小説『聖者のかけら』  書籍関係

今日から、
市川妙典の映画館が再開
↓は、そのネット予約の座席表。

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灰色の席は予約不可。
白色の席は予約可能。
つまり、一つ置きにしか発券しない。

もしかして、観客は私一人ではないかと思っていたら、
15人ほど。
二人連れは、
席をずらして、並んでいました。


[書籍紹介]

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言語学者の川添愛が書いた歴史ミステリー
「薔薇の名前」を彷彿させるが、
ずっと読みやすい。

「聖者のかけら」とは、
聖人の聖遺物のこと。
聖人の骨とか、柩の一部とかが、
救いのためのアイテムとして重用された、
中世のヨーロッパの話。

聖フランチェスコがなくなって6年。
1252年、ローマ近郊のモンテ=ファビオ修道院に届いた
謎の聖遺物が次々に奇蹟を起こした。
その聖遺物が誰のものなのか、
修道院長に調査を命じられた若き修道士ベネディクトが
セッテラーネ村の教区教会を訪ねる。
迎えたのは、若き助祭のピエトロ。
二人は謎を究明するためにアッシジへ向かう。
すると、大聖堂におさめられていたはずの
聖人の遺体が墓所から消えたという。
フランチェスコがフランチェスコ会を見限って
自ら墓を出て立ち去ったという目撃者まで現れる。
それどころか、大聖堂に遺体を移す時に、
既に棺の中は空っぽだったという説まで現れる。
遺体をベネディクト会の修道士が盗んだという噂が流れ、
フランチェスコ会とベネディクト会の
融和のための会議が流れそうになる・・・

フランチェスコの遺体はどこに消えたのか。
ベネディクトに与えられた聖遺物に対する能力とは何なのか。
ピエトロの狙いは?、その正体は?、
などという謎を含んで物語は進行する。

なにしろ、中世の話である。
しかも、聖遺物を巡る信仰の内容。
いかに宗教が社会を動かしていた時代とはいえ、
現代人にとっては、迷信と何ら変わりない。

こんな小説、誰が読むのか、と思ったが、
実は、めっぽう面白い。
それというのも、ベネディクトとピエトロの
主人公二人がしっかりと描かれている上、
フランチェスコの愛弟子、レオーネや
フランチェスコの在俗の弟子、ジャコモおばさんや
フランチェスコの最初の女の弟子、キアラや
大ジョバンニ、セバスティアーノら、
更に、要となるフランチェスコの事跡を
世界に広げたエリア・ポンパローネまでもが
生き生きと描かれ、
人物が小説を舞台に躍動する。

背景にある教皇と皇帝の確執や
二つの托鉢修道会フランチェスコ会とドミニコ会の争いなど、
歴史的背景もちゃんと織り込まれている。
最後には、トマス・アクィナスまで登場する。

つまり、聖フランチェスコの遺体盗難と聖遺物を巡る
壮大なウソ話なのだ。
まさに虚構。まさに小説。

ベネディクトの聖遺物への特殊能力も
ちゃんと絡んで来るし、
話に無駄がない。
若い時から修道院しか知らず、
宗教世界に生きているベネディクトの若い悩みも共感するし、
悪人を装うピエトロの実の性格も面白い。

聖遺物は、
仏教でいえば、仏舎利(釈迦の骨。アジアにおびただしく存在する)だが、
東洋伝道のヨハネの聖遺物が仏舎利だとほのめかしている。
そもそも、登場人物によって、このように語られている。

「世の中には、偽の聖遺物が多く出回っている。
偽物を作るための手引き書まであるくらいだ。」


「イエスが磔にされた十字架のかけら」だの
「イエスの手足に打ち込まれた釘」だの
「聖母マリアのヴェールの切れ端」だとか
すぐに嘘と分かるものがあり、
ただ、当時はその聖遺物のおかげで病気が治ったり、
聖遺物を持てば、
エルサレム巡礼と同じ効果があるとか信じられたのだ。
そして、最終的には、最後の審判の時、
聖者の取りなしを受けたいという道具にもなる。

何も持たず、清貧に甘んじるフランチェスコの戒律は、
何度も改訂(歪曲)されており、
修道会そのものが
貴族からの寄進を受けて財産を所有しているのを見ても、
聖人の遺志を継ぐというのは大変なことだと思うが、
弟子レオーネという人物によって、
その実態があかされるのは感動的だ。
二つの托鉢修道院の会議での対立を
レオーネの証言によって解決するという場面もある。
また、最後のエリアとピエトロの対決も読ませる。

達者な書きっぷりで、
著者の筆力はよく分かる。
500ページを越える大部だが、
2日で読み終えてしまったから、
その引きつける力は大きい。

書き下ろしで、刊行されたのが昨年の10月30日だから、
直木賞の対象になるのに、
候補にはならなかった。
予備選考者たちの眼力を疑う。

アッシジのフランチェスコについては、↓を参照。                                                               https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%83%E3%82%B7%E3%82%B8%E3%81%AE%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%81%E3%82%A7%E3%82%B9%E3%82%B3





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