小説『シスト』  書籍関係

[書籍紹介]

クリックすると元のサイズで表示します

冒頭はチェチェン共和国
ロシア軍に抗戦する武装ゲリラを取材するジャーナリストたち。
取材仲間が惨殺される修羅場をくぐり抜けた
ビデオジャーナリスト御堂万里奈は、
帰国後、ADの小島ナツキと共に老女虐待の取材中、
記憶力の減退を感じ、
診察の結果、若年性認知症と告げられる。

一方、ロシアの衛星国、タジキスタン
新感染症ドウシャンべ劇症出血性脳炎が発生。
(ドウシャンベとはタジキスタンの首都の名前。)
タジキスタンの会議から帰国した外務省職員によって
新感染症は日本にももたらされた、と言われ、
アメリカではCNN記者が死亡し、
世界に汚染は拡大していった。

海外取材の経験を買われて万里奈は、
小島と共にタジキスタンに向かうが、
乗り継ぎ宿泊したモスクワで、
小島が発症して死亡してしまう。
ロシア当局に拘束された万里奈は・・・

という、パンデミック(感染症の全国的・世界的な大流行)もの。
時期は「201○年11月」は近未来を設定。

この新感染症は、
症状が出ると、耳、目、鼻から大量の出血をし、
1日で確実に死に至る。
感染してから正確に1カ月で発症することから、
当初から生物兵器であると疑われた。
病原体はウィルスだが、
猫を介して人体に棲みつく寄生虫〈トキソプラズマ〉の増殖によって、
脳炎を起こし、脳内が爆発する。
トキソプラズマは人類の6割以上が感染している寄生虫。
平常時は人間に害を及ぼさないが、
ウィルスの作用で、人体に害を及ぼす。
感染は接触感染で、感染者の唾や飛沫で感染する。
しかも、感染してから発症するまでの間でさえ
感染力が発揮されるというやっかいなもの。
題名の「シスト」(cyst)とは、トキソプラズマが潜む〈寄生胞〉のこと。
もっとアピール力のある題名は考えられなかったか。

パンデミックが起こった時の
日本の描写がすさまじい。
政府は外出自粛令を発し、
空港も交通機関も閑散とし、
町の店舗はほぼ全店が閉じる。
マクドナルドだけがサービスを継続する、というのも面白い。
数年前に起きたバッシング以来、
顧客サービスの向上を社是としているため、
この危機下も経営陣が営業継続を決断した、と説明されている)

なぜか高齢者に感染率が低いことから、
退職者の再雇用が行われ、
町で働いているのが高齢者ばかり、
という描写も笑わせる。

外出自粛令を巡る記者会見の場で、
批判するメディアに総理がキレる場面で、
国家の危機を認識せず、
批判に終始するメディアの姿が興味深い。

万里奈は真相の解明に向かうが、
そこで、冒頭プロローグのチェチェンでの取材、
また、帰国してからの認知症の発症などがからんでくる。
小島の感染の日で、
外務省職員との接触がなかったことが判明し、
日本における初感染者が明らかになるところなど、
予測はつくが、スリリングな展開。

最終的には、
生物兵器をめぐる大国のエゴに収束するのだが、
これは、ありきたりの展開だ。
万里奈の父親との問題も、ありきたりといえよう。

メディアの裏側を描いた点にリアリティがある、
と思ったら、
作者の初瀬礼(ペンネーム)は、
現役のテレビ局員なのだった。
なるほど。


映画『ダンガル きっと、つよくなる』  映画関係

[映画紹介]
 
クリックすると元のサイズで表示します

「ダンガル」とは、インド語でレスリングのこと。
「きっと、うまくいく」や「PK」などのアーミル・カーン主演の
レスリングを巡るファミリームービー。
笑って泣かせる、典型的な良作である。

元レスリング選手のマハヴィルは、
生活のためにオリンピックへの道をあきらめ、
その代わりに自分の息子を金メダリストにすることを夢見ていた。
しかし、生まれる子供がどれも女で、
町中の人から男が生まれる方法を伝授されるが、
4人全員女ばかりが続く。

