インドのトイレ革命  様々な話題

本日は、尾籠(びろう)な話で失礼します。
というのは、先日、↓の記事を見つけたからです。

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人口13億を抱えるインドで、
半分近くの人が今だに屋外で用を足しているとされ、
衛生上の問題から
トイレの設置が政府によって進められているものの、
宗教的理由、社会的理由で改善が遅々として進まない、
という話。

今、我々日本人はどこに行っても水洗トイレがあり、
普通にトイレットペーパーを使っていますが、
紙で後始末するというのは、
世界でも半分に満ちません。

そもそも紙が発明される前は、
いろいろなものでお尻を拭いていたわけで、
慶應義塾大学名誉教授の西岡秀雄さんが著した
「トイレットペーパーの文化誌」には、
紙に代わるものとして、
指と水、指と砂、小石、土版
葉っぱ、茎、とうもろこしの毛・芯
ロープ、木片・竹ベラ、樹皮、海綿
布切れ、海藻、雪
などが挙げられています。

その分布は次のとおり。

・指と水:インド、インドネシアほか
・指と砂:サウジアラビアほか
・小石:エジプト
・土版:パキスタン
・葉っぱ:旧ソ連、日本ほか
・茎:日本、韓国ほか
・とうもろこしの毛・芯:アメリカ
・ロープ:中国、アフリカ
・木片・竹ベラ:中国
・樹皮:ネパールほか
・海綿:地中海諸島
・布切:れブータンほか
・海藻:日本
・雪:スウェーデン

ピラミッド観光の男性ガイドたちは、
ポケットに小石を数個入れているといいます。
砂漠で大便をした後、お尻を拭くためです。
砂漠に落ちている小石は熱いので、
拾ってもすぐに使えませんから、
あらかじめポケットで冷やしておくのです。
使い終えたら小石は捨てますが、
灼熱の砂漠なので自然に消毒できる、というわけ。

この本が出版された時(1987年)の
世界人口は約55億人。
西岡さんは「世界人口の3分の1しか紙は使っていない」
と書いています。
それから30年経ち、
今のトイレットペーバーの生産量(約34003400万トン)で類推すると、
世界人口の2分の1
つまり35億人くらいは紙を使っているといいます。

日本で紙が使われるようになったのは、江戸時代。
私の子供の頃、ちょっと色の濃い、
質の悪いチリ紙がトイレに置かれていました。
名称は「落とし紙」。
家によっては、新聞紙を適度な大きさに切って使っていました。
その頃は当然ボットン便所。
定期的に肥桶で回収され、
野菜の養分となり、
それが寄生虫に感染する原因となっていました。

昭和30年代に入って、
水洗トイレが普及。
ボットン便所は田舎だけのものとなり、
やがて姿を消し、
同時に「バキュームカー」というものもなくなりました。

その前提には下水の整備があったわけで、
私たちが何気なくトイレに流しているものが、
張りめぐらされた下水管を通じて集められ、
浄水場で浄化されてから海に流される、
東京という1300万人もの大都会の
洗濯水、料理水、風呂の水、トイレの水が
どうやって処理されているのか、
気が遠くなるものがあります。

ところで、インドですが、
屋外、屋内問わず、
水で処理するのが一般的で、
トイレには、水をためたバケツがあり、
お尻を洗うようになっています。

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公衆トイレに行く時は、
小さなカップに水を入れたものを持って入ります。
水と共にお尻をきれいにするのは左手と定められており、
従って、左手は不浄なものとして、
インドの人は食事をする時、右手しか使いません。
しかし、料理人は左手は使うはずで、
そのあたりはどうなっているのか。
また、日本に来たインド人が
寿司職人が左手にシャリを持って寿司を握るのを見て、
どう思うのか、
一度訊いてみたいものです。

世界で日常的に野外での排泄を強いられる人口は
約9億5千万人と推計されていますが、
うち、インドが半数を占め、
5億6425万人が屋外で用を足しているとされています。

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これが様々な問題を発生させています。

まず、衛生問題
インドで幼児(5歳未満)の死因の17%は下痢とその合併症で、
原因の8割が排泄物に含まれる雑菌の経口感染です。
井戸や水源付近で排泄が繰り返され、
水が汚染されるからです。

次に安全問題
北部ウッタルプラデシュ(UP)州では14年5月、
用を足すために家の外に出た10代の少女2人が
複数の男に性的暴行を受け、殺害される事件が発生しました。
各地では、このように
野外で女性が性的暴行被害に遭うケースが頻発しています。
排泄中に野犬や蛇に襲われることもあります。

2014年からモディ首相の強い意向で、
トイレ設置計画「スワッチ・バーラト(クリーン・インディア)」プロジェクト
が立ち上がりました。
19年までに屋外排泄ゼロを目指し、
約1億2千万世帯へのトイレ新設を目指すというもの。

