短編集『今日も町の隅で』  書籍関係

[書籍紹介]

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小野寺史宜の短編集。
共通項は、密葉(みつば)市のあちこちで起こる、
本当にささいな出来事の哀歓を描く。
小説すばるに掲載された8編と書き下ろしの2編で成る。
並び方は発表順でなく、
登場人物の年齢順。
小学5年から42歳まで。

転校生の長野くんがクラス委員長になり、
愛里は副委員長になった。
そのせいで、愛里はクラス内で微妙な立場に。
その責任を感ずる長野くんに誘われて、
地元の高校野球予選を観戦することになり、
そこには、大声でヤジを飛ばす男がいて・・・
という「梅雨明けヤジオ」

中学のバンドでリードギターを降格され、
ベースを弾くことになった悠太が
隣の席の乃衣との初デートで訪れたのは東京タワー。
エレベーターに乗る直前、乃衣が上るのやめると言い出す。
それにはわけが・・・という「逆にタワー」

奔放な母の振舞いに翻弄される幹矢。
今日も教師との三者面談で冷や汗をかいた。
酔った母を駅に迎えに行き、
一緒に帰宅する途中、幹矢は意外な話を聞かされる、
「冬の女子部長」

バンドを解散し、声優などでメシを食っているケントは、
同棲中の万弥(まや)とケンカをして、出て行かれたばかり。
むしゃくしゃした気分の中、
小学生の乗った自転車と衝突する。
親に会うために少年の家に行った母親は、
ケンタのバンドのファンだったという、
「チャリクラッシュ・アフタヌーン」

卒論を提出しに行く電車に乗り遅れ、
その上、その電車が事故で人が死に、
卒業できずに1年を棒に振った駿作。
実は、その事故で死んだのは、
いつも駿作が座る席にいた人だった。
希望の会社の内定を取り消された駿作は、
翌年、小さなビール会社に就職する。
そこで出会った那美に一目惚れした駿作は、
食事に誘い、そこで思わぬ偶然の縁を知ることになる、
「君を待つ」

30歳にもなって、まだ小説家志望で、
新人賞に落選し続けている一臣(かずおみ)は、
安いパンを求めて行く店でレジを打つ諏訪さんに、
店内で拾った1万円札を届ける。
諏訪さんは、一臣が気になっていたトリマーの店の店主だった、
という「リトル・トリマー・ガール」

出勤時と帰宅時に15秒間のハグを
妻の好美(よしみ)とするのが日課になっている守。
その家に好美の元カレの和田くんが
一晩泊まらせてくれと頼んで来る。
友人と事業を起こそうとして、金を持ち逃げされ、
アパートの契約も解除されたのだという。
もう一晩泊まらせることになった守は、
好美とのハグもできないまま、
和田くんと一緒に家を出、
別れた後、和田くんの後をつけてしまうが・・・
という「ハグは十五秒」

40歳の斉藤は10年ごとに開かれる中学の同窓会で、
花田あかりと久しぶりに会う。
そして、こどもの頃の話題で、
クジラ公園の管理人のサンじいさんのことに触れる。
マンション内の公園に外部の子供が入ることを拒んだ
サンじいさんと小学生の斉藤たちは
「戦争」を繰り広げた思い出がある。
そのサンじいさんが、あたりの祖父だという噂が流れ、
その真偽をあかりに尋ねると・・・
という「ハナダソフ」

スーパーのレジ係の尚美は、
中高生の頃は、
将来スーパーのレジのおばちゃんにだけはなるまい、
と思っていたのに、40を越えた今、
レジのおばちゃんだ。
その尚美が、
小学生の男の子がボールペンを万引きするのを見つけてしまう。
実は尚美自身、息子の大都がコンビニで万引きしてしまい、
店長に叱られた経験がある。
尚美はその男の子に「レジを通してね」とだけ声をかける。
このスーパーには、
自主的に空カートを集めてまわる高齢のお客さんがいて・・
という「カートおじさん」

