小説『竜と流木』  書籍関係

[書籍紹介]

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デビュー作の、
毒性を有する変異カイコが猛威をふるう「絹の変容」や
新種日本脳炎を媒介する軟体動物が蔓延する「夏の災厄」など、
この手のものを書かせたら、
右に出る者のいない篠田節子による
異形生物パニックもの

太平洋に浮かぶ美しい島、ミクロ・タタの泉に、
愛くるしい両生類が棲んでいた。
ふっくりとしたピンクの腹、真っ黒なつぶらな瞳。
島にある泉に生息するウアブと呼ばれる生物は、
水中の不純物を食べ、浄化、泉の守り神と呼ばれていた。

アメリカ軍人の父と日本人の母を持つハーフのジョージは、
ウアブに惹かれ、ウアブ研究については第一人者と言われていた。
東京の語学学校の講師をつとめ、
金が貯まれば、長期休暇を取って、
ミクロ・タタでウアブと戯れる日常だった。

しかし、その泉が活用されることになり、
ウアブはそこに住めないことになった。
ウアブ保護クラブのメンバーは、検討の結果、
もっと大きな島メガロ・タタにある
リゾート地、ココスタウンの池に
ウアブを移住させることにする。

しかし、当初順調に推移していたにもかかわらず、
ウアブが大量死する事態が二度にわたって起こる。
その上、メンバーの一人が小さなトカゲ様の生物にかまれ、
かまれた片足が壊死して切断するという事件が起こる。
更に、その黒いトカゲに咬まれ、
命に関わる例が頻発する。

はじめは、ウアブの天敵がいて、
移住して来たウアブを食べ、
異常繁殖した可能性が論じられた。
島の生態系に変化を与えてしまったのだ。

しかし、やがて、捕らえられた黒トカゲとのDNA比較により、
その黒トカゲが、
ウアブの成体だということが判明する。
ミクロ・タタでは幼体のままで成長を止めていたウアブは、
肉食アリの駆除のために撒かれた薬剤に反応して大量死し、
絶滅の危機を逃れるために、成体に変容化していたのだ。
黒トカゲに姿を変えたそれは、
俊敏で鋭い歯で噛みつき神経毒を注入する。
そのうえ口中は病原菌で、
咬まれた人間はその傷から全身へと壊死が広がる。

ココスタウンでは国際会議などのキャンセルが相次ぎ、
夜の外出が禁止され、
外国の金持ちたちは続々と逃げ出し、
町はゴーストタウンと化してしまう。
しかし、島民は逃げ出すわけにはいかない。

駆除隊が組織され、
銛や空気銃で武装して島の内奥部に向かうが、
刃物は通用せず、
銃弾を撃ちこんでも急所をはずせば驚異的な再生をし、
そのうえ繁殖力旺盛。
一頭一頭殺してもすぐ個体数を増やし、
駆除は絶望的と思われた。

というわけで、
自分たちが善意で移住させたウアブの
思わぬ変容に立ち向かう人々の姿を描く。

こうした過程を理論づけ、科学的根拠を示し、
リアリティ豊かに描写する、
まさに篠田節子の真骨頂ともいえる作品。

主人公のジョージ、
ココスタウンの医院長のマユミ、
軍隊でサバイバルの教官であったジョージの父、
ココスタウンのゼネラル・マネージャーのサマーズ氏、
博識を披露するフェルドマン教授など、
魅力的な人物たちが登場する。
みんな冷静で合理的な人間であることが
篠田作品の特徴だ。
ジョージは混血児で、30半ばで結婚をしておらず、
確たる職業も持たないなど、
幼体のままで生きているウアブと通じるものがある。

古老は、一つの伝説を語る。
かつてこの海域に無人島があった。
人が住みつかなかったのは竜が支配していたからだ。
その島は九十年前の嵐と地震で海中へ没し、
周辺の島に流木に乗って小さな竜が流れついく。
その竜はやがていろいろな形や色をしたトカゲになって、
ひとびとと農作物をネズミや害虫から守ってくれるようになった・・・

