映画『ウインド・リバー』  映画関係

[映画紹介]

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アメリカ中西部・ワイオミング州
雪に閉ざされた山岳地帯の
先住民(ネイティブアメリカン)保留地で、
18歳の先住民の女性、ナタリーの死体が見つかった。
現場から5キロ圏内には民家がひとつもなく、
ナタリーは薄着で裸足だった。
暴行を受けていたことから、
ナタリーが何者かから逃走中に死亡したと思われる。

保留地は連邦政府の管轄なので、
第一発見者となった野生生物局のハンター、コリー・ランバートは、
部族警察長ベンとともにFBIの到着を待つが、
やって来たのは、新米の女性捜査官ジェーン・バナーだった。
被害者が先住民だと知ったFBIは
若い経験の浅い女性捜査官を一人だけ送り込んで来たのだ。
しかも、ラスベガスから来たというジェーンは軽装だった。

しかし直接的な死因は
極限の冷気を吸い込みながら走ったことによる肺出血であり、
他殺ではないため、
FBIの専門チームを呼ぶことができなくなった。
殺人は連邦法違反だが、レイプは州法違反だからだ。
そこで、ジェーンは、
地元の地理や事情に精通したコリーに捜査に協力を求める。

二人は捜索中に森の中で男性の遺体を発見。
それは、ナタリーの恋人のマットだった。
警察長は保安官4人を引き連れ、
マットの住んでいた
鉱山警備員用宿舎のトレーラーハウスに向かうが・・・

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舞台となるウインド・リバー先住民居住地は、
ワイオミング州のイエローストーン国立公園の南にあり、

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鹿児島県ほどの面積に
2万6千人のアラパホ族とジョジョーニ族が暮らしており、
原住民女性の失踪や性犯罪被害が頻繁に起こっている、
という背景がある。
先住民を押し込めた保留地は、
アメリカの最大の失敗と言われている。

コリー自身も
先住民の女性との間に生まれた高校生の娘の死という
悲しい過去を持つ。
3年前、夫婦で家を留守にしている間に
若者たちが家でパーティーを開き、
翌日、家から30qも離れた場所で娘、
エミリーの死体が発見されたのだ。
その時心配してくれたのがナタリーであり、
娘エミリーの死とナタリーの悲劇が重なって見えている。
娘の死が原因で妻と離婚し、
幼い息子とも離れ離れに暮らしている。
事件は解明されず、
コリーはそれ以来ずっと、
娘を守ってやれなかった罪悪感に苛まれ続けていた。

ナタリーの父親マーティンは、
心を病んだ妻とドラッグ中毒の息子を抱えていた。
コリーはマーティンに犯人を見つけた時の処置を約束する。
コリーとマーティンの会話が哀切。

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というわけで、一人の女性の死を通じて、
アメリカ社会の中にある闇に迫る、骨太の作品。
その物語がワイオミングの荒涼とした雪の光景の中で展開する。
雪と静寂しかない中、貧困に苦しみ、ドラッグに逃げる
住民の中に蔓延する閉塞感、絶望感が胸をえぐる。

心に傷を抱えた孤高のハンターと
FBIから派遣された新人女性捜査官という
対照的な二人が次第に心を通わせながら、
理不尽な殺人事件の真相に迫っていく様はスリリング。
クライムサスペンスの形を取りながら、
アメリカの抱える暗部に迫る内容は
一瞬の停滞もせず、最後まで惹きつける。

途中、えっと思わせる展開で
事件の真相を明らかにする手法も鮮やか。

メキシコ国境地帯における
麻薬戦争の実態に迫った「ボーダーライン」(2015)、
銀行強盗の兄弟を追う
テキサス・レンジャーの攻防を描く「最後の追跡」(2016)
の2作で脚本を手がけたテイラー・シェリダンの初監督作品。
(脚本も執筆)
シェリダン自身が称する“現代のフロンティア3部作”の最終作だという。
脚本家出身の監督の卓越した才能に脱帽する。
カンヌ国際映画祭<ある視点>部門で監督賞を受賞。

全米わずか4館でスタートした本作は、
評判が口コミで広まり、公開4週目には2095館へと拡大。
興収チャート3位にまで昇りつめ、
6週連続トップテン入りのヒットを記録した。
アメリカの観客の目を確かだ。

コニーを演ずるのはジェレミー・レナー
寡黙で孤独のハンターを見事に造形。渋い。

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ジェーンに扮するのはエリザベス・オルセン
頼りなげだが、
いざ修羅場に臨んだ時、本領を発揮する。

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また、雪に閉ざされた大自然の風景を見事に映像化したのは、
ベン・リチャードソン撮影監督。
スノーモービルの移動撮影が素晴らしい。

映画は最後に、
「数ある失踪者の統計に
ネイティブ・アメリカンの女性のデータは存在しない。
実際の失踪者の人数は不明である」
という字幕を表出する。

これほどの作品なのに、
アカデミー賞他の賞レースでは無視。
どうやら、セクハラでハリウットを追われた
ハーヴェイ・ワインスタインが製作に名を連ねているかららしい。

5段階評価の「4.5」

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/ZVuBuQcuFOI?t=5

角川シネマ有楽町他で上映中。

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