離婚して引っ越しの荷物整理のさ中、行人(ゆきひと)は、
古いビデオテープを見つける。
再生してみると、
昔、テレビの番組に出た時の録画だった。
想い人に告白するために、
マラソンを完走してから告白する、という設定だ。
マラソンはハーフマラソンになり、20キロになり、
実際は10キロしか走っていない。
その完走先に道代が待っていて、告白する。
結果は駄目だったが、
番組収録後、食事をしたのを機会に交際が始まり、
結婚したが、離婚した。
その番組を再生した行人は・・・
という「十キロ空走る(からはしる)

どの話も、町の片隅で起こった、
小さな小さな出来事だが、
人間がよく描かれており、
会話が軽妙なので、
読後感はものすごくいい。
終った後、温かい気持ちになり、
しばし余韻に浸る。

筆者は明らかに才能がある。
いずれ何かの賞を取るだろう。


ドラマ『マザー・ファーザー・サン』  映画関係

[ドラマ紹介]

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イギリスのメディアを牛耳る男を描く、英国BBCのドラマ。
2019年製作。
期せずして、アメリカのメディアを牛耳る男を描いた
「ラーゲスト・ボイス」と2本立て続けに観ることになったが、
作り方と雰囲気が全然違い、
その違いを楽しめた。

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ロンドンに本部を置く世界的ニュース企業の
「レポーター・メディア・グループ」の
トップで大富豪のマックス・フィンチは
元々アメリカの製鉄所の社長で、
タブロイド紙も所有。
その財力にものを言わせて、
傾きかけていたイギリスの老舗新聞「ナショナル・レポーター」を買収、
立ち直らせ、政界にも影響力を持つ存在だった。

彼の息子ケイデンは、
「ナショナル・レポーター」の編集長を任され、
後継者と目されていたが、
父親からの重圧に耐えきれず
コカインに溺れた上、
発作で事故を起こし、
脳に損傷を負った。

片腕が動かず、言語障害が残り、
言動や行動に抑制が効かない後遺症を治すために、
マックスは金にものを言わせて
軍のリハビリ施設に強引に押し込む。
ヘイデンにはマックスと離婚した母親キャスリンがおり、
ヘイデンのリハビリのために力を注ぐ。

実はキャスリンは、マックスの謀略にあって離婚し、
親権を失っていた。

題名の「マザー・ファーザー・サン」とあるように、
基本的に母親と父親と息子の物語
強すぎる父と子の確執、
それを見つめる母と父の葛藤、
祖父を巡る父のトラウマ。

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それに、様々な事件が重層的にからむ。
会社の方針に楯突いて「ナショナル・レポーター」から解雇された
ベテラン記者マギーの取材活動。
ある少女殺人事件の報道を巡る手法の違法性を捜査する。

総選挙を巡る現首相と野党党首の争いに対するマックスの関与。
現首相のジャハンはイスラム教徒の上に黒人という異色の存在。
それに対するは、
弱者救済の立場から、
国の改革を主張する野党党首のアンジェラ。

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マックスは今までジャハンを応援していたが、
アンジェラ候補に勝ち目があると踏んで、
方針を転換、アンジェラに協力して
ジャハンのネガティブ・キャンペーンを開始し、
ジャハンの息子が過激イスラム派のサイトを
官邸のパソコンで見ていたという情報を
マックスは新聞に掲載し、
その結果、息子が殺される、という事件が起こる。

退院したケイデンとキャスリンとマックスで話し合いの場が持たれる。
新聞社の不正行為を公表したいというケイデンをマックスは恫喝する。
そこでマックスは自分の子供時代のことを初めて語る。
製鉄所を経営する父はやはり強い男で、
マックスに対して精神的虐待をしていたのだ。
マックスは父親の重圧に逆らい、
心臓病で倒れた父親を見殺しにした過去があった。
強い父からされた仕打ちを
自分の息子に同じようにしていたことに、キャスリンはショックを受ける。