そんなある日、長女のギータと次女のバビータが
ケンカで男の子に勝ったことを知ったマハヴィルに天啓がひらめく。
自分の手で二人を女子レスラーとして鍛えようというのだ。
こうして、二人の娘に対する父親の猛特訓が始まる。
男物の服を着せ、髪を切り、食べ物を制限し・・・
町の人々に笑い者にされるが、マハヴィルはめげない。

クリックすると元のサイズで表示します

やがて2人は才能を開花させ、
次々と男の子を倒して賞金を獲得し、
長女のギータは、
国内大会女子の部で優勝し、強化選手となる。
しかし、それはマハヴィルのもとから娘が巣立つことを意味していた。

専門のコーチの指揮下に入り、
「父親の指導は忘れろ」と言われ、
次第に新しい技術を身につけるギータ。
都会の遊びを覚え、お洒落を知り、
自由を知ってしまったギータは、
帰郷した時、父親とレスリング対決をし、勝ってしまう。
自分を越えてしまった娘に対して、
手の届かないところに行ってしまったと嘆くマハヴィル。

クリックすると元のサイズで表示します

しかし、ギータは国際大会で連戦連敗の結果を生み、
「国際大会に向かない」とコーチから匙を投げられる始末だった・・・

頑固親爺のスポコンもの、とも言えるが、
その背景には、女性に対するインドの因習がある。
「14歳になったら、会ったこともない男と結婚させられ、
子供を生む道具にされ、
姑にこきつかわれ、家事と子育てに追われる一生」
を送るインドの女性にとって、
夢を与えてくれた父親は良い父親だという、
町の娘の言葉。
この物語は、
女性を低い地位に置いたままにしようとするインド社会に対して、
女性の力を示し、
インド人女性たちに希望を与える意味もあるのだ。

クリックすると元のサイズで表示します

前半は娘を鍛え上げる父親の姿で、
試合で勝利をあげて実績を積んでいくサクセスストーリー。
後半は、国立スポーツ・アカデミーの育成プログラムに入ってしまい、
自分の手を離れてしまった娘に対する
父親の悲哀に満ちた姿が涙をそそる。
二人の和解の電話のシーンで、
「ごめんなさい」のひと言だけで、
後は泣き声だけでフェイドアウト、
という手法はうまい。
終盤、金メダルをかけた試合を観ることが出来なかった父親が
あるもので、試合結果を知る。
ホントにうまい。

「踊るマハラジャ」の頃は、
「異文化との出会い」という感じだったインド映画も
随分と洗練されたものだ。

そして、迫力のある試合の場面も魅力を加える。

クリックすると元のサイズで表示します

レスリングがこんなにダイナミックで華麗なものだとは初めて知った。
出演者たちはオーディションで選ばれたが、
一様にレスリング未経験者だったにもかかわらず、
これだけの技を披露するレベルに訓練したコーチ陣もすごい。
そして、マハヴィルを演じたアミールは、
中年太りを演ずるために27キロ太り、

クリックすると元のサイズで表示します

若い時の筋骨隆々たる姿を演ずるために
5カ月かけてまた27キロ痩せたという。

クリックすると元のサイズで表示します

「PK」を越えてインド映画の興行収入ナンバー1を獲得。
「バーフバリ王の凱旋」によって記録を塗り替えられると、
中国で224億円かせいだのをはじめ各国で大ヒット。
今度はインド映画の世界興行収入ナンバー1に躍り出た。
中国の題名が日本語訳で「レスリングして! 父さん」、

クリックすると元のサイズで表示します

台湾では「私と私の金メダル娘」、
香港では「殺されても離れぬ父と娘2人」というタイトルで公開された。
日本題の「もっと、つよくなる」は、もちろん
アーミル・カーン主演の「きっと、うまくいく」の敷衍。

父親を演ずるアーミル・カーンは本当にうまい。
この父親の姿に何度も涙がこぼれた。

クリックすると元のサイズで表示します

この映画にはモデルがいて、
ハリヤーナ州のバラリという小さな村で、
娘を金メダリストに育てあげたフォガト一家
マハヴィル・シンの実話が話が元になっている。
ニテーシュ・ティワーリー監督は
この家族にリサーチして、脚本を書き上げた。
もちろん細部は創作で、
おかげで、映画の公開後、
女子レスリング国家チームのコーチのモデルとなった人が、
「映画は事実に反している」と抗議するという事態も起こった。