その伝説は、ジョージがみつけた
「南洋群島統治総論」という書物で裏付けられる。
日本の統治時代、「忌島」と呼ばれた島で、
開墾農民を襲ったトカゲ。
島が水没した際、流木に乗ってミクロ・タタにやって来た彼らは、
環境に順応し、大人になることをやめ、
島民に可愛がられるウアブとなったが、
メガロ・タタに移住させられ、
再び環境が悪化して、昔のトカゲに戻ってしまったのだ。
つまり、ジョージたちは、
外来の捕食動物をメガロ・タタに持ち込んだことになる。

更に被害は広がる。
フィリピンや沖縄でも、
黒いトカゲ様の生物に咬まれる事件が発生したのだ。
しかし、メガロ・タタからの距離1千キロから考えると、
あまりに遠すぎ、途中で両生類はひからびてしまう。

その謎も、ある事実から可能であることが明らかになる。
これも生物の環境適応能力のすごさを思わされる。

そして、黒トカゲの絶滅は、
ある方法によってもたらされるのだが、
それは読んでのお楽しみ。

背景には自然をいじることの恐ろしさがあるが、
そういった教訓以上に、
エンタテインメントとして面白く、
ページをめくる手が止まらない。
やはり私は篠田節子が肌に合う。

新潟日報と静岡新聞に連載されたものを単行本化。



映画『否定と肯定』  映画関係

[映画紹介]

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イギリスで1996年に起こった
ホロコーストを巡る裁判、
「アーヴィング対ペンギンブックス、リップシュタット事件」
の実話を映画化。

アメリカのホロコースト研究家のデボラ・リップシュタット教授
大学内の講義に、
ナチス・ドイツ学者のデイヴィッド・アーヴィングが乗り込んで来て、
授業を妨害する。
紙幣をかかげて、
「ヒトラーによるホロコーストの命令書を
見つけることができた者には
1000ドルをやろう」
と言った描写は、
実際にあったことだ。

その後、アーヴィングは、
リップシュタットの著作の中で
自分がホロコースト否定論者と呼ばれたとして、
彼女とその出版社を相手取り、
名誉毀損訴訟を起こす。

裁判がイギリスで提訴されたことがミソで、
名誉棄損裁判は、
アメリカでは原告側に立証責任が生ずるが、
イギリスでは被告側が立証責任を負う。
従って、事務弁護士のアンソニー・ジュリウスと
法廷弁護士のリチャード・ランプトンが率いる
リップシュタット側のチームは、
アーヴィングがホロコーストに関して嘘をついていると
立証することを求められるのだ。

裁判は陪審制ではなく、
判事による公判に持ち込むことになり、
法廷戦術として、
リップシュタット自身の証言はしないことになり、
また、生存者の証言も採用されないなど、
リップシュタットと弁護団との間にが生ずる。
弁護団の言い分は、
アーヴィングの尋問で生存者に恥をかかせた前例があるからだった。

アーヴィングはアウシュヴィッツにガス室があったという証拠を、
毒薬を入れる穴が屋根に見つからないとして、信用しない。
彼の「穴が無ければ、ホロコーストも無い」という言葉は、
メディアで広く取り上げられ、リップシュタットは窮地に立つが・・・

というわけで、映画はリップシュタット側の
弁護団の中での行き違いや討論、和解などを描く。
そういう意味で、濃厚な人間ドラマだ。

リップシュタット教授を演ずるのはレイチェル・ワイズ

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最初はこの役はヒラリー・スワンクがするはずだったという。
ランプトン弁護士を演ずるのは、トム・ウィルキンソン

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アーヴィングを演ずるのはティモシー・スポールと、

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顔つきからしても裁判の行方は予測できるが、
実際のリップシュタット、アーヴィングの写真は↓。

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ホロコーストの真実を法廷で争うという、
今までにない裁判で、
証人には様々な学者が呼ばれ、
アーヴィングの著作の歪曲や虚偽が暴かれる。
しかし、判事は
「アーヴィングが本当にそう信じていたら、
その責任は回避されるのではないか」
とも言う。

名誉棄損裁判のアメリカとイギリスの違いや、
判決文が最後の部分を除いて24時間前に弁護士に送付されたり、
弁護士がアーヴィングの尋問で
心理的圧迫のために、アーヴィングと目を合わせない、など、
へえ〜と思わせる内容が多い。
そういう意味で勉強になった。

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映画では触れていないが、
判決後、アーヴィングは控訴したものの、却下され、
その結果、アーヴィングにはリップシュタットとペンギンに対し
200万ポンドを超える支払義務が生じ、
これにより、2002年に彼は破産宣告を受けた。