ガンに侵され、余命がないマギーの願いは叶えられず、
マックスやケイデンのしてきた不正行為は明るみに出ることはなかった。

選挙が近くなり、
マックスの新聞によって対立が深まり、
イギリスは二分された闘いの日々が続くが・・・

各話、怒濤の展開が続き、
1話終れば、また1話、ということになる。
まことに外国のドラマは華麗である。
ただ、ラストは、少々不満が残る。
何も解決されず、
それは無理だろう、という展開。

マックス・フィンチを演ずるのは、リチャード・ギア

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この複雑な男を存在感たっぷりに演ずる。
こんなに恰好良くていいのか、
とリアリティを失うほど。
ケイデン・フィンチは、ビリー・ハウル

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父親の重圧に耐えかねて崩壊する人格をうまく演じた。
キャスリンはヘレン・マックロリー

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この人の演技力にも感心。
さすが英国制作。
俳優の層が厚い。

やはり海外ドラマは
脚本、演出、演技と三拍子揃っている

8話完結で6時間40分。


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気の毒な安倍首相  政治関係

今日、「医療従事者に敬意と感謝を示すため」、
ブルーインパルスが東京上空を飛行しました。

浦安からも見えました。

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動画を見たい方は、↓をクリック。

https://youtu.be/Na-Kq1MQWME?t=1330


産経新聞が「コロナ 国を守れるか」
という記事で、
安倍首相にとって、
難しい判断の連続だった、
と書いている。

たとえば、緊急事態宣言をしても何も変わらないと言っている
秘書官たちに対して、
「このままでは医療体制が崩壊する。
より強い権限による調整が必要だ」
と言い、
首相は専門家会議の意見を聞きつつ
熟慮を重ね、
経済活動維持との兼ね合いも考え、
官邸内の慎重論を押し切り、
4月7日から
東京など7都府県に緊急事態宣言を発令した。
「判断が遅かったのでは」
と記者会見で質問が出ると、
「やみくもには出せない。
(医療体制の)準備を整え、
混乱を起こさないようにする必要があった」
と答えた。
それでも、「非常事態宣言」に対する批判は
野党とマスゴミを通じて蔓延した。
それは、まるで感染爆発を期待しているのではないか、
と思うくらいだった。

クルーズ船の対応では
国内外から批判され(後に対応は正しかったと分かったが)、
2月27日に一斉休校要請した際も
立憲民主党の蓮舫副代表からの
「めちゃくちゃな決断」をはじめとして、批判を受けた。
(これも、あとで、正しい決断だと判明する)
その他、マスクの全戸配布、
星野源とのコラボ、
減収世帯への30万円給付から
全国民への一律10万給付への変更も批判された。

だが、首相自身は、周囲にこう諭していたという。
「特に、こういう時には、
政府は攻撃されるものだね。
でもあんまり心配することはない」

前にも書いたが、
非常事態宣言を出すに当たって、
その効果を懸念する周囲に、
安倍首相は「日本国民なら出来るので、頼もう」と言ったという。

首相の自信の背景には、
専門家の意見に耳を傾けながら対策を進め、
必ずしも現時点で評価を得られずとも、
一定の成果を上げられるとの自負があった。
緊急事態宣言も
感染者の数だけでなく、
倍加のスピード、感染経路不明者数などを慎重に見極めつつ、
同時に医療体制の準備を進めてきたからだ。

その結果が、今だ。
強制力のない宣言に批判的だった海外のメディアも
不思議がりながらも、成功を認めている。
                                        
政治は結果だ。
そして、決断に至るまでは、
総合的な判断が必要だ。
前後左右、前方後方をよく見ながら、
決断し、国民に要請した。
国民もよく従った。

この成功を
「国民の協力と医療従事者の働きだ」
として、「政府の功績ではない」
という意見がある。
おかしな言い分だ。
国民の協力によるのはそのとおりだが、
根本的に施策が間違っていれば、
効果はあがらない。
安倍首相の決断と、
それに協力した国民と、
医療関係者の努力と、
それらの3つがどれ一つ欠けても、
今日の事態はなかった。

