朝鮮半島の平和?  政治関係

昨日、韓国の文在寅大統領と
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が
板門店で首脳会談し、
朝鮮半島に突如として平和の風が吹き始めている。

共同宣言の骨子は、

@完全な非核化を意思確認
A年内に朝鮮戦争の終戦宣言をし、
 平和協定に転換するべく推進
B文在寅大統領が秋に訪朝

等で、
半島の戦争状態を終結させ、
非核化が実現し、
半島に平和が訪れるなら、
これほどいいことはない。

しかし、今まで何度も北にはだまされてきた過去があるだけに、
今回も看板通りに受け取るわけにはいかない、
という国際世論もある。
過去の2度の首脳会談の結果が
ことごとく裏切られており、
その間に北朝鮮の核とミサイルの装備が進んで
アメリカまで届く弾道ミサイルが完成に至ってしまった
苦い経験から、懐疑的な見方も多い。

しかし、
今回の南北首脳会談は、
実は序幕で、
本当のドラマは、
6月にも行われる米朝首脳会談なのだ。

アメリカは、「非核化」については、
歌い文句ではなく、
「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」
を求めている。

完全とは、核施設の完全破壊
検証可能とは、査察団の受け入れ
その結果、元の核保有には戻れない形を求めている。

この原則を妥協したら、
北はいくらでもごまかして核を事実上保有することができるのだ。

しかし、北が核を放棄することは大変困難だ。
今の状態、つまり、
アメリカも中国も韓国も日本も
北朝鮮を腫れ物を扱うようにしているのは、
北が核を保有しているからだ。

東アジアの小国、アジアの最貧国、
しかも民衆の自由を束縛し、
恐怖政治で統治する独裁者の国を
アメリカのような大国が
まるで対等であるかのように接するのは、
核を保有し、ミサイルを準備し、
最終戦争をしかける能力を持っている、
という一点だけなのだ。

だから、北が核を放棄することは、最後まであり得ない

非核化のロードマップも違っており、
北は米朝首脳会談で、

@経済制裁の解除
A国交正常化
B在韓米軍の撤退

を約束させ、
それがなされれば、「体制維持」が出来るとみなし、
その後で核の放棄を検討する、という方針。

それに対してアメリカの方針は、
上記@ABの大前提として、
核放棄をさせる
ことなのだ。

これでは、何度会談しても合意には至らない

しかも、その間、アメリカは軍事行動を取れない。
へたをすれば、
「アメリカのかたくなな態度が、
せっかくの平和ムードに水を差している」
と非難されかねない。

だから、今回の米朝首脳会議は、
金正恩の思惑に乗ってしまったことになるのだ。

アメリカが恐れるのは、
米朝首脳会談が1回で終わらず、継続して、
非核化が先送りになると、
北の核保有国が定着してしまうことだ。
だから、まず最初に
非核化を求めているわけである。

そうしている間に、
韓国が北に対する経済援助を始め、
北の生命線である中国も禁輸を徐々に解除したら、
せっかくの北への「圧力」が瓦解するかもしれない。

国際社会の「圧力」が徐々に北の体制に影響を与え、
特に昨年来中国が制裁に同調したことで、
北が大変困っているというのは事実だ。
年初から突然北が平和路線に転換したのは
そのためだというのが合理的だ。

だから、ここは、その「圧力」を
「非核化」の実現まで継続しなければならないのだが、
北は韓国をはじめとして、その分断を狙って来るだろう。

前のめりの韓国文政権によって
北への支援が行われる可能性があるが、
米朝首脳会談が継続している間は、
アメリカも動けない。
その間に、北は更なる戦争準備を進められる。

つまり、以前の繰り返しである。

なぜ今になって友好ムードを作るのか。
一つは経済制裁の圧力が有効であったこと、
もう一つは金正恩の戦略

昨年まで、過去に例のないほどのミサイルの発射、核実験を繰り返、
世界中が困り果て、
戦争が起こるかもしれない、
という恐怖に怯えている時を狙って、
平和路線に転換して世界のムードを
平和ムードを作り上げた。

そして、時の大統領が、
親北派の文在寅大統領であったことも
この路線を作る好機だった。

こうして南北首脳会談で平和ムードを作り、
次に米朝首脳会談でアメリカを取り込む。
この間、アメリカは軍事行動を取れないから、
次の核戦略(アメリカを攻撃するミサイルの整備)を進められる。

