小説『君の膵臓を食べたい』  書籍関係

[書籍紹介]

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映画を観て気になったので、読んでみました。

高校生の「僕」(終わりの方で名前が明らかになる)が
病院で偶然拾った「共病文庫」というタイトルの文庫本は、
クラスメイトの山内桜良 (さくら) の秘密の手書き日記帳で、
その冒頭に、桜良が膵臓の病気により、
命が長くはないことが記されていた。
桜良は病気のことを
親友の恭子にさえ告げておらず、
家族以外では「僕」だけが知る秘密となった。
桜良は、「僕」が読んでしまったことを知り、
そこから二人の奇妙な関係が始まる。
それは、正反対の人間に「僕」が振り回されることを意味していた・・・

というわけで、
遠からず死ぬことが決まっているクラスメイトとの
秘密を共有しながらつき合う男女の物語。

既に映画を観た感想は、↓のブログに書いたとおり。

http://star.ap.teacup.com/applet/shokuniku/20171031/archive

小説は、本来なら深刻な話になるところを、
シリアスにもセンチメンタルにもならずに
軽快な形で書き綴る。

たとえば、

「君の膵臓を食べたい」
と桜良が言うと、「僕」は
「いきなりカニバリズムに目覚めたの?」
と返し、
「昨日テレビで見たんだぁ、
昔の人はどこか悪いところがあると、
他の動物のその部分を食べたんだって」
「それが?」
「肝臓が悪かったら肝臓を食べて、
胃が悪かったら胃を食べてって、
そうしたら病気が治るって
信じられてたらしいよ。
だから私は君の膵臓を食べたい」
「もしかして、その君っていうのは僕のこと?」
「他に?」

という調子。
二人で焼き肉を食べながら、こんな会話をする。

「私、火葬は嫌なんだよね」
それなりに楽しく焼き肉を食べていると、
彼女が明らかに場所を間違えた話題を振ってきた。
「なんだって?」
聞き間違いの可能性もあったので、
一応確認してみると、
彼女は真面目な顔で繰り返した。
「だから、火葬は嫌なの。
死んだ後に焼かれるのはなぁ」
「それ、焼き肉食べながらする話?」
「この世界から本当にいなくなっちゃうみたいじゃん。
皆に食べてもらうとか無理なのかな」
「肉を食べながら死体処理の話はやめにしよう」
「膵臓は君が食べてもいいよ」
「聞いてる?」
「人に食べてもらうと
魂がその人の中で生き続けるってい信仰も
外国にあるらしいよ」

桜良のセリフ。

「私達は、皆、自分で選んでここに来たの。
君と私がクラスが一緒だったのも、
あの日病院にいたのも、
偶然じゃない。
運命なんかでもない。
君が今までしてきた選択と、
私が今までしてきた選択が、
私達を合わせたの。
私達は、自分の意思で出会ったんだよ」

こうして、桜良との交わりを通じて、
「僕」は、「人との関わりが人を作る」ことを学んでいく。

桜良が死んだ後、
「僕」が桜良の家を訪ね、
お母さんと「共病日記」について話す場面は、
映画同様感動的。

ただ、あまりにもピュア過ぎて、
70歳を過ぎた者、
いろいろな汚いものを見聞きし過ぎた者には、
共鳴するには至らなかった。
もっともっと人生は複雑だからだ。

なお、映画との違いは、
映画が12年後の「僕」が後輩に語って聞かせる過去、
というくくりは、小説では、ないこと。
あれは映画化に際しての脚本家の創作だった。






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