エッセイ『失われた美風』  書籍関係

[書籍紹介]

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著者の藤原正彦氏は、数学者であり、
お茶の水女子大学名誉教授。
専門は数論で、特に不定方程式論。
新田次郎、藤原てい夫妻の次男なので、
文才を受け継いでおり、
エッセイストとして知られる。

本書は10年間にわたり週刊新潮
グラビア頁に連載された「管見妄語」
まとめた5冊目の本。
2017年10月12日号から
最終回2018年12月6日号までの内容をまとめている。

毎回3枚半の分量だが、手を抜いていない。
それは、父の新田次郎の
「五百枚も二、三枚も同じだ。
つまらぬものを一つでも書いたら
作家生命はそれまでだ。
それを読んだファンが逃げて行ってしまう」
という言葉を受け入れたものだという。

私は週刊誌はめったに読まないが、
図書館に置いてある週刊新潮の
「管見妄語」は時々読み、
その簡潔で本質的な記述に舌をまいたものだ。
幅広く、博識なだけでなく、ユーモアもある。
特に、奥さん(カウンセラー、心理学講師、翻訳家の藤原美子さん)に
軽んじられ、馬鹿にされる部分は、
思わず頬がゆるむものだった。

本書でも、心に残る部分が沢山ある。
たとえば、

本を書き終えるたびに思ったのは、
「良書を読むことほど得なことはない」ということだ。
著者が何年もかけて大量の書物を買い込み、読み込み、
その中から最も本質的と思われる部分を
分かり易く整理したものを、
たった数百円の出費で
ソファに寝そべったまま吸収することができる。
現代のように本の売れない時代に断言できることは、
「良書の著者ほど損すものはなく
良書の読者ほど得するものはない」
ということである。


その他、列挙すると、

心筋梗塞や脳梗塞やガンといった
恐ろしい病気の最大要因は、
酒でもタバコでもなく
文句なしに年齢である。

政治家が正義を振りかざしてはおしまいだ。
現実やものの軽重が見えなくなるからである。

石門心学では
質素、倹約、正直、勤勉により富を蓄え、
その富を社会に還元するように教えていた


サッカーのハリルホジッチ監督の解任について、こう書く。

日本に来る前の数年間、
監督としてアフリカにいたから
全く同じように選手に高圧的に接し、
感情的に理屈を並べて失敗した。
日本人は高圧的に言われても
すぐには反発せず従順に従うが、
心の中で次第にわだかまりを大きくさせる。
たとえ理屈が通っていても、
頭ごなしに言われれば
傷ついたり秘かにへそを曲げたりする。
それが長く続くと
いつか限界を超え、
爆発するかやる気をなくすかのどちらかとなる。
忖度という芸を知らない外国人にとって
日本人はすこぶる扱いにくい人種なのだ。
アフリカでなら高圧的に出れば力を発揮してくれ、
アメリカや中国でなら
給料5割増というような餌を示せば
目の色を変えて頑張ってくれようが、
日本人ではどちらもだめだ。
日本人を献身的に頑張らせるものは、
脅しでも理屈でも金銭でもなく
心情である。
仕事への使命感や、
上に立つ人への信頼や敬愛などが必要である。

世界中でもっとも従順素直で礼儀正しい日本人が、
もっともデリケートで、
限度を超すと前触れもなく爆発するという、
もっとも面倒臭い国民であることを監督は知らなかった。


その日本人の美徳につついて、こう書く。

我が国には江戸時代まで六法全書のようなものはなかった。
子供達が万引きしないのは、親のしつけであり、
「天罰が下る」であり、「お天道様が見ている」からであった。
私なども幼い頃、
明治中期生まれの祖母からよくそう言われた。
両親からは「汚いことはするな」と始終言われた。
汚いこととは、卑怯なこと、他を欺くこと、
強者にとりいること、臆病なこと、利己的なこと・・・
などであった。
一方、美しいこととは、
正直なこと、弱者を思いやること、
他人のために尽くすこと、ひたすら努力すること、
誠実な行動や勇気ある振舞い・・・
などであった。
我が国の庶民道徳は、
明文化されたものでなく
美醜で弁別されていたのである。
安土桃山時代の頃から
日本を訪れた幾多の西洋人が、
「どの国の人々より道徳心がある」とか
「生まれつき道徳を身につけているようだ」
などと目を見張った。
「汚いことはしない」日本人の、
貧しくとも誇りある姿だった。


移民政策については、こう記す。

経済政策は失敗しても、
国民の生活が苦しくなるだけで大したことはない。
たかが経済だ。いつかは元に戻る。
しかし移民受け入れは不可逆だ。
百万人の移民は、
夫婦が三人の子を産むとすると、
混血を含め
百年後には一千万を超し
二百年後には一億を超す。
明治22年、英国の著述家アーノルドは、
講演の中で日本の芸術、自然美、礼節、道徳などに触れ、
「日本は地上で天国あるいは極楽に最も近づいている国」
と語った。
安陪首相は今、
その日本をこの世から抹殺するための一歩を踏み出そうとしている。
見事な外交を展開してきた安陪首相だ。
正気を取り戻すことを期待したい。


他にも膝を打つことが沢山あった。
日本人の「失われた美風」を取り戻すための
貴重な本である。





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