その後、アーヴィングを刑事処罰すべきだとの主張があった時に、
リップシュタットは
「学問的論争の事案を法廷で判決してはならない」
としてアーウィングの起訴に反対する学者の署名に加わっている。
見上げたものだ。

また、2006年、アーヴィングはオーストリアで逮捕された。
オーストリアではホロコーストの否定を禁じる法律があり、
1989年に行った演説が、これに違反していたためだった。
逮捕後、彼は抗弁において
ホロコーストについての意見を変えたと主張し、
「そのときはそのときの知識に基づいてああ言ったが、
アイヒマンの関連書類に出会った1991年からは、
そのようなことはもはや言っていないし、
今も言わないつもりだ。
ナチスはたしかに数百万のユダヤ人を殺害した」
と述べた。
2006年、3年の懲役刑の判決が出たが、
オーストリア内務省の決定で、
アーヴィングは国外退去処分とされた。

監督はミック・ジャクソン
原題は「Denial」(否認)。

5段階評価の「4」

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/CnfVG65b2LQ

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以下は、おまけ。

韓国の「帝国の慰安婦」を巡る裁判。

2014年6月16日、元慰安婦6人の名前で、
朴裕河世宗大学教授が2013年8月に出版した
「帝国の慰安婦」が自分たちへの名誉棄損だとして、
同書の出版を差し止め、1 人3千万ウォン
計2億7千万ウォンの損害賠償を求める訴えがなされた。

2016年1月13日、ソウル東部地裁は、
名誉毀損と人格権の侵害を認め、
9000万ウォンの賠償を命じ、朴は控訴した。

個人を名指しで批判したわけでもなく、
学術的研究結果の論文であるにもかかわらず、
このような判決が出された。

原告らは、ソウル東部地裁の判決後、
ソウル西部地裁に
世宗大学校の朴裕河の給料の一部を差し押さえるよう申し立て、
同地裁は申し立てを認めた。
朴裕河は執行停止を申請、
供託金を預けることを条件に受け入れられ、
4月から中止された。

また、2015年2月17日にソウル東部地裁は、
「『朝鮮人慰安婦』の苦痛が日本人売春婦の苦痛と基本的には変わらない」
「『慰安婦』たちを『誘拐』し、
『強制連行』したのは、少なくとも朝鮮の地では、
また公的には日本軍ではなかった」
など34カ所の削除を求める仮処分を決定した。

学術論文に司法が介入したのである。
「言論には言論で」という原則は
韓国では通用しないのだ。

更に、2015年11月18日、
ソウル東部地検は『帝国の慰安婦』の内容が「虚偽」だと判断し、
著者の朴裕河を名誉毀損罪で在宅起訴した。

2017年1月25日、ソウル東部地方法院は、
名誉棄損についての検察の懲役3年の求刑に対して、
「これは表現の自由と価値判断の問題であり、
市民と専門家が相互検証して論駁する事案であって、
裁判所が刑事処罰することではない」
として無罪の判決を言い渡した。
ごく良識的で正しい見解といえよう。

これに対して検察は控訴し、
ソウル高裁は10月27日に1審判決を破棄し、
罰金1000万ウォンとする判決を言い渡した。

「国民情緒法」が支配すると言われる韓国。
言論の自由も、こうして損なわれていく。

「帝国の慰安婦」についてのブログは、↓をクリック。

評論『帝国の慰安婦』

『帝国の慰安婦』のその後

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イノベーション100選・トップ10・その1  様々な話題

公益社団法人発明協会が、
昨年6月、
「戦後日本のイノベーション100選」というのを発表した。

イノベーションとは、
「経済的な活動であって、
その新たな創造によって、
歴史的社会的に大きな変革をもたらし、
その展開が国際的、或いはその可能性を有する事業。
その対象は発明に限らず、
ビジネスモデルやプロジェクトを含み、
またその発明が外来のものであっても、
日本で大きく発展したものも含む」
と定義されている。

早い話が、
日本と世界の生活を一変させた大発明といえよう。

「戦後日本のイノベーション100選」は、
戦後日本の優れたイノベーションを
100件選ぶことによって、
戦後から現在までの
日本の経済や技術の発展の歩みを振り返るとともに、
将来のイノベーション顕彰に向けた
基礎的な知見を蓄積することを目的としているという。

