これについては、
アメリカ国務省ジョージ・ケナンの次の見解が興味深い。

東京裁判について
「法手続きの基盤になるような法律はどこにもない。
戦時中に捕虜や非戦闘員に対する虐待を禁止する人道的な法はある」
「しかし、公僕として個人が国家のためにする仕事について
国際的な犯罪はない。
国家自身はその政策に責任がある。
戦争の勝ち負けが国家の裁判である。
日本の場合、敗戦の結果として加えられた災害を通じてその裁判はなされた」
として、戦勝国が敗戦国を制裁する権利がないというわけではないが、
「そういう制裁は戦争行為の一部としてなされるべきであり、
正義と関係がない。
またそういう制裁をいかさまな法手続きで装飾するべきではない」
と批判した。
ケナンはさらに国務省宛最高機密報告書の中で、
この裁判は
「国際司法の極致として賞賛されている」が、
「そもそもの最初から深刻な考え違い」
があり、敵の指導者の処罰は
「不必要に手の込んだ司法手続きのまやかしやペテンにおおわれ、
その本質がごまかされて」
おり、
東京裁判は政治裁判であって、法ではないと批判した。
ただし、ケナンは日本人への同情から述べたのではなく、
この裁判を支えている正義を理解する能力が日本人にはないとも述べ、
戦犯は終戦時に即刻まとめて射殺した方が適切であったとも述べている。
                                        
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名字ランキング  様々な話題

日本は世界一名字(苗字)の多い国と言われています。
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ちなみに、私の苗字「大野○」は、
28674位で、
全国におよそ120人おり、
茨城、栃木に40人、
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以下は、日本の苗字ランキングの20位まで。
                   
1位 佐藤 およそ187万人
2位 鈴木 およそ180万人
3位 高橋 およそ141万人
4位 田中 およそ134万人
5位 伊藤 およそ107万人

6位 渡辺 
7位 山本
8位 中村
9位 小林
10位 加藤

11位 吉田
12位 山田
13位 佐々木
14位 山口
15位 松本

16位 井上
17位 木村
18位 
19位 斎藤
20位 清水

国別に多い苗字を「名字由来net 」で調べると、

アメリカ

1位 スミス(Smith)
2位 ジョンソン(Johnson)
3位 ウィリアムズ(Williams) 
4位 ブラウン(Brown)
5位 ジョーンズ(Jones)
                                        
ドイツ

1位 ミュラー
2位 シュミット
3位 シュナイダー
4位 フィッシャー
5位 メイヤー
                                        
ロシア

1位 スミルノフ
2位 イワノフ
3位 クズネツォフ
4位 ポポフ
5位 ソコロフ
                                        
オランダ

1位 デ・ヨング
2位 ヤンセン
3位 デ・ヴリース
4位 ファン・デン・ベルク
5位 ファン・ダイク
                                        
スペイン

1位 ガルシア
2位 フェルナンデス
3位 ゴンザレス
4位 ロドリゲス
5位 ロペス
                                        
コロンビア

1位 ロドリゲス
2位 ゴメス
3位 ゴンザレス
4位 マルチネス
5位 ガルシア
                                        
中国                                      

1位  オウ(全体の7. 25%)
2位  リ (全体の7. 19%)
3位  チョウ(全体の6. 83%)
4位  リュウ(全体の5. 23%)
5位  チン (全体の4. 53%)

台湾

1位  チン(全体の11. 06%)
2位  リン(全体の8. 28%)
3位  コウ(全体の6. 01%)
4位  チョ(全体の5. 26%)
5位  リン(全体の5. 11%)
                                        
韓国

1位  キム(全体の21. 59% つまり5人に一人が金さん)         
2位  イ (全体の14. 78% 7人に一人が李さん)         
3位  パク(全体の8. 47% 12人に一人が朴さん)
4位  チェ(全体の4. 72%)
5位  チョ(全体の4. 37%)





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