以前、ペルーを旅行した時、
農家の庭にブルーの小屋が建っているのを見ましたが、

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衛生状態の改善のためにフジモリ大統領が設置したトイレだと聞きました。

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クリーン・インディア計画の実際はどうか。
首都ニューデリーから車で3時間、
政府主導でトイレが行き渡ったというガダワリ村
ガンジス川沿いの人口500人ほどの小さな村ですが、
「この村には95%の家庭にトイレが敷設された。
政府のキャンペーンの大きな成果の1つだ」
と担当者は言いいます。
確かに各家庭の庭先にコンクリート製のトイレが設けられています。
過去にトイレを持つ家庭は皆無でしたが、
2015年から政府の援助で設置されたものです。

しかし、実情は、
「建てられた99%が使われていない。
政府は本当にただトイレを作っただけだから」
と話す住民。
わずか3年前の設備にも関わらず、
多くはドアが壊れ、使用されている形跡がありません。

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トイレこそ完成しましたが、
上下水道は整備されず、
埋設されたタンクのくみ取り作業もなく、
雨期には排泄物があふれかえり、悪臭が漂います。
その結果、物置として使われることがほとんどで、
村人は依然として道端や草むら、
線路をトイレ代わりにしています。
その一人の女性は、                               
夜にひっそりとガンジス川河川敷に行って用を足すといいます。
「外は恥ずかしいし、怖い。
それでも家のトイレでよりは清潔だ」

「家のトイレでよりは清潔だ」とは、すごい言葉です。
トイレを作っただけで、下水を整備しなければ、
当然、そういう結果になります。
しかし、日本でもボットン便所の
排泄物収集システムはあったわけですから、
下水なしにもやれるのでは?
という疑問に対しては、次の答えがあります。

インドの家庭にトイレが根付かない理由・その1。
インド最大の宗教、ヒンズー教との関係
ヒンズー教では「浄」と「不浄」という概念が重視されるため、
トイレは不浄で遠ざけるべきものという意識は伝統的に根強く、
農村部では家を建てる際に
ヒンズー教の僧侶がトイレを建てないことを勧めることもあるといいます。
家から「不浄」を切り離すためです。

インドの家庭にトイレが根付かない理由・その2。
インド社会に隠然と残る
ヒンズー教の身分制度「カースト」の影響
高位カーストが不浄な職に携わることはありえないため、
排泄物処理など不浄な作業は、
基本的には下位カーストの仕事という認識が根強いのです。
くみ取り式トイレの掃除や処分は
「低カーストの人たちの仕事」という抵抗感から敬遠され、
その結果、トイレを設置しても誰も管理しないため、
使われなくなるというのです。

モディ氏は演説で、「トイレが第一、寺院はその次」と言い、
あえて宗教よりも、公衆衛生の優先順位は高いと言及したとおり、
モディ氏が進めるトイレ改革は、
インド人の考え方を変えていく作業にほかなりません。
また、別の有識者は、
「インドを清潔にしようという活動は意義としては賛同できるが、
カーストの問題を放置していては、抜本的な解決にならない」
と断言しています。
インドでは、下水が詰まった際、
排水管内部に入って手作業で清掃する人たちが3万人ほどいますが、
全員が低カーストの人たちです。
「不浄なことは『すべて下位カーストに任せる』という思考が
国民に染み込んでいる。
トイレ改革を通じて、インド人の意識が変わることを願う」

とこの有識者は話しています。

このように、インドのトイレ改革の最大の障害は、
宗教とカースト制。
長年の習慣を打破するのは、そう簡単ではありません。

ところで、お隣のバングラデシュ
インドより前にトイレ改革に着手し、
成功しました。
2003年に43%だった屋外排泄率を、
15年には1%まで減らしました。
それには、毎年、国の開発予算の4分の1をトイレ設置に使用。
すごい意気込みです。
特に屋外で用を足すデメリットの周知活動に力を入れました。
地元NPO関係者は
「トイレだけ作っても意味がなく、教育こそ重要だ」と話しています。
また、バングラデシュはヒンズー教ではなく、
イスラムの国
少なくとも宗教的障壁はないようです。

まもなく、中国を越えて、
世界一の人口を抱えるようになるインド。
なにしろ数が多いですから、
この国の国民が冷蔵庫を買い揃え、
食品を貯蔵するようになると、
世界の食料が枯渇する、
という説もあるくらい。
この国の人々が紙を使うようになったら、
どういうことになるでしょうか。

来日した外国人が驚くほど
清潔なトイレが整備されている日本。
駅でもデパートでも、
臨時に使えるトイレはどこにもあります。
その上ウォッシュレットが普及し、
手を使わずにお尻を処理できる。
インドの人々にとっては
夢のような国、ニッポンです。





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