小説『童の神』  書籍関係

[書籍紹介]

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昨年の「角川春樹小説賞」を受賞し、
「直木賞」にもノミネートされた、
平安時代中期を舞台とした冒険小説。

当時、京都の周辺には、
「鬼」「土蜘蛛」「滝夜叉」「山姥」「夷」などと呼ばれて
差別され、排斥されてきた先住の人々がいた。
それらの総称が「童」(わらわ、後にわらべ)で、
童の軍勢と朝廷軍との長い戦いを描く。

童たちが蔑まれるのは、理由はなく、
「己が蔑まれたくないから誰かを貶める」
という人間の業によるものと、主人公は言う。

物語は969年の安和の変から始まる。
「天下和同」を目指す童たちの反乱は、
朝廷側の陰謀で瓦解し、
敗残者は京都周辺に潜伏する。

その6年後、皆既日蝕の中で
一人の赤子が産み落とされる。
本編の主人公、桜暁丸(おうぎまる)で、
異国人の母から生まれ、
身長は高く、黄金色の髪と鳶色の目と高い鼻を持ち、
それゆえに差別を受けて生きてきた。
天変地異の中での誕生故「禍(わざわい)の子」とも呼ばれた。

その桜暁丸が様々な人と遭遇し、成長し、
やがて反朝廷勢力の長となっていく。
幼い時はその容貌ゆえに「花天狗」と呼ばれ、
最後には「酒呑童子」(しゅてんどうじ)と呼ばれる。
そう、あの「大江山の鬼」である。

それ以外にも平将門、安倍晴明、源頼光、坂田金時、
頼光四天王なども登場する。

根底に流れるのは、
人間社会の差別
名付けられた「童」という蔑みの言葉を
無くしたいという叫びの戦いだ。
同じ赤い血が流れる人間として、
共に手をとりあって生きる世の中をつくろうという理想を掲げる。

「己が蔑まれたくないから誰かを貶める。
胸を張ってくれ。我らは何も汚れてはいない。
我らは誰よりも澄んだ心を持って生きたはずだ」


そして、富を独占する貴族から盗み、
貧しい者に施そうとする。

「余っている所から取って、
足りぬ所に配っているだけだ」


全編、京都を囲むように山に立てこもった
童たちと朝廷側との戦いの描写が続く。
臨場感があふれ、
当時の武士たちの戦いぶりが克明に描かれる。
さながら平安版「バーフバリ」の印象。
凛々しい姿は読者の心を掴み、
最後の負け戦に桜暁丸が「童」の旗を掲げて
命を投げ出す姿は涙さえさそう。

「だが・・・人は立って死なねばならぬ時もある」

登場人物が生き生きとし、
師弟愛、親子愛、夫婦愛、兄弟愛、友情、同胞愛
が美しく切なく描写される。

時代小説も題材を求めて江戸から平安にシフトしつつあるのか。






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