父娘愛と姉妹愛にみちた展開は、
結果は分かっていても
画面に釘付けになり、
物語に翻弄され、涙を流す。
王道の物語で、
映画を観る歓びを与えてくれるインド映画である。

5段階評価の「5」

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/-ZvCqO5GBe8


タグ: 映画

東京ドイツ村  旅行関係

今日は、東京ドイツ村に行って来ました。

所在地の袖ケ浦市にはどうやって行くのか分からなかったのですが、
ネットで調べると、意外に早く行けることが分かりました。

まず新浦安から京葉線の終点の蘇我へ。
快速で26分、796円。

クリックすると元のサイズで表示します

駅から徒歩3分ほどの道端にあるバス停へ。

クリックすると元のサイズで表示します

ここで安房鴨川行きの高速バスに乗ります。

クリックすると元のサイズで表示します

ネットで調べると、時間から
停留所の場所まで教えてくれて、便利です。

クリックすると元のサイズで表示します

30分ほどで東京ドイツ村に。930円。

クリックすると元のサイズで表示します

家から1時間半かかりません。

クリックすると元のサイズで表示します

高速バスカピーナ号
1日4便運行。

クリックすると元のサイズで表示します

これが入り口。

クリックすると元のサイズで表示します

車で園内を走れるので、車の列。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

これにも国旗の色合いが。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

入園料は、大人800円

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

中に入りました。

クリックすると元のサイズで表示します

園内は花盛り。

クリックすると元のサイズで表示します

職員さんが手入れをしています。

クリックすると元のサイズで表示します

2001年3月8日にオープン

クリックすると元のサイズで表示します

袖ヶ浦市の土地区画整理事業で
東急不動産が開発申請を行い、
1999年に着工。
経営・運営は明和興産(本社:名古屋市)が引き受けました。

クリックすると元のサイズで表示します

「自然と人が共に過ごせる」共生の追求が基本コンセプト。
敷地面積は27万坪と
東京ドームの約19倍あります。

クリックすると元のサイズで表示します

その存在は知っていましたが、
今回初めて訪れたのは、
「芝桜が見頃」という新聞記事と写真を見たため。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

最初はこんなですが、
やがて枝を広げて、びっしりと咲きます。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

ここは、芝桜の丘

クリックすると元のサイズで表示します

遊歩道の中を歩けます。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

国の名前を冠したテーマパークは、
長崎オランダ村、志摩スペイン村などがありますが、
東京ドイツ村の名称は、
既に群馬県の赤城クローネンベルグが
先行してドイツ村の商標権を取っていたため、
ドイツ村だけでの商標を使用することができなかったので、
開園直前は着工中で開通間近であった
東京湾アクアライン経由で
東京に近いことを強調して
東京を付けて東京ドイツ村となりました。
赤城クローネンベルグは経営難で
2017年11月に閉園となりました。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

ここは、子供の遊ぶ場所。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

園内はいたるところに駐車場があります。

クリックすると元のサイズで表示します

こういう車で回ることもできます。

クリックすると元のサイズで表示します

車で入場はできますが、
二輪車・自転車は入場口付近に駐車する形式となり
場内の道路は走行できません。

クリックすると元のサイズで表示します

自動販売機は、良心的な価格設定。

クリックすると元のサイズで表示します

テントも可能なようです。

クリックすると元のサイズで表示します

園内には、常時、ドイツの音楽と歌が流れています。

クリックすると元のサイズで表示します

観覧車や

クリックすると元のサイズで表示します

釣り堀、

クリックすると元のサイズで表示します

ゴルフ場もあります。

クリックすると元のサイズで表示します

袖ケ浦市は隣の市原市を中心とする
日本一のゴルフ場密集地帯の一部であり、
ここも、もともとはゴルフ場として計画されていましたが、
ゴルフ場同士の競合が激しい中で
テーマパークに計画変更されこといいます。
ゴルフのアトラクションは、その名残です。

クリックすると元のサイズで表示します

ここは、マルクトプラッツエリア

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

勇気ある人たち。

クリックすると元のサイズで表示します

中には、おみやげ屋があります。

クリックすると元のサイズで表示します

ドイツの物産展を想像すると、違って、
地元の名産品の販売です。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