100選の結果は、次のとおり。

戦後復興期(年代順)

○魚群探知機
○溶接工法ブロック建造方式
○ビニロン
○フェライト
○ファスナー
○銑鋼一貫臨海製鉄所

高度経済成長期(年代順)

○自動式電気炊飯器
○トランジスタラジオ
○コシヒカリ
○回転寿司
○公文式教育法
○小型(軽)自動車
○スーパーカブ
○NC工作機械
○ヤマハ音楽教室
○接ぎ木(野菜)
○座席予約システム
○リンゴ「ふじ」
○人工皮革
○電子式卓上計算機
○電子レンジ
○自脱型コンバインと田植機
○積層セラミックコンデンサ
○カラオケ
○自動改札システム
○柔構造建築
○郵便物自動処理装置
○ヤクルト
○レトルト食品
○LNGの導入
○クオーツ腕時計
○ブラウン管テレビ
○脱硫・脱硝・集じん装置
○省エネ化
○電界放出形電子顕微鏡
○産業用ロボット
○CVCCエンジン
○コンビニエンスストア

安定成長期

○オンラインセキュリティシステム
○電力用酸化亜鉛形ギャップレス避雷器
○炭素繊維・炭素繊維複合材
○移動電話(自動車電話、音声符号化等)
○高張力鋼
○家庭用ビデオ(カセット)
○宅急便
○三元触媒システム
○イメージセンサー(CCD・CMOS)
○日本語ワードプロセッサ
○全自動横編機
○フォトレジスト
○レーザープリンター
○G3ファクシミリ
○半導体露光装置(ステッパー)
○オーロラビジョン
○イベルメクチン
○インバーターエアコン
○カーナビゲーションシステム
○ATM
○CD・CD−R
○X線フィルムのデジタル化
○ネオジム磁石
○3.5インチフロッピーディスク
○直接衛星放送サービス
○家庭用カムコーダ
○UMAMI
○ラップトップ・ノートパソコン
○プレハブ住宅
○酵素入りコンパクト洗剤(アタック)
○光通信用半導体レーザ(DSMレーザ)・
 光ファイバー製造法(VAD法)
○ポリエステル合成繊維(シルク調等)
○フラッシュメモリ
○薄型テレビ
○スタチン
○ハイビジョン放送
○IHクッキングヒーター
○中空糸

現代まで

○液晶ディスプレイ
○リチウムイオン電池
○タクロリムス
○スーパーコンピュータ
○道の駅
○光触媒
○QRコード
○デジタルカメラ
○DVD
○(第2世代の)シールド工法
○非接触IC カード技術
○PETボトル用無菌充塡システム(拡印刷)
○ドネペジル塩酸塩
○高効率石炭火力発電
○長大橋建設技術
○太陽電池セル
○多機能携帯電話(i−mode、カメラ付きなど)
○携帯電話等デジタル情報暗号化技術
○リサイクル・リユース

この上に、
アンケート投票による
トップ10も選定している。

トップ10は次のとおり。(年代順)

○内視鏡
○インスタントラーメン
○マンガ・アニメ
○新幹線
○トヨタ生産方式
○ウォークマン
○ウォシュレット
○家庭用ゲーム機・同ソフト
○発光ダイオード
○ハイブリッド車

いずれも、
広く普及した戦後の大発明である。

もう少し詳しく見てみよう。
まず前半の5つから。
(解説は発明協会のホームページに準拠)

内視鏡

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内視鏡の歴史はその起源をたどると
古代ギリシア・ローマ時代にまで遡ると言われているが、
実用的なレベルで発展を遂げてきたのは
ここ一世紀ほどのことである。

オリンパス光学工業(現 オリンパス)は、
戦後間もない1940年代後半から
東京大学病院の要請を受けて胃カメラの開発に取り組み、
その後ファイバースコープ付き胃カメラ、
ビデオスコープ、超音波内視鏡、ハイビジョンシステム、
カプセル内視鏡というように、
常にこの分野での技術開発の最前線に立ってきた。

従来、がんの治療は
患者の負担が大きい開腹手術が当たり前だったが、
現在では早期がんであれば大半は
内視鏡によって治療がなされている。
また内視鏡の発達によって、
患部の早期発見には
定期検診による診断が重視されるようになり、
予防医学の発展にも大きく貢献するところとなっている。

