小説『火の粉』  書籍関係

[書籍紹介]

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雫井脩介の第4作。
2003年2月10日発売。

裁判官の梶間勲は、
裁判官としての行く末に疑問を感じ、
大学からの教員の誘いに応じるつもりでいた。

その最後の裁判は、
一家惨殺事件で、
夫婦二人を金属バットで撲殺し、
息子をネクタイで絞殺したというもの。
犯人の竹内真伍は一旦は罪を認めたものの、
公判で供述をひるがえし、
自白は検察によって強要されたものだと主張。
事件は覆面をして侵入して来た男によって実行されたもので、
竹内自身も金属バットで背中を殴打され、気を失っている。
犯人の竹内は有罪なら死刑の可能性がある。

しかし、梶間は無罪判決を言い渡す。
竹内の背中の打撲痕が、
自分自身で打ちつけてつけるには重篤であり、
竹内を犯人とするには、合理的な疑いがあるからだった。
また、夫婦と竹内は仲の良い友人であり、
貸借関係もなく、
動機もなかった。

検察は控訴するが、一審の判決を支持、
上告は断念し、
竹内の無罪は確定した。

梶間は退官して大学教授となり、2年の歳月が流れた。
オープンキャンパスの梶間の講義の聴衆の中に
竹内の顔を見出した梶間は、
ゼミに竹内を招待する。
冤罪についての実例を話してもらうためだ。
竹内の話は、検察による自白の誘導と強要を実感的に語り、
学生の評判はよかった。

それからしばらくして、
梶間の隣家の空き家に竹内が引っ越してきた。
偶然だと竹内は言い、手作りのバウムクーヘンや
大量の各地の名産品を持って挨拶にきた。
梶間家は夫婦と梶間の母親、
息子夫婦の俊郎と雪見と孫娘の6人暮らし。
武内は姑の介護に身も心も疲れ果てている
梶間の妻・尋恵に代わって
梶間家で介護を手伝ったりしながら、
次第に梶間家の日常に入り込んでくる。

やがて、姑は食べたものを喉につまらせて死ぬ。
また、雪見の周辺でも、
不可解なことが起こり始める。

ある日、雪見は記者を名乗る男から、
武内は危険だという警告を受ける。
やがてその正体が記者ではなく、
武内が無罪判決を下された事件の
被害者遺族・池本亨であることが分かる。
池本は事件の犯人は竹内だと言い張る。
事件前の状況が今の武内と梶間家の状況と
似ているものを感じた雪見は
危機感をつのらせる。

梶間が下した判決は本当に正しかったのか?
武内は本当に殺していないのか?
梶間家と親しくする真意は何なのか。

梶間は竹内の古い友人に会い、
竹内の性格を聞く。
それは、梶間に疑いを抱かせるものだった。
しかし、それは同時に、
梶間の下した判決を否定するものとなる。
梶間は、殺人者を世に放ってしまったのか?
梶間の苦悩は深まっていく・・・

実に面白い
ページをめくる手ももどかしく、
夜中の3時過ぎまで一気読み。
普通の一家に隣人が次第に侵入してくる不気味さ。
そして、竹内の性格が明らかになるあたりから
加速度的に面白くなり、
最後は怒濤の展開。

背後に裁判官と判決を巡る問題があり、
梶間が真相に近づけば近づくほど、
梶間の裁判官としての存在そのものにかかわり、
火の粉が自分の家族にかかってくる。
その緊迫感がたまらない。

こんな面白い原作をテレビが放っておくわけもなく、
2005年2月にテレビ朝日の土曜ワイド劇場で放送。
出演は原沙知絵、嶋尾康史、愛川欽也、朝丘雪路、村田雄浩ら。
2016年には東海テレビで連続ドラマ化
出演はユースケ・サンタマリア、優香、朝加真由美ら。
観てみたかった。





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