映画『イエスタデイ』  映画関係

[映画紹介]

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イギリスの海辺の町に住むジャックは、
子供の頃からの夢であるシンガーソングライターを目指し、
幼なじみのエリーの支援でなんとか活動を続けてきたが、
全然芽が出ず、
そろそろ潮時かと、やめることを考えていた。

そんなある日、世界規模で原因不明の停電が起こる。
12秒間地球が闇に包まれる中、
ジャックは交通事故に遭い、
昏睡状態に陥ってしまう。
前歯を2本折り、ようやく退院して、
ささやかな祝宴の場で、「イエスタデイ」を歌うと、
友達たちが感動し、「いつ作ったんだ」と訊く。
「何言ってるんだ、ビートルズの曲じゃないか」
と言うと、
「何、それ?」
と不思議な顔をされる。

家に帰ってレコード棚を見ると、
ビートルズのアルバムだけが消え失せていた。
パソコンで「BEATLES」と検索すると、
「かぶと虫」と出て来る。
どうやら、停電後の世界では、
ビートルズは存在しないことになっているらしい。
それだけでなく、コカコーラやタバコも消え失せていた。
(もう一つ、ある文学作品も消えていたことが、後で分かる)

ビートルズの名曲を覚えているのは
世界でジャック唯一人だけらしい。
そこで、ジャックはビートルズの曲を歌って、
CDを出すと、評判を呼び、
あるミュージシャン(実在の本人が出演)から、
コンサートの前座をつとめないか、
という提案を受ける。
前座でビートルズの曲を歌うと、
本命歌手以上に受けてしまう。
そのミュージシャンがジョンの歌を聞いて、
「いつか僕を追い越す天才が現れるとは思っていたけど
君だったとは……」
と言うが、
いえいえ、あなたの前に天才はいたのです。

噂を聞きつけて、プロモーターが接触してきて、
世界的にデビューさせて、一儲けしようと企むが・・・

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よくタイムスリップして、
未来を知っている人物が
株で儲けたり、映画で当てたりする話はあるが、
それはあくまでも副筋で、
その「一人だけ知っている」内容
を真っ正面から扱ったのは、
本作が初めてだろう。
ビートルズの巨大な実績を辿るだけで、
大スターになれるのだから、その誘惑に勝てる人はいない。
だが、楽譜も歌詞も消え失せているから、
記憶を辿るしかない。
うろ覚えの歌詞を思い出そうと悪戦苦闘する様が
面白おかしく描かれる。
「ヘイ・ジュード」など、
「ヘイ・デュード(相棒)」に変えられたりする。
「レット・イット・ビー」を家族に聴かせる場面で、
「世界で初めて聴く人」になるはずなのに、
邪魔が入って果たせない場面も笑わせる。

しかし、本来善良なジャックは、
常に「自分は盗作している」という
罪悪感に責めさいなまれる。
いつか誰かに告発されるのではないかとの恐怖心も抱く。
その苦悩の頂点で歌うのが、
「ヘルプ!」だというのも笑わせる。

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もし同じことが起こって、
「シェイクスピアのいない世界」だの、
「スピルバーグのいない世界」だのが出来たら、
どんなことになるか、想像するだけで楽しい。

しかし、この話、どう落とし前をつけるのか、
途中で心配になった。
もし「夢オチ」だったりしたら、怒るぞ、
と思っていたが、
なるほど、そういう着地点になるか、
と納得した。

それにしても、ビートルズの曲でも、
知らない曲が沢山あるな、
と思い知らされた。
私の高校時代、
ビートルズの噂が伝わってきたかと思うと、
「抱きしめたい」や「プリーズ・プリーズ・ミー」
「シー・ラブズ・ユー」
がまとめて入って来て、ヒットチャートを席巻した。
ただ、漫然と聞いていたが、
本作では歌詞の訳詞が出るので、
ああ、そういう歌だったのか、
いいな、と改めて感心した。
「レット・イット・ビー」の字幕で、
「苦しみの中にいた時、母メアリーが来て〜」
となっていたので、びっくりした。
あそこは「Mother Mary comes to me 」で、
「聖母マリアが現れて〜」のはず、
と思って調べたら、
ポールが14歳の時に亡くなった母がメアリーといい、
母親のことだという解釈もあるのだと知った。
ポール自身は、
「どちらでもいい」と言っているらしいが。

奇想天外な発想を脚本化したのは、
「ラブ・アクチュリー」(2003)などのリチャード・カーティス
大変なビートルズ・ファンらしい。
「ビートルズへのラブレター」のおもむき。
それを「スラムドッグ$ミリオネア」(2008)のダニー・ボイルが映像化。
ちょっとダニー・ボイルらしくなく、
リチャード・カーティスに引っ張られた印象。
カーティスらしく、
途中、幼馴染みで無名時代を支えてくれた
エリーとの恋愛話になるが、
ちょっとここはもどかしい。

終盤近く、二人の人物が現れて、
ジョンを責めるかと思えば、逆に感謝を述べ、
その人が示した住所に行って、
ジョンはある人物に会う。
その顔を見た時「おお」と思わず声をあげてしまった。
誰だったのか、それは映画を観て下さい。

主人公ジャックを演じているのは、
インド系のヒメーシュ・パテル
ギターも歌も本人だそうだから、すごい。

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ビートルズが消えてしまった世界で、
唯一その曲を知る存在となった
シンガー・ソングライターという、
卓抜なアイデアで秀逸なコメディ。

5段階評価の「4」

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/oDckMWWhO0U

拡大公開中。

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