短編集『変わったタイプ』  書籍関係

[書籍紹介]

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トム・ハンクスといえば、
アカデミー賞主演男優賞を2度取った、
名優中の名優。
はじめ、同姓同名?と思って、
著者紹介を見たら、
正真正銘、あのトム・ハンクスなのだった。

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あとがきの紹介を読むと、
最初、「ニューヨーカー」に「アラン・ビーン、ほか四名」を掲載。
「ニューヨーカー」といえば、
あのサリンジャーなども小説を載せた名門である。
この作品に目をつけた出版社(クノッフ社)からの誘いがあって、
一冊の本が出来るほどの分量が書かれることになった。
その間、俳優としての移動先のホテルや機内でも執筆を続け、
雑誌の掲載から3年後に
この短編集を発刊。
61歳の遅咲きのデビューである。

全部で17篇
うち普通の意味での短編は12篇。
あとは脚本の体裁で書かれた1篇と、
地方紙のコラムニストが書いたという設定の町自慢の短文が4篇。

そのどの作品にも、タイプライターが登場する。
というのは、トム・ハンクスは、
年代物のタイプライターの蒐集家としても有名なのだという。

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タイプライター好きが高じて、
iPadでタイプライター風の打鍵感覚をもたらす
「ハンクス・ライター」というアプリを開発したという。

各作品の冒頭扉ページの前には、
タイプライターの写真↓が掲載され、

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あるときは重要なアイテムとして、
あるときはチョイ役として作品に登場する。

どの作品も良きアメリカの短編小説、という趣で、
暖かい音色がずっと底に流れている感じ。
どの作品も読み終えた読後感がすこぶるいい。
大御所俳優が「文才があるところも見せたい」
とばかりに書いた域を越えて、
本物の才能がきらめいている。

しかも、描かれた世界は多彩。
中にはミステリー風のものもSFもある。
才能のある人はなにをやってもすごい。

たとえば、「クリスマス・イヴ、1953年」は、
ある田舎町の一家のクリスマスの情景と思わせていて、
年に1度かかって来る友人の電話で状況が一変する。
その友人は戦友で、欧州戦線で共に地獄を味わっていたのだ。
その記憶が主人公にも蘇ると共に、
主人公自身が戦争で障害を得た者だということが判明するラストの鮮やかさ。

父と一緒にサーフィンに行った海岸で、
父の不倫の現場を目撃してしまう青年の話「ようこそ、マーズへ」

俳優になる夢を抱いて田舎から出て来たニューヨークで、
居候生活に倦み疲れた女優の卵の
役を得るための悪戦苦闘を描く「配役は誰だ」
                  
離婚した父母の間を行き来する少年を描いた「特別な終末」

5ドルで買ったタイプライターを修理に出した先で、
タイプライターの蘊蓄に触れる「心の中で思うこと」
この小説ではタイプライターが主役。
トム・ハンクスは、
今どき誰も使わないタイプライターをなぜ集めるのかと聞かれて、
電源もいらずシンプルな機構で、
「文字を打つ喜び」をプリミティブに実感できるから、と答えている。

ある機械部品の発明で巨万の富を得た男が、
1回6百万ドル支払って1939年のニューヨーク万博に出かけ、
そこで出会った女性に恋をしてしまう「過去は大事なもの」
1939年から見た1960年が輝く未来に描かれる。

ブルガリアからギリシャ経由で密入国した男が
ニューヨークの町で居場所を見つけるまでを描く「コスタスに会え」

どれもユーモアとウィットに富んだ、
読んで面白い作品ばかりだ。

おススメ。

作品の題名は、次のとおり。

へとへとの三週間
クリスマス・イヴ、一九五三年
光の街のジャンケット
ようこそ、マーズへ
グリーン通りの一カ月
アラン・ビーン、ほか四名
配役は誰だ
特別な週末
心の中で思うこと
過去は大事なもの
どうぞお泊まりを
コスタスに会え
スティーヴ・ウォンは、パーフェクト
ハンク・フィセイの「わが町トゥデイ」
4篇





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