現在、オリンパスは内視鏡分野における世界市場において
シェア70%を占めているが、
産学連携がもたらした優れた発明として、
また、患者負担を大きく軽減し
医療現場の光景を一変させた技術開発として
内視鏡の開発は日本が育んだ優れたイノベーションといえよう。


インスタントラーメン

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インスタントラーメンとは、
「小麦粉やそば粉を主原料とする麺食品のうち、
調味料の添付、若しくは調味料によって味付けを行った、
簡単な調理法により食用に供される製品」
を指す。

今でこそ巨大市場に成長し、
世界中で親しまれているインスタントラーメンであるが、
その歴史は1950年代まで遡り、
開発・市場化のプロセスは苦難の連続であった。

特に先駆となった「チキンラーメン」は、
日清食品の創業者である安藤百福による、
たゆまぬ熱意とベンチャー精神により
生み出された製品であるといえよう。

「チキンラーメン」は、油で揚げることで水分を飛ばす
「瞬間油熱乾燥法」という新技術が基盤となっていた。
こうした今の即席食品の基盤となる技術について、
安藤は自宅の庭に建てた小さな研究小屋で
試行錯誤しながら開発を行った。

このように日本で開発・市場化されたインスタントラーメンは、
今や世界中で最もポピュラーな即席食品の一つであり、
2013年では世界全体で約1055億食が消費されている。
世界最大の消費市場は中国・香港の440.3億食、
第2位の消費市場はインドネシアで141.0億食である。
日本市場は、約54.1億食で続く3位に位置する。

インスタントラーメンという新市場の開拓の立役者である安藤が
2007年に96歳で亡くなった際、
米国ニューヨークタイムズ紙は、
社説にて「Mr.Nooodle」と題された追悼記事を掲載している。

このように、インスタントラーメンは、
革新性や社会・文化への影響、
さらにはイノベーターに対する国際的な評価を勘案すると、
戦後日本における極めて重要な
イノベーションの一つといえるだろう。 


マンガ・アニメ

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日本では毎年1万点ほどの新刊マンガが発売され、
単行本・雑誌を合わせたマンガ市場の規模は
近年低下傾向にあるものの3766億円(2012年)に達する。

また、毎年ほぼ200タイトルのテレビアニメが制作されており、
アニメ制作会社の収入を基にした
狭義のアニメ市場規模は1725億円(2012年)、
キャラクターグッズ販売等を含めた広義の市場規模は
1兆3721億円と非常に大きな産業となっている。

また、日本で制作されたマンガ・アニメは
いわゆる「ジャパニメーション」「クール・ジャパン」として
海外でも高い評価を得ており、
「Manga」「Anime」という言葉は
日本のマンガ・アニメを指す海外でも通じる言葉となっている。

この両産業の立ち上げと連携に大きな貢献をしたのが
手塚治虫である。
手塚はまず、戦後の早い段階で、
当時の漫画になかった新たな表現手法を持ち込み、
人気漫画家としての地位を得るに至る。
しかし、手塚の際立つ点は、
その手法が後の漫画家に用いられることで、
事実上日本発「マンガ」の原型となり、
日本独自のマンガ産業の礎を築いたことにある。

そして、手塚が設立した虫プロダクションで制作したアニメ
「鉄腕アトム」はアニメ産業の誕生に大きな影響を与えた。
本作は、現在につながる毎週30分連続放映の
アニメの先駆けとなった作品として知られている。
1963年元日から放映が始まった「鉄腕アトム」は、
最高40%と非常に高い視聴率を記録し、
その後何度も再放送やリメイクされる人気コンテンツとなる。

しかし、それ以上に重要なのは本作品において、
その後のアニメ制作を支える様々なビジネス上の
革新的手法が生み出されていた点である。
本作品の登場を契機として、
その後多数のテレビアニメが制作・放映されることとなり、
事実上日本のアニメ産業の成長が開始されるのである。


新幹線

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日本国有鉄道が
1964年10月1日に営業運転を開始した「新幹線」は、
我が国の鉄道技術の粋を結集して
世界で初めて実現した高速都市間鉄道システムである。