ここはバーベキューレストラン

クリックすると元のサイズで表示します

ここで食材を買って、

クリックすると元のサイズで表示します

ここで焼いて、食べます。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

ご覧の食材を仕入れました。

クリックすると元のサイズで表示します

そして、こうなりました。

クリックすると元のサイズで表示します

ドイツらしいものと言えば、
ソーセージとビールくらい。
ロコモコや穴子丼やうどんやそばや餃子ドッグや豚まんなど、
ドイツと関係のないメニューばかりで、
カミさんが「どこがドイツなの?」と言っていました。

ここには、スケート場もあります。

クリックすると元のサイズで表示します

氷ではない、

クリックすると元のサイズで表示します

特殊な素材のリンクです。

クリックすると元のサイズで表示します

花畑や

クリックすると元のサイズで表示します

イベントステージも

クリックすると元のサイズで表示します

ここは丘になっているので、眺めがよく、

クリックすると元のサイズで表示します

芝桜の丘も、このように見えます。

クリックすると元のサイズで表示します

この乗り物は何?

クリックすると元のサイズで表示します

巨大滑り台?

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

子供用の乗り物もあります。

クリックすると元のサイズで表示します

子供と一緒なら、一日中遊べますね。

クリックすると元のサイズで表示します

ここは、こども動物園

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

いろいろな動物に餌を与えることができます。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

羊には、みんな名前が付いています。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

ヤギにも。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

豚のお散歩タイムというのもあります。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

ウサギと

クリックすると元のサイズで表示します

カメ。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

メダカも飼っています。

クリックすると元のサイズで表示します

下から見上げた丘。

クリックすると元のサイズで表示します

ここには、大人のスポーツ施設も。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

ここは

クリックすると元のサイズで表示します

しいたけ栽培所

クリックすると元のサイズで表示します

自分で狩って量り売りされます。

クリックすると元のサイズで表示します

その場で焼いて、醤油をかけて食べることもできます。

クリックすると元のサイズで表示します

最後に、湖の周りを回ってみました。

クリックすると元のサイズで表示します

ここには、鴨が沢山住んでいます。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

周囲には芝桜が。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

冬季のイルミネーションは規模が大きく、
あしかがフラワーパーク(栃木県足利市)、
江の島「湘南の宝石」(神奈川県藤沢市)とともに、
「関東三大イルミネーション」と言われています。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

「さようなら」の言葉に送られて、

クリックすると元のサイズで表示します

同じルートで帰路に。

クリックすると元のサイズで表示します

こんなに並んで、乗り切れるか、
と思いましたが、
ちゃんと収容できました。

クリックすると元のサイズで表示します

天気もよく、
楽しい一日でした。



小説『陸王』  書籍関係

[書籍紹介]

クリックすると元のサイズで表示します
                                       
テレビドラマにもなった「陸王」の原作本。

埼玉県行田市にある足袋製造会社「こはぜ屋」は
創業から百年の歴史をもつ老舗だが、
衣服環境の変化から
足袋業界は斜陽産業で、
構造的な業績低迷に悩んでいた。

四代目社長の宮沢紘一はこれまでの足袋製造の技術力を生かし、
「裸足感覚」を取り入れたランニングシューズの開発を思いつき、
社内にプロジェクトチームを立ち上げる。
しかし、人材不足、経験不足、実績不足、資金不足に加えて、
大手スポーツメーカーの嫌がらせや
新素材の開発を巡るトラブルなど様々な試練に直面する。
しかし、各方面からの助力を受けて、
こはぜ屋の新規事業は着々と成果をあげていくのだった。

という話を軸に、物語は様々な側面を見せていく。

まず斜陽産業の中で暖簾を守っていく、こはぜ屋の闘い。
なにしろ、世の中の動きが、足袋の製造を先細りにしているのだから、
土台発展そのものが困難な話なのだ。
だからこそ、宮沢は新規事業に活路を見出そうとするのだが、
スポーツシューズの世界は既に成熟しており、
後発会社など入り込む余地はない。

そういう状況だから息子の大地に後を継がせる気はないが、
大地は就職活動に失敗し続け、腐った気分の中、
やむなくこはぜ屋を手伝いながら面接を受けている身分なのだ。

新規事業には設備投資や研究投資も必要だが、
銀行は良い顔をしない。
堅実な経理担当常務の富島玄三は、
その苦労を一身に受け、宮沢をいさめる。
メインバンクの埼玉中央銀行の担当者坂本太郎は、
そんなこはぜ屋を支援するが、
支店長と対立して、飛ばされてしまう。

