映画『スペシャルアクターズ』  映画関係

[映画紹介]
                             
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「カメラを止めるな!」
大ヒットしたことで、
一躍注目された上田慎一郎監督の第2作。
(正確には、これ以前に
3人の共同監督作品「イソップの思う壺」がある。)

2017年11月、
「カメラを止めるな!」を上映会で観た
松竹ブロードキャスティングの深田誠剛氏が
上田監督にオファーをかけた。
「カメラを止めるな!」が大ヒットするより前の話だから、
深田氏の目は高かったことになる。

松竹ブロードキャスティング・・・
元々は衛星放送に番組を提供する会社として設立。
衛星放送事業の他、松竹制作の映画作品に出資、
「たそがれ清兵衛」(2002)「出口のない海」(2006)
「東京フレンズ」(2006)「超高速! 参勤交代」(2014)
等に関与している。
2013年から
「作家主義」と「俳優発掘」を理念とした
オリジナル映画製作プロジェクトを立ち上げ、
映画の製作事業を開始している。
俳優はオーディションで集め、
監督によるワークショップから映画の製作を行う。
作家主義を理念としているため、各監督は脚本も担当している。
作品は次のものがある。
「滝を見にいく」(監督:沖田修一、2014)
「恋人たち」(監督:橋口亮輔、2015)
「変態だ」(監督:安齋肇、2016):番外篇 
「東京ウィンドオーケストラ」(監督:坂下雄一郎、2016)
「心に吹く風」(監督:ユン・ソクホ、2017)
「ピンカートンに会いにいく」(監督:坂下雄一郎、2018)
「鈴木家の嘘」(監督:野尻克己、2018)
そして、第7弾にあたるのが本作である。

2018年12月にプロジェクトが始動。
出演者の公募を行うと、全国から1500通超の応募があった。
上田監督が書類選考を行い、200名まで絞り、
2019年1月のオーディションで50名にまで絞った。
2月上旬に25名ずつに分けて
ワークショップ形式のオーディションを実施し、
最終的に15名の役者を選出してワークショップを行った。
殆どがまだ無名の役者であった。
なお、選出にあたり、
「カメラを止めるな!」で活躍した役者は
応募してきていても書類選考の時点で落とし、
演技がある程度できるといった人物も落としたという。
主演の大澤数人は、
10年間で3本の役者活動しか行っていなかった。

プロジェクトの方針に従い、
脚本も監督の上田が担当し、
オーディションで選んだ15名の個性を元に
当て書きする形で脚本を執筆。
当初は5人の冴えない超能力者を主人公とした
SFアクション映画だったが、
予算の都合やプレッシャーから頓挫し、
脚本の初稿をキャストに渡す当日に全て白紙に戻すことを告げた。
キャスト15名全員が脚本づくりに協力する形で企画会議に参加し、
各人の提案したアイディアを取り入れ、
4月に現在の形のプロットが完成し、
4月16日に脚本初稿が完成。
「プレッシャーで気絶しそうなる日々を送っていた」
という上田監督の経験から、
主人公の気絶癖設定は決定稿で加わった。
5月7日にクランクイン。
撮影期間は19日間で6月1日にクランクアップした。

という経過から見えて来る特徴がある。
一つは、松竹ブロードキャスティングの
映画プロジェクトの性質から、
低予算であること。
もう一つは、俳優はオーディションで集め、
ワークショップから映画の製作を行うこと。
そして、オーディションの方針として、
演技経験者は排除し、
演技経験の浅い俳優を起用したこと。

既存の演技メソッドから外れた、
新鮮な演技を引き出す、というのは、
一つの見識だが、
危険も伴う。
それは、熟練の俳優の力を借りることが出来ない点で、
へたをすれば、素人の集団になってしまう、ということだ。
それが吉と出るか、凶と出るか、
一つの賭けといえよう。

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ストーリーは、次のとおり。

売れない役者の和人は、
緊張すると気絶するという心の病を持っており、
そのため、オーディションで失敗を重ねていた。
和人の慰めは、
子供の頃に憧れていた
超能力ヒーロー映画「レスキューマン」のVHSを
擦り切れるほど見直すことで、
セリフも全て覚えてしまっていた。

ある日、和人は久しぶりに会った弟から
「スペシャルアクターズ」という俳優事務所に誘われる。
そこは、依頼者の要望に応じて、
いかなる演技でも対応する特殊な事務所だった。
たとえば、恋人と一緒にいた男に酔ってからみ、
男にのされてしまう。
男は恋人からの信頼を得る、という芝居を
依頼者の男と相談の上、
引き受けて演じ、謝礼を得る。
また、占い師の客に扮して、
よく当たると吹聴する演技を行う。
などという芝居に参加して、
生活費を得ていた和人だったが、
スペシャル・アクターズにある依頼が飛び込む。
それは、カルト集団の信者になってしまった姉が
旅館を寄贈しようとしているのを阻止してほしいというのだ。
和人の潜入捜査の結果、
そのカルト集団「ムスビル」が
金儲け目的のインチキだった事実を把握した
スペシャルアクターズは、シナリオを作成、
ムスビルを壊滅させる計画を立てる。
その要となる役に指名された和人は
リハーサルを重ね、
気絶しそうになるのと闘いながら、
懸命に役割を演じようとするが・・・

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で、プロジェクトの目論見は
吉だったか、凶だったか。

結果は「凶」と判定せざるを得ない。
喜劇という、高度なセンスと演技力が要求される内容に対して、
演技陣はあまりに非力だった。
ああ、ここを訓練された役者によって演じられたら、
どんなに弾むだろう、
と思うシーンが沢山あった。
いや全編そうだと言ってもいい。
俳優は、伊達や酔狂で劇団に入って訓練しているわけではない。
経験によって蓄積した「演技の力」で勝負しているのだ。
演技経験のないほとんど素人の役者が
素晴らしい演技をするのは、
よほどの才能だ。
そして、そのような才能の持ち主は、
既に、ちゃんとした劇団に所属している。

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上田監督は演技の力を軽く見ていたのではないか。
あるいは、訓練された俳優の演技力に
触れた経験がない
のではないか。
「カメラを止めるな!」の役者も無名な人たちだったが、
その非力さを凌ぐだけの力を作品が内包していた。
今回は、それさえなく、
笑えなく、納得できない。
全編チープ感が漂うのは、
高い入場料を払った観客に対して
返すものがないということだ。

確かに、松竹ブロードキャスティングのプロジェクトには、
「俳優発掘」の理念があるので、仕方なかったかもしれない。
だが、次の作品は、
しっかりした映画会社で企画を練り、
潤沢な予算を獲得し、
優秀な俳優たちを起用して作ってもらいたい。
そうでなけれは、
「カメラを止めるな!」はまぐれだったと言われてしまう。

300万円の製作費で31億円の興行収入を挙げるなど、
めったに起こらない快挙だ。
その才能を挫折させないために、
映画会社も真剣に取り組んでいただきたい。

上田監督の真価が問われるのは、次回作だ。

5段階評価の「3」

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/h0-Izwpv8yc

丸の内ピカデリー他で上映中。

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