小説『誇りと復讐』  書籍関係

[書籍紹介]

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ジェフリー・アーチャーのサスペンス。

ロンドンの下町イーストエンドの自動車修理工のダニーは、
修理工場の社長の娘、ベスにプロポーズする。
ダニーの親友でベスの兄、バーニーも祝福してくれて、
3人はお祝いにパブへ出かける。
そこで4人組の酔っぱらいにからまれ、
裏通りでケンカになり、
バーニーが刺し殺されるが、
逮捕されたのはダニーだった。

4人組の証言で
バーニーを殺したのはダニーだというストーリーが作られ、
裁判で有罪判決を受け、
22年の刑で刑務所に収監される。

4人組はケンブリッジ大学の同窓生で、
「銃士隊」というグループを作っており、
「三銃士」の有名なセリフ、
「ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために」の掟に従い、
仲間の罪をかばい、口裏合わせをしていたのだ。
メンバーは、弁護士のスペンサー・クレイグ
俳優のラリー・ダヴェンポート
不動産業のジェラルド・ペイン
麻薬中毒患者のトビー・モーティマー

ダニーの無罪を信じ、
弁護士のアレックス・レッドメインが奮闘するが、
陪審員の評決は有罪だった。
途中、司法取引で、
ダニーが故殺で有罪を認めれば、
5年の判決で2年もあれば出られる、
と進言されたが、
実際に殺していない罪を認めるわけにはいかないと
ダニーが拒絶した結果だった。

ダニーが収監されたベルマーシュ刑務所
重罪犯の収容される刑務所で、
警備が厳しく、脱獄した囚人はいない。
そこでダニーが同室となったのは、
軍隊の指揮方法で罪に問われたニック・モンクリーフと、
正体不明の巨漢ビッグ・アルだった。
教育もろくに受けず、無学だったダニーは
貴族の血筋であるニックから学問を学ぶ。
その成長はニックが驚嘆するほどだった。

同じ刑務所にモーティマーが収監されてきて、
事件の証言をテープで得たダニーは
控訴の申請をするが、
テープ自白の信憑性が問われ、却下される。
その後、刑務所内で事件が起こり・・・

結果として、ダニーは刑期を20年も残して出所し、
主犯であるクレイグと
偽証をした仲間に対して復讐作戦を展開するのだが、
ダニーがどうやって刑務所から出ることが出来たかと、
復讐のための財力はどうしたか、
については、物語の根幹で、
ネタばれは避けたいので、
読んでからのお楽しみとしておこう。

私は前にも書いたが、
面白い小説の要素として、
サクセスストーリー復讐物語
それに追う者、追われる者
というのを挙げているが、
まさにこの小説は、
一種のサクセスストーリーであり、
復讐物語である。

文庫本で約900ページ
ともかく先が読みたくなって、
ページをめくる手が止まらない、
というのは、いつものアーチャーの作品に共通。

まさにアーチャー版「岩窟王=モンテクリスト伯」で、
ダニーはエドモン・ダンテス。
刑務所内の描写が詳細なのは、
アーチャー自身の入獄経験が反映されている。

アーチャーは1999年、偽証罪に問われ、
2001年7月に実刑が確定。
2年後の2003年7月に保護観察となったが、
まさにダニーと同じ。
しかも、収監されたのは、
小説に出て来るベルマーシュ刑務所だった。
何でも経験を素材に生かしてしまう
小説家魂そのものだ。
出獄後は「獄中記」を出版、
短編集「プリズン・ストーリーズ」は、
12作の短編小説のうち9つが、
アーチャーが獄中で聞いた話を小説にしたという形をとっている。
そして、この「誇りと復讐」では、
冤罪で刑務所に入った男の復讐劇として小説化した。

善人悪人がはっきりしているのがアーチャー作品の特徴だが、
中でもダニーの無罪を信じて尽力する弁護士のアレックス・レッドメインと
その父で元判事のマシュー・レッドメイン
ニック・モンクリーフとビッグ・アル、
看守長のレイ・パスコーと看守のアラン・ジェンキンス
出所したダニーを支える弁護士のフレイザー・マンロー
スイスの銀行家のド・クーベルタン
切手蒐集家のジーン・ハッサッカーなどが魅力的だ。

ダニーが出所後、
ニックの叔父との財産相続争いで、
遺言書の偽造を見破る手など、
なるほどと言わせるものがあり、
アーチャーの博識ぶりにしびれる。

ラストも、読後感もさわやかで、
きっとテレビドラマ化されるだろうな、
と思わせるが情報不足で分からない。
ドラマ化されたら、是非観てみたいものだ。





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