そして、もう一つの軸が、
ダイワ食品陸上競技部ランナーの茂木裕人を巡る話。
競技の中で足を傷めた茂木は、
ライバルの毛塚に差を開かれ、あせっている。
スポーツメーカー、アトランティスのサポートも打ち切られたが、
そんな茂木を支えてくれたのが
アトランティスのシューフィッター・村野尊彦で、
選手のことを第一に考えるカリスマだが、
アメリカ資本の考え方も強烈に持つ
上司の営業部長小原賢治と対立し、
アトランティスを退職し、
こはぜ屋の挑戦に共感して、協力してくれる。
村野の推薦で茂木が
こはぜ屋の新素材シューズ「陸王」をはいて走ってくれるか、
それが茂木の復活につながるかが、
物語の一つの核となる。

もう一人の軸となるのが、
シルクール社長の飯山晴之で、
繭を原料とした新素材「シルクレイ」の特許を持っているが、
会社を倒産させ、くすぶった毎日を送っている。
軽く丈夫な新素材をシューズのソール(靴底)に採用したい、
と宮沢は期待する。
この飯山が宮沢の熱意と
新シューズ製作の夢にかけて
シルクレイを提供してくれるか、
が話の展開の一つの軸となる。

その他、横浜のスポーツショップ店主の有村融
宮沢に人間の走り方の根本を教える。
そして、アメリカのアパレルメーカー「フェリックス」社長の御園丈治は、
宮沢に会社の身売りを提案する。

このような多彩な人物を織りまぜて、
こはぜ屋の再生の物語が展開するわけであるが、
「下町ロケット」「空飛ぶタイヤ」等の
大企業と中小企業の闘いを描いた
池井戸潤のストーリーテリングに
読者は惹きつけられて、最後まで一気読みをしてしまう。
特に大手スポーツメーカー、アトランティスの社員が
こはぜ屋を「吹けば飛ぶような」とたびたび形容するが、
大手対中小の闘いは、
多くの池井戸潤原作本同様、中小の勝利に終る。
中小企業が生き残る力は、
より良いものを追求し、
熱意と工夫で団結するチームワークだとよく分かる。

有村の語る走法の話で、
いろいろな原人が地球上にいた中、
ホモ・サピエンスだけが生き延びたのは、
長距離を走ることができたこと、
その走法はミッドフット着地だった、という話は興味深い。

村野の話。

「私たちが提供しているのはシューズだけどシューズじゃない。
魂なんだよ。
ものづくりをする者としての心意気というか、
プライドというかね」

飯山が大地に言うセリフ。

「大事なのは会社の大小じゃなく、
プライドを持って仕事ができるかどうかだと思うね」

宮沢が大地にいう言葉。

「どんな仕事をしてたって、
中小企業の経営だろうと、
大企業のサラリーマンだろうと、
何かに賭けなきゃならないときってのは必ずあるもんさ。
そうじゃなきゃ、仕事なんかつまらない。
そうじゃなきゃ、人生なんておもしろくない」

村野が茂木に言うセリフ。

「たしかに企業の規模は小さいし、業績もいまひとつだ。
だけど、シューズを作るという姿勢や熱意では、
アトランティスよりもこはぜ屋のほうが上だと思う」
「君に見せてやりたいよ。
靴底を貼り合わせて一足出来上がったときのあの人たちのうれしそうな顔をさ。
アトランティスは、ある意味大企業になりすぎた。
彼らの関心事は業績であり、目先の利益だ。
物事を測る尺度もカネで、
新しいシューズを開発する理由は、業績向上のためだ。
そのために、ほとんど機能的に進化していないシューズに、
新たな名前をつけて
いかにも革新的であるかのように売るということまでする」

茂木が宮沢に言う言葉。

「もし世の中から、おカネっていう価値観を取っ払ったら、
後には本当に必要なものや大切なものだけが残るんでしょうね」
「気づかないほど当たり前のものの中に、
本当に大切なものがあるのかもしれません。
人の絆もそうなんじゃないでしょうか」