だが、マスゴミは決して首相の施策をほめはしない。
ひたすら批判して、「無能」よばわりする。
無能な指導者が宣言をしたところで、
国民を引っ張っていくことなどできはしないにもかかわらず。

さいわいにして、安倍首相は批判を受け止めつつも、
ぶれることはなかった。
もしマスゴミが足を引っ張って、
首相の判断が狂っていたら、
今日の事態はなかった。

昔、政治評論家の三宅久之氏が
安倍第1次内閣当時、
朝日新聞の論説主幹と会った時、
「朝日は安倍というといたずらに叩くけど、
いいところはきちんと認めるような報道はできないものなのか?」
と問うと、
その論説主幹は言下に「できません」と答えた。
「何故だ?」と聞くと、
「社是だからです」
と言ったという話がある。

この間のマスゴミの対応は、
その朝日新聞の社是が伝染したような有様だった。
メディアの政治的利用である。

批判したコメンテーターたちは、
安倍首相に「すいませんでした」と謝るべきだろう。

私は安倍首相という人は、
本当に日本のことを憂い、
私利私欲に走らず、
誠実そのものの人だと思うが、
世間はなかなか認めない。

森友学園にせよ、加計学園にしても、
あれほど野党が国会の時間を無駄にして追求しても、
ついに安倍首相の関与は証明できなかった。
それが出来ないから、
ただひたすら、安倍首相の印象を悪くすることだけに、
貴重な審議の時間を費やしたのだ。
「桜を観る会」にしても、
コロナ問題などそっちのけで、
安倍首相の印象を悪くすることだけに奔走した。
定年延長問題も、
法務省内部の権力争いに巻き込まれただけで、
痛くもない腹を探られることになった。
その結果、内閣支持率は27%だの29%だのと下落した。
産経その他のメディアの世論調査は定期的だが、
朝日や毎日の世論調査は一定期間をおいたものではなく、
「今調査したら、支持率は下がっているだろう」
という時期を狙って実施している。

どんな努力をしても、
どんな正しい施策をしても、
批判され、印象を悪くさせられる。
上に立つ者の宿命とはいえ、
気の毒なことだ。
よく心が折れないものだと思う。

国会の委員会の質疑を見ると、
安倍首相の忍耐強さに感心する。
野党議員の揚げ足取りの質問、
悪意に満ちた中傷に
じっと耐えている姿。
通常の社会で、
相手を中傷したり批判したりするのは、
日本人の体質としてはばかわれるものだが、
国会ではその常識は通じない。
「鯛は頭から腐るという言葉を知っているか」
などという無礼で底意地の悪い質問を平気でする。
たまに、うんざりした首相が「意味のない質問だな」
などと言うものなら、
辻元清美は、「誰?誰が言ったの」
と、目を三角にして、「ヤジだ」と非難する。
あの場面は動画で見たが、
首相の言葉はつぶやきであって、
大声のヤジではない。
首相には感想を述べることも許されないのか。

日本の国会もマスゴミも
「日本を良くするための議論」ではなく、
批判のための批判に終始するのは、
そろそろやめた方がいいのではないか。

ただ、定年延長問題には、私は一家言はある。
65歳までの定年延長は時代の流れであるから仕方ない。
しかし、特別な人にだけ定年延長できるという例外規程はない方がいい。
そうでなければ、何のための定年かということになる。
「余人をもって代え難い人」など、
適用されるのは、
わずかな芸術家だけだ。
人が去ったら、その穴は次の人が埋める。
それが組織というものだ。