しかし、その間、北も行動を取れない。
業を煮やして、核実験やミサイル発射実験も出来ない。
もう、そんなことをしたら、
アメリカは今度こそ
軍事行動を取るだろう。

アメリカの軍事行動を一番恐れているのは、
実は金正恩その人である。
戦争になれば、確実に負けるし、
のみならず、北全土を焦土にしてしまう。
体制維持どころの騒ぎではない。

せいぜい出来るのは、
韓国や日本に対するミサイルの発射くらいだ。
それを恐れて韓国は戦争回避に回るだろう。

私は橋本徹元大阪府知事は、
日本には珍しい戦略的思考の出来る政治家と評価していたが、
最近の北を巡る発言にはがっかりした。
彼はこう言う、
「日本の政治家が日本が攻撃を受ける覚悟ができないのなら、
北を核保有国として認めるしかない」
これが政治的現実、というのだろうが、
しかし、それより大きな問題がある。
北の核保有を認めることでの
世界の正義はどうなる、ということだ。
核を保有し、ミサイルを整備するという、
行為にひれ伏すことになる。
その方が長期的に見て害毒が大きい。
子供たちにどう説明したらいいのだ。

それは、ナチスの台頭に対して、
戦争をしたくないために
チェコ侵攻を許したイギリスのチェンバレンの融和政策そのものだ。
それに対して、チャーチルは、
仮に英国本土が攻められたとしても、
ヒトラーの思うようにさせない、
と毅然として戦ったのだ。

そのことについては、↓の映画紹介を参照。

映画『ウィンストン・チャーチル』

先日、中国観光客が事故で負傷して、
金正恩がお見舞いしたことで、
安藤優子キャスターが、
「この人も血の通った人であることが分かりますね。
好感さえ感じます」
と番組の中で発言したことで、
ごうごうたる非難が起こった。
「自分の兄を毒殺したり、
叔父を銃殺したりする人が血の通った人だって?」
「拉致家族が聞いたらどう思うか」
「不良がちょっと親切したら、
コイツって良い奴かもしれない、と言うのと同じレベル」
「こんな人がニュースキャスターをしているとは」

しかし、このやりとりには、
重大な問題を含んでいる。

金正恩とは、どんな人物か。
人民を抑圧し、ミサイルに金をつぎ込んで、
国民を飢えさせ、
恐怖政治をしき、
兄を毒殺し、叔父を虐殺した
独裁者なのだ。

そのことを忘れて、
彼の微笑にまどわされてはならない。

今回の南北首脳会談での金正恩の振る舞いはなかなか見事だった。
軍事境界線を文大統領に越えさせた時の言葉、
最初の挨拶で
「軍事境界線を越えるまで10年かかったが、
境界線は高くはなかった」
とか、なかなかの役者だ。
堂々として、就任後数年で
北朝鮮を自分の統治にしただけの能力はあるようだ。
やはり金日成、金正日の血筋だろうか。

しかし、その本質は、
凶悪な独裁者なのだ。
そもそも、朝鮮半島をこんな状態にしたのは、
北が核とミサイル路線に走ったからだということを
忘れてはならない。

その本質に目をつぶって、
満面の笑みを浮かべた文大統領は、
本当に愚かだと思う。

「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」
という大前提をくずして、
安易な妥協など、
今回の米朝首脳会談ではしてほしくない。
事前協議でそれがクリアできなければ、
会談は流してしまった方がいいだろう。

そのうち、北が我慢できなくなって、
水爆実験やミサイル発射をしたら、
アメリカの軍事行動も正当化される。

アメリカの軍事行動の準備の最中に、
国が亡びることを恐れた民衆(あるいは側近)の手によって
現体制が転覆される、
というストーリーが最善ではないか。
戦争という極限の「圧力」。
この国との交渉は、最後はその手しかないのかもしれない。
拉致問題も、その方法でしか解決できないのではないか。

戦争の悲惨さを思うと、
戦争はない方がいいが、
戦争でしか解決しないこともある
特に、このような邪悪な国家に対しては。

これまで、この国によって
どれほど世界の平和が脅かされてきたか。
そう思うと、
やはりこの国を生き延びさせてはならないと思う。






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