2017年10月15日から12月24日にかけて、
毎週日曜夜9時のTBS系日曜劇場枠で
連続ドラマ化し、高い視聴率をあげた。

クリックすると元のサイズで表示します

ほぼ原作とおりの展開だが、
脚本の八津弘幸と吉田真侑子は、
登場人物に肉付けし、ドラマチックに展開する。
原作を読むと、やや人物描写が平板な印象を描けるが、
ドラマの演じた役者たちが、
見事に血の通う登場人物に仕上げたことが分かる。
特に宮沢を演じた役所広司はさすがのうまさだし、

クリックすると元のサイズで表示します

飯山を演じた寺尾聰が、見事な偏屈親爺を造形してみせた。

クリックすると元のサイズで表示します

茂木を演ずる竹内涼真は思わず応援したくなるようなランナー像を作ったし、

クリックすると元のサイズで表示します

仇役のアトランティスの営業部長を演ずるピエール瀧が物語をふくらませる。
こはぜ屋の縫製課リーダーの正岡あけみ役の阿川佐和子は、
印象の薄い原作の登場人物を血も肉もある一人の女性として演じてみせた。

クリックすると元のサイズで表示します

要となるシューフィッター役の市川右團次、
先代から勤めている富島役の志賀廣太郎、
様々な助言をする有村融役の光石研もいい。
つまり、原作よりドラマがふくらんだのは、俳優の功績だと分かる。

工場のセットは力の入っていることが分かるし、

クリックすると元のサイズで表示します

マラソンのシーンも沢山のエキストラを動員しての迫力あるロケを展開する。

クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

舞台は埼玉県行田市で、
足袋の町として知られる。
池井戸潤が取材した「きねや足袋」 (創業1929年) は、
実際にランニング足袋「きねや無敵(MUTEKI)」を製造販売している。

クリックすると元のサイズで表示します

社長は三代目の中澤貴之氏。
宮沢と中澤。
モデルとしたことは歴然としている。

きねや足袋のホームページは、↓をクリック。

http://kineyatabi.co.jp/kineya/

足袋の製造工程などが動画で示され、よく分かる。


映画『ペンタゴン・ペーパーズ』  映画関係

パスポートの申請と受給が
浦安市でも出来るようになり、
わざわざ千葉まで出掛ける必要がなくなりました。

クリックすると元のサイズで表示します

海外旅行の際には、
大体6カ月の残存期間が必要ですので、
私の場合、
9月以降は海外に行けなくなります。
そこで、3月の末に切り換えの申請。
約10日で受給となり、
本日受け取りに行ってきました。

クリックすると元のサイズで表示します

新旧のパスポート
左が旧、右が新。
番号冒頭のアルファベットは、
旧がTHに対して、新はTS。

クリックすると元のサイズで表示します

旧パスポートは、途中でページを増やし、
73回使いました。
よく働いてくれたものです。

今度が、おそらく、最後のパスポート
大切に使いましょう。


ところで、NHKの朝ドラ「半分、青い。」

クリックすると元のサイズで表示します

4月10日放送分で、
主人公のスズメの向こうを歩いている年配のご夫婦。

クリックすると元のサイズで表示します

この方、私の義弟(カミさんの弟)ご夫妻。
ロケ地が岐阜県恵那市で、
市の呼びかけでエキストラに参加した、
という話は聞いていましたが、
こんな風に写っているとは。

クリックすると元のサイズで表示します

ただ観ていただけでは気付くはずもなく、
放送後の親戚からの連絡で知った次第。


[映画紹介]

クリックすると元のサイズで表示します

20世紀に起きた様々な出来事を
映画にして後生に伝えることが
ライフワークだと語るスティーヴン・スピルバーグ
既にその課題の成功は
「ブリッジ・オブ・スパイ」(2015)で証明済みだが、
今回の題材は、ベトナム戦争の政策についての
機密文書の報道を巡る事件。
スピルバーグは、トランプ政権誕生の最中に
この作品の製作を思い立ち、
「レディ・プレイヤー1」の製作を中断して撮影に突入、
極めて短い製作日数でこれを仕上げた。