自民党総裁の任期延長も同じ。
2選まで、と決めたのなら、それは守らなければならない。
3選まではまだ許されても、4選はどうかと思う。
だから、首相の仕事は、後継者の養成だ。
でも、いないんだよな。
念願の憲法改正が出来なかったのは心残りだろうが、
野党が審議に応じないという方法で改正させまいとしている以上、仕方ない。
日本という国は、
こういう不思議な憲法を掲げた「変な国」のままでいくしかない。
中国の進出で尖閣が奪われて、
はじめて国民は目が醒めるだろう。
「売国奴」が誰かがはっきりする時だ。

その時、再び安倍首相の出番が来るのではないか。


小説『ホームドアから離れてください』  書籍関係

昨日、市から
「特別定額給付金」の申請書が郵送されてきました。

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同じ日、その20万円(2人分)が振り込まれてきました。
ネットで申請した分です。
昨日は私の誕生日だったので、
市からのプレゼントでしょうか。
まさかね。偶然。

ネットで申請したのが5月8日。
18日かかっての振込です。
早いのか、遅いのか。
いずれにせよ、私にとっては、
この申請書は不要です。

娘は今日、郵送しました。

昨日の誕生日の娘のプレゼントは、
私の要求で、
「落語を聴くこと」
1年ごしの約束です。

聴かせたのは、
文楽「寝床」
枝雀「饅頭こわい」
志ん朝「居残り左平次」


みんなカセットです。

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文楽はちょっと聞き取れなかったみたい。
志ん朝は「この人が一番うまい」ですと。
ああ、志ん朝、なぜ死んだ。


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はじめの方で、しばらくの間、
ダイスケという中学2年生の
ひきこもり、不登校の生活が描かれる。
コウキという転校した同級生と何かあり、
携帯電話に、
関係者からひっきりなしにいやがらせのメールが入る。
ダイスケは携帯電話を捨てた。

やがて、事件の全貌が明らかになってくる。
中学に入学し、ダイスケは柔道部に入る。
初心者は二人。
その一人がコウキだった。
柔道部には、レギュラー、準レギュラー、
そして初心者という、目に見えない階層があった。
3年生が引退し、
2年生と1年生になった時、
下級生に負けた鬱屈を抱えたオオハタ先輩らによるイジメが始まる。
最下層の初心者であるダイスケとコウキが標的だった。
それは、傍目には先輩が後輩を鍛えてあげているように見える、
運動部独特のイジメだ。
顧問の先生に訴えても、らちがあかない。
大人は駄目だとあきらめ、
克服するには、強くなることだけだった。
コウキは言う。
「ああいうやつらのために勉強をおろそかにするのは、ばかだ」
二人は下校途中、歩道橋の上で会話を続ける。(表紙の絵)

しかし、陰湿なイジメは続き、
「おまえとおまえ、どっちが強いんだ」
と初心者同士の試合をさせられ、
負けた方が罰ゲームとして、一発ギャグをやらされる。
試合はダイスケが勝ってしまった。
負けたコウキは誰も笑わない一発ギャグをやり続け、
最後は裸にされ、写真を撮られる。

その2日後、
コウキはダイスケに「ごめん。」とメールを打ち、
自宅マンションから飛び下りる。
一命をとりとめたが、障害者になったコウキは、
病院に見舞いに来たダイスケを拒絶する。
それ以来、転校したコウキとは会っていない。

柔道部は1カ月の活動停止になり、
(いやがらせメールは、柔道部の部員からのものだ)
ダイスケは不登校を続ける。
自分が勝ってしまったから、
コウキが自殺を図ったという、
罪悪感からダイスケは離れられない。

父から譲ってもらったカメラでダイスケは写真を撮るようになり、
新聞で「空色ポスト」の存在を知る。
それは、新宿御苑の奥にあり、
写真を投函すると、
別の人が投函した写真が送られて来る仕組みだ。
ダイスケはそこで、ミキという高校生に出会う。
その彼氏の大学生のハジメさんや、
家庭教師のホンダ先生と交流し、
立ち直るが、
心からコウキのことがいつも離れない。
やがて、ミキさんとも交流が絶え・・・

