小説『犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼』  書籍関係

[書籍紹介]

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「犯人に告ぐ」の続編
「1」との間で、出版には11年が経過したが、
作品中では、「1」の半年後の話。


「1」は終始警察側の描写で、
犯人は手紙でしか登場しないが、
この「2」では、
犯人側と警察側、それに被害者側の三者を交互に描く。
というのも、犯人側の手口が巧妙で、
その意図や計画を明らかにすることで、
話を引っ張っていくからだ。

振り込め詐欺グループに属していた砂山知樹(ともき)は
弟の健春(たけはる)と共に、
警察の踏み込みを奇跡的に逃れる。
直前に詐欺グループの指南役であった淡野悟志(あわの・さとし)が
詐欺グループの店長だった社本(しゃもと)に電話で言ったという
「レスティンピース」(rest in peace =安らかに眠れ)という言葉に反応し、
事務所から出ていたために難を逃れたのだ。

その後、知樹は、天才詐欺師・淡野から
日本の犯罪史上に類を見ない新たな誘拐計画を持ちかけられる。
それは、誘拐をビジネス化している外国の例を
日本的にアレンジしたもので、
誘拐対象の命を保証し、無傷で帰すかわりに
警察を介在させずに身代金をせしめる計画で、
淡野はそれを称して「日本における誘拐ビジネスの元年」だという。

かつて誰かが電話を使って身内を装う詐欺を始め、
それがオレオレ詐欺や振り込めと名を変えながら
犯罪の一大ムーブメントになっていったように、
(成功例が少なく)今や廃れたかに見える身代金誘拐も、
自分たちの手からムーブメントが起きる


一味は、その実績を作るために、
美容機器メーカーの御曹司を誘拐し、
表に出ない身代金を一千万円せしめる。
そして、それが「大日本誘拐団」の仕業であると宣言する。

つまり、「大日本誘拐団」に誘拐された場合、
警察を介入させずに、
要求に従って身代金を支払いさえすれば、
被害者の命は保証する、
という実績作りだったのだ。

淡野と知樹と健春の三人は、
標的として、横浜の老舗洋菓子メーカー・ミナト堂を定める。
ミナト堂は、知樹が就職内定していたにもかかわらず、
会社の不祥事で雇用が保証できず、
内定取り消しをした企業で、
知樹は人生を狂わされた企業から
一億円の金塊を奪取することに喜びを感じていた。

誘拐は実行され、
ミナト堂社長の水岡勝俊とその息子の祐太を別々に拉致、
二日後に水岡だけが解放される。
祐太の命を保証する代わりに、
会社が用意した金塊を提供する計画だ。
解放された水岡は警察の事情聴取を受けたが、
身代金の受け渡しに関しては、
虚偽の申し立てをしていた。

この誘拐事件の指揮を取るよう神奈川県警本部長の曾根の
任命を受けた巻島史彦(まきしまふみひこ)は、
水岡と接触し、
まだ何か隠していることがあると疑念を抱く。

身の代金受け渡しの当日。
水岡が言った受け渡し場所を固める警察。
しかし、真の受け渡し場所は別にあった。
水岡の中に葛藤が生まれる、
本当のことを言うべきかどうか・・・

始めの方で振り込め詐欺の詳細な手口の紹介と
巻島の周囲の警察人事の問題などが描写されるが、
少々退屈。
「1」に比べて失敗かな、
と思ったが、
誘拐の手口が判明するあたりから、
俄然面白くなった。

犯罪の天才・淡野の計画が
実に周到で、
状況が変われば、
次のプランも用意されているのだ。
そして、警察の心理、被害者の心理もよく読んで、
計画が進行する。
果たして誘拐と身代金奪取は成功するのか・・・

と、ここで、読者は何時の間にか、
犯人側に感情移入し、
成功を期待している自分に気づいて戸惑う。
というのも、
犯人側の淡野や兄弟の姿が実に魅力的に描かれているからだ。
そして、ミナト堂を狙う知樹の動機も同情できる。

また、被害者の水岡の心理も納得できる描写だ。

犯人、被害者、警察の三つ巴の騙しあいが展開する。

そして、淡野の誘拐計画が
オレオレ詐欺で蓄積したノウハウに基づいているのも
なるほどと思わせる。
「出し子」「受け子」や「逃げ子」などの存在も面白い。
監視カメラの網を縫って、
山手線内で着替えて逃走する手口も興味をそそる。

物語は、第2の身代金受け渡しの計画に移る。
ページをめくる手が止まらない。
実に面白い

今回は公開捜査もなく、
犯人に呼びかけることもないと思わせておいて、
最後に、やはり呼びかける。
「震えて眠れ」の決めゼリフと共に。
続編必至と思わせるが、
既に「3」は刊行されている。

是非映画化してもらいたい、
誘拐事件映画の新機軸となるに違いない。





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