映画『家族を想うとき』  映画関係

[映画紹介]

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前作「わたしは、ダニエル・ブレイク」
2016年カンヌ国際映画祭でパルムドールに輝き、
一度は引退を表明したケン・ローチ監督
しかし、社会の底辺で生きる人々の現実を見るにつけ、
撮らなければならない使命感に駆り立てられ、
引退表明を撤回しての最新作。

舞台はイギリスのニューカッスル。
ターナー家の父リッキーは宅配ドライバーとして独立。

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しかし、雇用関係ではなく、
フランチャイズという個人事業者。
そのために介護福祉士をしている
妻のアビーが必要とする車を売り、
1000ポンドの手付けで配送車を手に入れる。
2年も働けば、
車の代金も返済し、
賃貸の家から抜け出せるはずだった。

しかし、個人事業主とは名ばかりで、
ノルマと会社の規則がリッキーを追い詰めていく。
次々と押し寄せて来る荷物に
1日14時間の労働を強いられ、
宅配先では理不尽な扱いを受ける。

車を失ったアビーはバスで訪問先を訪ね、
そのため、時間の調整がつかず、
時間外労働にのめりこんでいく。

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アビーは介護する先で、
「母親に対するように接する」実に誠実で優秀な介護士だった。
しかし、その誠実さがあだになり、
自然、高校生の長男セブと
小学生の娘のライザとの接触時間が減り、
家に帰っても寝るばかり。
ライザは情緒不安定になる。
家族を幸せにするための仕事が家族との時間を奪っていく
それもこれも家族を想ってのことだったが、
親の心子知らずで、
セブは反抗期で非行に走り、
学内暴力や万引き事件を引き起こしてしまう。
そのための家族面談に行くことも出来ず、
仕事を休めば、罰金が待っている。
1週間の休みを求めても認められず、
せめて5日、3日と食い下がるが、応じてはもらえない。

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宅配業者の過酷な労働環境は、
日本でもよく知られている。
飲食店店長の労働条件も厳しい。
コンビニオーナーの苦境も報じられている。
抵抗しようにも、出来上がったシステムの中で
もがいてもはじき出されるだけだ。

そして、リッキーはある事件に巻き込まれてしまう。
怪我をして病院で診察を待つ中、
会社に電話すると、
代替要員と機器の弁償を求められる。
温厚なアビーがついに切れて乱暴な言葉を吐き、
病院の待合室中の人に聞かれてしまい。
「わたしは介護する立場なのに、
人を罵してしまった」と
すぐに後悔する場面は切ない。

最後のくだりは、
それでも働かなければならないリッキーの状況に
胸がえぐられる。

「わたしは、ダニエル・ブレイク」でも、
貧しい失業者に目を向けたケン・ローチ監督だが、
今回は更に厳しい現実に目を向ける。
ダニエル・ブレイクは妻を亡くした独身の失業者だったが、
今回は子どもを育てる父母の話だ。
家族のために働くことが
どうして家族の不幸を招き寄せてしまうのか


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万引き事件を起こしたセブを
警官がさとす場面が胸を打つ。
そうなのだ。
その状況から抜け出すには、
セブが学校で勉強し、
いい学校に進み、
良い就職をするしかない。
今を大切にするのが一番だ。
ところがセブにはそれが分からない。
自分のふがいなさに歯噛みするリッキーの姿。

「働けどはたらけどなお、わがくらし楽にならざり」。
しかも、ますます物事が悪い方へ悪い方へ転がっていく。

映画は安易な解決方法など提示せずに終るが、
その現状を打破するには、どうしたらいいかは、
観客の心に委ねられている。

富の公平分配は、
世界の課題だろう。
でも、誰がそれをする。
苦しむ庶民の味方はどこにいる。

オーディションで選ばれた俳優もみな素晴らしく、
一瞬も眠くならず、画面に釘付け。
83歳の監督の演出力は衰えを知らない

原題の「SORRY WE MISSED YOU 」は、
不在配達票に書かれた文句。

5段階評価の「5」

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/76_GaE1L7LU

今の時代に必要な立派な映画だが、
映画を見て、辛い思いをしたくない人は、
観なくていいです。
(いつも言うことで、すみません)

ヒューマントラストシネマ有楽町他で公開中。


ケン・ローチ監督の他の作品の紹介ブログは、↓をクリック。

「わたしは、ダニエル・ブレイク」

「ジミー、野を駆ける伝説」

「麦の穂をゆらす風」

タグ: 映画




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