3年後、空色ポストの展示会で、
一つの奇跡が起こる。

中学生という、思春期の入り口に立った少年の内面を描く小説。
まだ人生が始まったばかりの時に味わった挫折。
その中で、ダイスケは自分自身に向き合う。
初々しく、しかし、鬱屈に満ちた内容だ。
文章は軽やかで、透明感がある。
作者は現役の大学生の北川樹
これがデビュー作。
(今春卒業)

さりげなく織り込まれていた小学生の時の話が、
最後に生きて来る、見事な構成。
この場面に読者は感動する。

幻冬舎は、こういう作品を発掘するのがうまい。


なお、私は大学時代、合気道部に所属したので、
武道部の雰囲気はよく分かる。
合気道部を選んだのは、
柔道や空手だと経験者が多いが、
合気道なら、初心者ばかりだと踏んだからだ。
(10数人のうち、経験者は1人だった)

合気道には試合はないので(試合のある流派もある)、
強弱はなかったが、巧拙はあった。
稽古では、先輩が模範演技をしたあと、
二人一組でわざをかけあう。
この時が恐怖で、
先輩の中のこわい人と組まないようにうまく逃げる。
先方もうまい人と組みたいので、
申し入れすると、露骨にいやな顔をされたこともある。
わざの最中に、
「何をさせても、うまくいかねえなあ」
と言われたこともある。

稽古は、毎日昼休み。1・2年のみ。
土曜は3・4年との合同稽古。
こわかった。
稽古の途中に「特訓」というのがあり、
後輩が先輩に5分間くらい、投げられ続ける。
夏と秋は春に合宿があり、
稽古の合間は寝ているだけだったが、
1年もたつと、稽古間に遊ぶ余裕が出来た。
稽古中に頭を打って、
モノが二つに見える症状が2週間ほど続いたこともある。
やめなかったのは、
「途中で逃げ出すのは、自分の弱さだ」
と思ったから。
2年生の秋の昇段試験で黒帯を取ってからやめたのは、
他のサークルの方が忙しくなったためだった。

高校時代はヤセッポチだったが、
合気道をするようになって、体重が増え、
筋肉も付き、骨格も太くなった。
今でも自分が強健でいられるのは、
あの1年半があったからだと感謝している。

中途退部であるにもかかわらず、
その時の交わりが50年ぶりに復活した、
不思議な経緯は、↓をクリック。

http://star.ap.teacup.com/applet/shokuniku/20110221/archive



ドラマ『ザ・ラウデスト・ボイス─アメリカを分断した男─』  映画関係

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2019年6月にアメリカで放送されたリミテッド・ドラマシリーズ。
7回完結。およそ5時間15分
日本では2020年4月にWOWOWで放送、
5月に一括放送。

FOXニュースの創立者、
ロジャー・エイルズの暴走と失墜の実話を基にしたドラマ。
後半のセクハラ問題は、
昨年公開の映画「スキャンダル」と同じ題材。
ラッセル・クロウ、ナオミ・ワッツ、セス・マクファーレン、
シエナ・ミラー、サイモン・マクバーニー
などが出演。
原作はエイルズを告発したノンフィクション作品
「The Loudest Voice in the Room 」で、
著者のガブリエル・シャーマンは製作総指揮・脚本を務めている。

1995年、2001年、2008年、2009年、
2012年、2015年、2016年と
7話でそれぞれの時代背景と共に、
エイルズの所業を描く。

1995年。
差別的暴言のせいでCNBC局(後のMSNBC局)を解雇された
エイルズは翌年、“メディア王”ルパート・マードックが立ち上げる
FOXニュースの初代CEOとなる。

