八千草薫は天女である(再録)  様々な話題

八千草薫さんが亡くなった。
若い時も、中年の時も、老齢になっても、
可憐で可愛く、凛としていた。

その八千草さんの亡くなるのを
予言(予見)していたようなドラマが、
テレビ朝日の「やすらぎの郷」だ。

2年前、「やすらぎの郷」で、
八千草さんの役、九条摂子が亡くなった。

その時のブログ、
2017年9月6日の分を再録して、
追悼としたい。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

テレビ朝日で昼の0時30分から放送されている帯ドラマ、
「やすらぎの郷」が昨日と今日、節目を迎えた。

重要な登場人物である九条摂子の死である。

通常のタイトルは↓のとおりだが、

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今日は、↓のような雨降り(涙)モード。

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「やすらぎの郷」とは、
東京から車で1時間半ほどの場所にある、
入り江を見下ろす海沿いに建っている
架空の老人ホーム。

芸能界のドンと呼ばれた加納英吉が、
かつてテレビ界で活躍して、
今は年老いて仕事も無く苦労している、
あるいは金銭面での困窮こそないが孤独な状態にある
俳優や歌手、脚本家、音楽家、大道具や照明技師などに対して、
その功績に報いるために作り上げた施設。
入居に際して食費や光熱費の負担は一切無い。
ただし、入居者は
施設を運営する財団の審査を通過した人間に限られる。

ドラマは、入居した脚本家の菊村栄を狂言回しにして、
入居者の人間模様を描く。

もちろん菊村は作者の倉本聰の分身で、
入居者は全員高齢者だから、
ボケの問題、病気の問題、死の問題が色濃く影を落とす。
何だか倉本聰の「遺言」のような内容で、
(倉本聰、82歳)
ユーモラスに描いてはいるものの、
少々きつい。
しかし、シニア世代の観るドラマとして、
視聴率はいいようだ。

出演者は、
菊村を演ずる石坂浩二をはじめ、
浅丘ルリ子、有馬稲子、五月みどり
野際陽子、加賀まりこ、富士真奈美、
八千草薫
藤竜也、ミッキー・カーチス、山本圭、上條恒彦

ら昭和の俳優たちが顔を揃える。

八千草、有馬、野際が80歳代で、
あとは全員70歳代。

他に名高達男、草刈民代、風吹ジュン
常盤貴子、松岡茉優
ら。

八千草薫が演ずるのは、
九条摂子という、戦前からの大スターで、
「姫」という愛称で呼ばれるとおり、
おっとりとしたお嬢様ムード。
91歳、という設定。

戦前の映画監督であった千坂浩二と恋愛関係に陥り、
しかし、千坂に妻があったことから
秘められた恋になってしまった。
千坂は出征先のアッツ島で死亡し、
千坂との思い出を大切にしているため、
ルポライターの取材で
千坂のことに話が及ぶと、
「千坂先生は私にとって大切な人です。
そのお方を傷つけるようなお話には応じられません」
と言って席を立ったりもする。

様子がおかしくなり、
受賞した映画賞のトロフィーや紫綬褒章などの勲章を始末し、
郷にあるライブラリールームで
かつて自分が出演していた映画を食い入るように見ている姿に
菊村はある予感を感じて不安になる。

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この時、画面に映し出される、
八千草薫の昔の映画の映像が↓。

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素晴らしく美しく、かつ気品がある

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当時、キラ星のごとくいた
女優の中でも抜きん出た美しさ。

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しかも、彼女に似た女優は、いないのだ。

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それは、北原三枝に似た女優がいないのと、似ている。

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その、若かりし頃の自分の姿を
食い入るように見つめる、
八千草薫の鬼気迫る演技

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やがて九条摂子は倒れ、病室棟へ搬送される。
実は末期の肺がんを患っており、
それが脳へ転移していて余命1ヶ月である事が明らかになる。

