映画『娘は戦場で生まれた』  映画関係

東日本大震災から丸9年。
発生時刻の午後2時46分を過ぎたころ、
宮城県名取市の震災メモリアル公園上空に、
大きながかかった。

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「忘れないでね」とでも言っているようだ。


[映画紹介]

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2011年からのシリア内戦での
アサド政権政府軍と反体制派(自由シリア軍)との対立は、
2012年7月にシリア最大の都市、アレッポに波及。
反体制派の拠点とみなされたアレッポを
政府軍が包囲して、攻撃した。
2014年以降、ロシア空軍による空爆で、
町は瓦礫となり、多数の犠牲者を出した。
2016年12月、政府軍がアレッポの全域を奪還し、
市民は町を放棄して、避難した。

このアレッポにおける5年間の人々の生活を
独自に映像で記録した女性がいた。
ワアド・アル= カデブ監督である。
アレッポ大学のマーケティングを専攻する学生だったワアドは、
アサド政権に対する抗議デモに参加したことをきっかけに
街の様子をスマホで撮影するようになる。
撮影技術を独学で学び、
やがて撮影機材を購入(ソニー製であることが画面から分かる)し、

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周りの人たちの苦しみや絶望を記録する。
その間に、医師志望の青年ハムザと結婚し、娘を授かる。
「サマ」(空の意)と名付けた娘に告げるため、
ワアドは周囲の人々の生きた証を撮り続ける。

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しかし、戦争は激化する一方で、
街で最後の一つとなった病院を運営する夫ハザムと共に
町に留まり、ワアドは真実を映像に残すことに腐心する。
病院に運び込まれる戦争の被害者たち。
愛する娘を亡くした母親の嘆き、
父母を亡くした少年、
母親が怪我をし、
帝王切開で出産させる様・・・
床には、ケガ人を引きずった血の跡が残り、
ベッドには、血がこびりついている。
政府軍に包囲されたアレッポでは、
食料も不足するようになり、
日々の暮らしも成り立たない。
何より、爆弾と空爆が人々の心に平安を与えない。

生の記録の持つ力の強さを思い知らされる。
爆弾が町を襲う遠景から、
建物の中で爆発に遭遇する近景まで、
すさまじい爆発音が耳を襲う。
きっと夜も眠れないだろう。

ワアドはSNSで現状を訴えるが、
世界中で何千万の人が見たにもかかわらず、
救いはどこからもやってこない。

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内戦ほど意味のないものはない。
なにしろ、同じ国民同士が銃を向け合い、
自分たちの国の都市を攻撃し、瓦礫に帰するのだ。
自らの国土を棄損する愚かな戦争。
しかも、アレッポは反政府軍の拠点とみなされ攻撃されただけで、
ほとんどの市民は普通の生活をしていた人たちなのだ。
その人たちが爆撃におののき、
家を焼かれ、家族を失う。
それが同じ地球の上で起こっている現実だ。

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内戦が始まる前のシリアの人口は約2200万人を数えていたが、
長引く内戦を避けるために
国民の多くは安全な地域を目指して移動を開始、
国民の半分以上が難民化する状態となった。
沢山の人々が祖国を捨て、
生活の不安におののきながら、異国の地を目指す。
これほどの悲劇はない。
国連の難民高等弁務官は
「この時代で、単一の紛争からの最も大きな難民が発生した」
との声明を出した。
欧州の難民問題は、
元となる国の問題を解決しない限り、終わらない。

シリア内戦は各国・各勢力の思惑が露骨に衝突した戦争で、
それがこの紛争の解決をより一層難しくしている。
アラブの春に影響を受けた、
平和的な反政府デモを発端とするものの、
多国籍の軍隊がそれぞれ別の思惑でシリアを舞台にして、
自らの権益を拡大・死守する代理戦争と化した。

そして、双方に武器を供給する国がいる。
人を殺す道具を生産し、提供してもうけようとする人が。

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ワアドは、家族と共に2016年12月にアレッポから避難。
さいわい、貴重な映像を一緒に持ち出すことができた。
今彼女は夫のハムザと2人の娘と一緒にロンドンに住んでいる。

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やがて、ワアドは持ち出した映像記録をもとに、
テレビでアレッポの悲劇を放送。
イギリスのニュース番組で最も注目された作品となり、
2016年の国際エミー賞・ニュース速報部門など24の賞を受賞した。
そして、ドキュメンタリー作家、エドワード・ワッツの手を借りて
発表したのがこの作品だ。
公開されると衝撃が走り、
カンヌ国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞するなど、
各国の賞レースを席巻した。
本年度アカデミー賞でも、長編ドキュメンタリー部門にノミネート
受賞確実と見られていたが、
Netflix の「アメリカン・ファクトリー」にさらわれた。
「アメリカン・ファクトリー」は、
アメリカへの中国企業の工場の進出を扱った映画で、面白いが、
「娘は戦場で生まれた」の感動にははるかに及ばない。
アカデミーは「平和」よりも「経済」を選択したわけで、
こういうところは、アカデミー会員のセンスを疑う。

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全編、内部にいた人間にしか撮れない
臨場感に満ちた映像があふれる。
作り物ではない、
まさしくドキュメンタリー中のドキュメンタリー。
戦場における人々の生活、
喜び、哀しみを綴った本作。
平和ボケの日本人には必見。

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特に、帝王切開で生まれ、仮死状態の嬰児が、
医者の懸命な対応で、
目を開き、産声を上げる場面では、
思わず声を上げ、
涙がこぼれた。

5段階評価の「4.5」

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/wNL1bEd-SKc

渋谷のシアターイメージフォーラムで上映中。
ガラガラにすいていた。悲しい。





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