ベトナム戦争(1955年11月〜1975年4月30日)に対する
厭戦気分がアメリカにあふれていた頃、
1971年6月13日日曜日、
ニューヨーク・タイムズが
ペンタゴン(アメリカ国防総省)に存在する機密文書、
「ペンタゴン・ペーパーズ」の内容をすっぱ抜いた。
それは、1967年に
当時のアメリカ国防長官であるロバート・マクナマラの指示で作成された
ベトナム戦争に対する総括的文書で、
その中には、4代の政権にわたる
虚偽と隠蔽と国際法違反の集積されたものだった。
なにより、この分析がベトナム戦争での敗北を予測しながら、
多くの若者を戦場に送り続けた
、という事実。
内部告発者は、何回にもわたって密かに文書を外部に持ち出し、
コピーしていたのだ。
6月15日、ニクソン政権は
国家の安全保障を脅かすとして、
ニューヨーク・タイムズに対して
記事の差し止め命令を連邦裁判所に要求した。

ホワイトハウスのお膝元である「ワシントン・ポスト」
この記事の後追いをする中、
問題の文書のコピーを入手する。
この記事を掲載すれば、
刑事告訴の対象になる。
編集部内部、新聞社幹部の間でも意見は対立するが、
編集主幹のベン・ブラッドリーは、
記事掲載の是非について、
社主のキャサリン・グラハムに決断を委ねる。

クリックすると元のサイズで表示します

このキャサリンの立場が微妙で、
新聞社は父親から引き継いだ家業。
亡くなった夫(映画では扱っていないが、謎の自殺)の遺志を受け継いでもいるが、
掲載して刑事責任を問われれば、
新聞社は破産、社員を路頭に迷わさねばならない。
その上、株式公開の最中で、
掲載すれば、特別事項の適用を受けて、
株式公開は中止に追い込まれる。

元々、キャサリンは社内では無能で社交好きな
女性オーナーと蔑まれていた。
事実、この危機の最中にも、
自分の誕生パーティーを行っていたりする。
その上、政権の人々と親交があり、
マクナマラとはごく親しい間柄だ。

ベンの言う「報道の自由」も分かる。
しかし、経営者としては、
会社を危機にさらすわけにはいかない。
会社存続か良心の自由か、
という二者択一を迫られ、
キャサリンの苦悩は深まる。

このキャサリンを演ずるのが、メリル・ストリープ

クリックすると元のサイズで表示します

そろそろアカデミー賞の候補になることから辞退したらどうか、
という声もあるが、
そのような意見を吹き飛ばすような素晴らしい演技を展開する。
さすが、メリル・ストリープ。

編集主幹ベンを演ずるのは、これも名優トム・ハンクス

クリックすると元のサイズで表示します

今から半世紀近い前の話で、
当時の新聞社の様子、活気が描写されている。
特に、タイプライターでの執筆、
圧縮空気パイプでの送稿、
活字を拾い、亜鉛版の作製と、
パソコンもワープロもない時代の
アナログな新聞製作過程が興味深い。

そして、文書を手に入れた後、
7000ページに及ぶ文書を
手分けして読み込み、解析する作業を
時間制限の中でやらねばならない。
途中、ニューヨーク・タイムスと情報源が同じということが、
差し止め命令違反として問題になる。
更に、社主の決断を待って、
印刷がスタンバイ状態で待機し、
ゴーの声が出て、輪転機が回るスリリングな展開。

6月18日、ワシントン・ポストは文書を発表。
結局、判断は裁判に委ねられるのだが、
アメリカの裁判の迅速なことに驚かされる。
日本ではこうはいかない。

クリックすると元のサイズで表示します

最後にウォーターゲート事件の発端となる映像が出てくる。
ウォーターゲート事件が起こり、
ニクソン政権崩壊が始まるのは、
この約1年後の1972年6月17日。
ここでも「ワシントン・ポスト」が活躍する。
その内容は↓の映画に詳しい。

映画『ザ・シークレットマン』

報道の自由を巡っては、
様々な意見はあるが、
ある時代のある経営者の決断を巡っての
ドラマチックな展開は
目を奪わざるを得ない。
やはりスピルバーグは稀代のストーリーテラーだ。
「20世紀の映像記録人」、スピルバーグ。
次はどんな題材を取り扱うのだろうか。

5段階評価の「4」

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/q4wjL1QX6-k

タグ: 映画




AutoPage最新お知らせ