ベッドで夢うつつに菊村を千坂と間違えたりもする。

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その時、次のように述べる。

「この間ね、古い映画を観たの。
(千坂)先生じゃなくて、市村さんが撮ったシャシン(映画)。
多分、戦後、私が30歳位前後の時のシャシン。
・・・へたっぴぃ。
ほんとに・・・へたっぴぃ。
やっぱり千坂先生に撮っていただかないと、
一人じゃ演技出来なかったのね・・・
ただね・・・若くって・・・きれいなの。
自分で言うのも変だけども、
本当に、きれいで・・・うっとりしちゃうの。
だけど、演技は・・・へたっぴぃ。
恥ずかしいほど、へたっぴぃ。
でも、女優は、それでよかったのかもねえ。
若くてきれいなら、お客様に幸せをあげられるものね。
そういうものかもしれないわね。
今、テレビで売れてる女優さんたちも、
一杯、そういう方、いらっしゃるものね。
でも、私は・・・今、歳取って、
昔のきれいさ、なくなっちゃって、
その上、相変わらず・・・へたっぴぃ」

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実は、このドラマに出演する老優たちは、
みんな演技がへただ。
驚くほどへたくそだ。
何でだろう。
ものすごい見せ場の、儲け役の場面を与えられても、
全然、胸を打たない。

その点、八千草薫だけは違う
そのセリフに胸打たれ、涙が出る。

↓は郷の創立者・加納英吉が
死期の近い九条摂子に最後のお別れを告げに訪問したシーン。

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二人は入り江の海を並んで眺める。

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その場面を目的した菊村は、こう語る。

「それは、何とも、荘厳な絵だった・・・」

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そして、夜中に九条摂子は息を引き取る。

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密葬のため、写真を選ぶ菊村は、

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若い頃の九条摂子の写真を見ながらも、

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歳を重ねて、味が出た九条摂子の写真に惹きつけられる。

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そして、最後に選んだのが

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この写真。↓

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密葬の場にその写真が飾られるが、
それについて、菊村は、次のように語る。

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「この前、秀さんが私に言った、ひとつの言葉を思い出していた。
『花伝書』の中で世阿弥が言った、
『時の花』という言葉と『まことの花』という言葉。
確かに、若い頃の姫の写真には、
輝くばかりの『時の花』があった。
しかし、歳取ってからの姫の姿には、
その人生の深さを秘めた、
幽玄と言っていい、濃厚な美があった。

世の中には、あまたの女優たちがいる。
皆それぞれに、若い頃は美しい。
けれど、かつての美しさにいつまでも必死にしがみつき、
何とかその頃の、いわば『時の花』に固執して、
小じわを隠し、白髪を隠し、
衰えの中に咲く『まことの花』に気がつかないで、
一生を終えていく者たちもいる。

だが、姫の美しさは、それとは違った。
歳月のはぐくんだ、彼女の美しさは、
今、まさに今、更に輝いていた。
それは、秀さんが描いた、
小じわだらけの姫の絵に最も近いものだった・・・」

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まるで、倉本聰の八千草薫へのラブレターのような内容。
何だか八千草薫が本当に亡くなってしまったような感じだ。

八千草薫、今、86歳

幼少時に父を亡くし、母一人・子一人で育つ。
プール女学院在学中に宝塚音楽学校に合格し、
1947年(16歳)に宝塚歌劇団入団。
美貌・清純派の娘役として宝塚の一時代を風靡、
宝塚在団中から東宝映画などの外部出演をこなしており、
当時のお嫁さんにしたい有名人の統計で、たびたび首位に輝いた。
1957年(26歳)、歌劇団を退団。

退団後はテレビドラマでのおっとりとした良妻賢母役が好評で、
多くの作品に出演。
「うちのホンカン」「岸辺のアルバム」「阿修羅のごとく」など。

私生活では1957年に映画監督の谷口千吉と結婚した。
親子ほどの年の差(19歳)があり、
しかも3度目の結婚となった谷口との組み合わせは当時、
多方面で話題・波紋を呼んだ。
谷口千吉は、映画監督としては不遇だった。

夫婦に子はなかったが、おしどり夫婦として知られ、
結婚50年目となった2007年に死別(谷口、95歳)するまで連れ添った。

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昔「山口百恵は菩薩である」という本を書いた人がいたが、
それにならって、次の言葉を捧げよう。

「八千草薫は天女である」






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