新幹線システムは、戦前の弾丸列車構想以来
それまでに蓄積された機械・電気・土木・通信等の
鉄道技術の成果を進展させるとともに、
最新の科学技術を用いて統合したものであり、
東京―大阪間を最高時速210km/h、
所要時間3時間10分(開業時4時間)という
世界最高の鉄道システムを実現した。
特に、高密度・大量輸送性、
正確な運行スケジュール、
開業から50年にわたり乗客死亡事故ゼロという安全性、
鉄道の利便性を一段と高め、
多くの人の移動に貢献し、
我が国の経済活動を支える大動脈となった。

新幹線の成功は、
鉄道による都市間高速輸送システムの有効性を国内だけでなく、
世界的にも再評価させるものとなり、
フランス、ドイツをはじめとする
高速鉄道網の実現を促すものとなった。


トヨタ生産方式

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トヨタ生産方式は、社祖である豊田佐吉の
「豊田式汽力織機」に起源を持つ「自働化」と、
トヨタ自動車の創業者である豊田喜一郎の提唱した
「ジャスト・イン・タイム」を柱とする経営思想で、
喜一郎の急逝後、その志を継いだ、
後に社長となる豊田英二と後に副社長となる大野耐一により具現化された。

「ジャスト・イン・タイム」は、生産工程の各段階に、
必要なものを、必要な時に、必要な(量)だけ運ぶことにより、
造りすぎのムダ、手待ちのムダ、運搬のムダ、在庫のムダ、
動作のムダ、不良・手直しするムダ、加工のムダを排除し、
リードタイムの短縮化とともに
生産効率の改善を実現しようとする考え方である。

これを具現化するために後工程が前工程から部品を引き取り、
前工程は引き取られたものだけ生産するという
後工程引取り後補充生産という考え方が導入され、
その道具として引取り情報、運搬指示情報、
生産指示情報を記した「かんばん」が用いられた。
その事から「かんばん方式」とも呼ばれた。
1963年に全社的に採用されたかんばん方式は、
1965年からは外注部品を含むものになった。

トヨタ生産方式は、これを動かす「人」を育成することにより
初めて実現するものであり、
これまでの常識にとらわれない意識改革が重要と考えられている。

トヨタ生産方式は、トヨタ自動車グループを
世界トップの自動車メーカーに育てるとともに、
我が国の自動車産業の発展を実現した
高い品質と生産性の実現に大きく貢献したものである。



続きは、今度。


小説『22年目の告白−私が殺人犯です−』  書籍関係

[書籍紹介]

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映画「22年目の告白−私が殺人犯です−」の原作本

原作、といっても、
元々これは韓国映画「殺人の告白」が元になっており、
それを日本で翻案リメイク。
それに基づき、小説化した、という経緯を辿る。

巻末に
「本書は、映画『22年目の告白−私が殺人犯です−』
(脚本 平田研也/入江悠)の小説版として
著者が書き下ろした作品です」
と注釈がある。

では、映画と小説とはどう違うか。
ストーリーの骨格、展開、仕掛けは同じ。
ただ、小説は、「犯人」・曾根崎雅人が告白本の発行を持ちかける
出版社・帝談社の担当編集者・川北未南子(みなこ)を中心に描かれている。
映画では、始めの方の記者会見の場面の前のホテルで
ちらりと出て来ただけの人物だ。

キワモノばかり出版している帝談社の体質に嫌気が差している未南子に
曾根崎が近づき、原稿を渡す経過などが前半描かれる。

未南子を中心に据えたところから、
最後のニュースキャスター・仙堂の別荘にも未南子は同行する、
という映画とは異なる展開もある。

かといって、常に未南子の視点で描かれるかというと、
そうではなく、刑事・牧村の
15年前の事件の回想も描かれる。
ただ、この牧村の心理を追ったために、
「仕掛け」そのものの信憑性が薄れることとなった。

「小説は地の文では嘘をついてはならない」という大原則があり、
地の文で牧村の心理を描写することによる
読者の誤誘導は少々ルール違反だ。

また、「良い本を出したい」という未南子の願望を満たすために、
牧村が大変な読書家で、
事件後、牧村にメルヘンを書かせ、
未南子の手で出版される、などというおまけも付くが、
何だか取ってつけたような印象。

