小説『銀二貫』  書籍関係

[書籍紹介]

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高田郁(かおる)による人情時代小説

安永7年(1778年)、
大坂の寒天問屋「井川屋」の主人和助は、
京都伏見で、
仇討ちの場面に遭遇する。
父親は斬られて瀕死の重症を負い、
10歳になるその息子が父親を守ろうとしていた。
和助は、その時、前年の大火で焼失した天満天神宮への
再建寄進のために都合した銀二貫を持っていた。
和助はその銀二貫を渡し、
代わりに仇討ちを断念させる。
「その仇討ち、銀二貫で買わせていただきとうおます」
「私には、天神さんが
『その仇討ち、お前が買いなはれ』と
おっしゃってなはるように思えてならしまへんので」
正式に幕府に届け出ての仇討ちでなかったこともあり、
相手の武士はそれを受け取る。

武士の息子・鶴乃輔は
井川屋に寒天を納めている美濃志摩屋で
厳しい修行をした後、
井川屋の丁稚松吉として新しい人生を送ることとなる。

物語は、松吉の商人としての成長と、
新しい寒天、更に寒天料理の創作への努力として展開する。

主人の和助、番頭の善次郎、先輩丁稚の梅吉、
それに「真帆屋」という料理屋の主人・嘉平、
その娘で、松吉に心を寄せる真帆
などが物語を彩る。

再三の大阪の大火の情景が描かれ、
ようやく貯まった銀一貫を
火事で焼けた美濃志摩屋の再興のために提供するなど、
なかなか天満天神宮への寄進の約束を果たすことができない。
また、大火で行方不明になった真帆と再会した時には、
真帆は顔にひどい火傷を受けていただけでなく、
心にも傷を負っていた。

井川屋の寒天を使った嘉平の料理「琥珀寒」や、
腰の強い糸寒天を作るための松吉の尽力、
更に、新たな工夫で生まれた練り羊羹など、
松吉のたゆまぬ努力が描かれる。
練り羊羹を井川屋は独占せず、
その製法を大阪中の菓子屋に提供し、
その原料の糸寒天の卸しで、
商売が大きくなる。

寛政12年(1800年)、
和助の養子となった松吉と真帆は祝言を挙げる。
2人はそれぞれ32歳と27歳になっていた。
そして、井川屋は、22年越しで天満宮への寄進を行なう。

念願の寄進を終えて安心したのか、
82歳の和助は寝込むことが多くなり、
和助の枕元に来た善次郎が呼びかけると、和助は、
「なあ、善次郎、私はええ買い物、したなあ」とつぶやく。
善次郎も、仇討ちの時の銀二貫のことを言っているのだと悟り、
涙声で「へえ、旦那さん。ほんに安うて、ええ買い物でおました」と答える。

まことに見事に人の心をとらえる人情話。
読者は登場人物に寄り添い、
その喜怒哀楽を共にする。

大阪の商売人の信心の様子も描かれ、胸を打つ。
また、井川屋が仇討ちの侍に渡した銀二貫が
何に使われたかを知り、
胸が熱くなった。
お金が生きた使われ方をすると心地よい。

争いに走ろうとする松吉を諭す和助の話。

「人にはそれぞれ決着のつけ方、というものがある。
刀で決着をつけるのはお侍。
算盤で決着をつけるのが商人。
刀が命の遣り取りをして決着をつけるのが侍なら、
知恵と才覚を絞って
商いの上で決着をつけるのが商人なんや。
お前はんがしようとしたんは
刀を振り回すのに似てる。
商人にとって一番恥ずかしいのは、
決着のつけ方を間違うことなんやで」


全てが生かされていたことを知った時の松吉の思い。

そうしたこと全てが、
今は偶然というよりも、
天の配剤に思えた。
目には見えない大きな存在に守られ、
生かされているのだ。
これが和助の言う、
大坂商人の大切にする「神信心」なのだとも思う。


人の心の温かさが
人を育てる。
まことに爽やかな読後感の高田郁ワールド

銀二貫は金換算すると33両。
33両は396万円位で、
意外と少ない?

大阪の書店員らが大阪ゆかりの小説の中から
「ほんまに読んでほしい」本を選ぶ
「Osaka Book One Project」の第1回(2013年)受賞作。

2014年4月よりNHKの木曜時代劇枠にてテレビドラマ化。

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2015年11月に宝塚歌劇団により
「銀二貫 -梅が枝の花かんざし- 」と題して舞台化。

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更に、2017年6月に松竹により舞台化された。

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