エイルズは、ニュースはジャーナリズムではなくショーだと考え、
全米各地で暮らす保守的視聴者たちを、
時にはフェイクニュースを使ってまで扇動していく。

そして2001年9月、
アメリカ同時多発テロ事件発生を受け、
エイルズはその姿勢をさらに徹底させることで、
FOXニュースを老舗CNNより人気が高い
ニュース専門局にすることに成功。

2008年の大統領選挙ではオバマ批判を強めるものの、
オバマは勝利。
エイルズはオバマと関係が深い低所得者支援団体についての
フェイク・ニュースを流し続けて、悪評を広めていく。
2012年、オバマの再選に怒り狂うエイルズは、
この頃からトランプとの関係を深め、
番組の力でトランプ当選を画策する。

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2015年、MCのグレッチェン・カールソンは
エイルズをセクハラて提訴することを決意。
1年の間録音し続けた音声が決め手となる。
2016年、グレッチェンに続いて被害者たちが声を上げ始め、
エイルズは窮地にたち、
ついにマードックはエイルズを切る決意をする。

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はじめの方で、FOXニュースの方針を話し合う会議の場面がある。
エイルズに「ターゲットの視聴層は?」と訊かれて、
担当者が「全般です。幅広い層を獲得する」と答えると、
エイルズは即座に「それは違う」と断言する。
「全員は必要ない。
君は“放送”の話をしている。
“ケーブル”に必要なのは、一つ。
ニッチェだ。
根強い少数派だ。
我々はその視聴者に向けた番組を作る必要がある。
政治で言う“支持基盤”だ。
彼らはチャンネルを変えない。
そのニッチェとは、私は保守層だと思う。
国のおよそ半数だ。
世間のニュースを見ろ。
放送でもケーブルでもいい。
どれも左派傾向。
リベラル、エリートだけを狙っている。
それは構わん。
国の半数はそいつらにやる。
だが残りはいただく。
今アメリカは、国民の6割がメディアを不快に感じている。
ウソだらけ、偏見だらけ、ゴミ同然だと。
我々は欲しいものを与える。
前向きでアメリカらしいメッセージ。
それを保守ならでは視点で伝える」

ふーむ、そういわけか、と納得。

しかし、メディアの権力を握った人物が
ある偏った考えを持っているのは恐ろしい。

また、日本の現状も感じさせる。
新聞やテレビのメディアに対する不信感と嫌悪感は
日本でも同じだ。
だから、ネットの書き込みが
それとは正反対の意見で溢れる。

「市民ケーン」で描いた新聞王のように、
子供時代のトラウマに原因を帰す、などという展開はせず、
徹頭徹尾、エイルズは同情の余地のないクソ男として描かれる。
自己中心で下劣で大衆を見下す姿勢。
にもかかわらず有能で、金を稼ぐため、
ボスのマードックもひれ伏す。

ラッセル・クロウは、デブの特殊メイクでまるで別人

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目の部分で、ようやくラッセル・クロウだと分かる位。
特に晩年は、
杖に頼り、車椅子に座り、時々失禁する醜態を演ずる。
マードック一家に呼び出され、
遺恨のある息子たちの前で解雇を通告される場面での
最後の悪あがきの姿は、まさに「老残」のひと言。
ラッセル・クロウは、この役でゴールデン・グローブ賞
TVの部・ミニシリーズ/TVムービー部門で主演男優賞を受賞。

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解任のち、トランプ陣営から政権入りを打診される。
ところどころトランプと電話で話す場面はあるが、
トランプの音声は出さない。

解任10カ月のちに、
浴室で倒れて脳損傷。
8日後、病院で死亡。
77歳だった。
                                        
グレッチェンは2000万ドルで
秘密保持契約を締結。
FOX時代のことは今でも口外できない。
その他の関係者も、秘密を守り、口を固くしている。

FOXニュースはエイルズの在任中、
14年連続で視聴率1位

今でも1位である。

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アメリカのマスコミの背後を伝える、
興味あるドラマだった。

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