なお、
韓国映画版では、
15年前の殺人事件が時効を過ぎたことにより、
犯人を名乗り、事件の詳細を書いた告白本を出版した
イケメンがマスコミの寵児となり、
それに対して、「真犯人」が名乗り出て来て、
その証拠の映像を送られて来る、
という展開は同じだが、
日本版では、「真犯人」を名乗り出て来たのが偽物であったため、
真相が明かされなかったのが、
その後、更にひねりを加え、
別な「真犯人」が登場する、という新たな展開を迎える。
「真犯人」のキャラ、その犯罪の動機など、
かなり無理があるが、
ただのリメイクに陥らなかったのは評価できる。

その他にも、
未解決事件の被害者の女性が刑事の恋人なのが韓国版で、
刑事のというのが日本版。
「犯人」を名乗る男も最初の被害者女性の息子というのが韓国版で、
最後の被害者の婚約者、というのが日本版。
犯人を殺すのが刑事、というのが韓国版で、
被害者遺族の一人の若者が殺すのが日本版。

更に、映像の示す時刻から
殺人の時効までわずかな時間が残っている、
というのが韓国版で、
日本版は、死刑にかかわる犯罪の公訴時効廃止の発効日
わずかに過ぎていた、というのが日本版。

映画はどちらも面白いが、
やはりリメイクという作業を通じて、
日本版の方が洗練されていた、というのが
私の感想だ。

映画版についての、それぞれのブログは、↓をクリック。

映画「殺人の告白」

映画「22年目の告白−私が犯人です−」


映画『エンドレス』  映画関係

[映画紹介]

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高名な胸部外科医ジュニョンは、
国連に招かれて演説した帰途の飛行機の中で目を覚ます。
丁度その時、機長の着陸間際のアナウンスがあり、
キャンビン・アテンダントがサインをねだり、写真を撮る。
空港に着いたジュニョンは、
通路で飴を飲み込んで窒息しかけた少年を救い、
記者会見をした後、
車で娘と約束した場所に向かう。
しかし、その場所で交通事故を目撃したジュニョンは、
タクシーの運転手を救い出し、処置するが、
その向こうでは、
そのタクシーにはねられた娘が血を流していた・・・

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その瞬間、ジュニョンは飛行機の中で目をさます。
機長のアナウンスがあり、
CAがサインをねだり、
空港では窒息した少年を救い、
と夢で見たままの光景が続き、
予知夢かと思ったジュニョンは、
車で娘との約束の場所に急ぐが、
やはり事故は起こっており、
その向こうでは娘が血を流して倒れていた・・・

次の瞬間、飛行機の中で目をさましたジュニョンは、
また2時間前と同じ経験を繰り返し、
同じように事故は起こる。

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こうして、同じ一日を繰り返し経験するジュニョンは、
道路を変えてみたり、
記者会見の生放送で娘に約束の場所に行かないように告げる等、
様々試みるが、
結果は変わらず、
いつも事故は起こり、娘は死んでしまう・・・

というタイムループもの。

この手の話は、
「恋はデジャ・ブ」「ミッション:8 ミニッツ」
「オール・ユー・ニード・イズ・キル」など先行作品があり、
小説でも「リプレイ」などがあり、
目新しいものではない。

しかし、5回目の繰り返しの際、
ジュニョンと同様に
同じ日を繰り返している人物が登場するのがユニーク
そのミンチョルという男は救急隊のメンバーで、
タクシーの後部座席に妻が乗っていて、
事故に出会っていた。
現場で同じ繰り返しを見ながら、
ジュニョンだけが別の行動をしているのを見て、
声をかけたのだ。

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ジュニョンとミンチョルは協力しあって、
事故を阻止するよう努力するが、
結果は変えることは出来なかった。

すると、もう一人、
タイムループにはまっている男が現れて・・・

という一ひねりのある作品。

その3人がどう関わり、
どうやってタイムループから抜け出すか、
が作品のキモとなるが、
まあ、いろいろ考えたのだろうが、
あまりよい結果が出たとは言えない。
というか、いかにも韓国映画らしい
情緒的な決着の付け方で、
演技もオーバーで納得性に欠ける。

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ただ、タイムループものに新しい要素を加えた点と、
繰り返しの描写に工夫がある点は買える。

医師役のキム・ミョンミンは、
とても凄腕の医師には見えないのが難。

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なお、この作品は、
既にWOWOWで放送済み。
12月27日に再放送される。

5段階評価の「3.5」

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/NhPJhecK08Q

シネマート新宿で上映中。
                                        
↓は、韓国版チラシ。

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タグ: 映画




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