映画『ラストレシピ』  映画関係

[映画紹介]

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佐々木充は、レストランを経営するが、
あまりに理想の料理を求めるあまり、
客からも使用人からも見放され、
多額な借金を抱えて、
返済のために特殊な料理を作っていた。
それは、
「人生の最後に食べたい思い出の料理」を求める金持ちを対象に、
客の昔味わった料理を再現してみせることだった。
充は、「一度食べた料理の味は忘れない」という
絶対味覚の持ち主だったのだ。

その充に対して、奇妙な依頼が舞い込む。
中国人の料理界の重鎮・揚晴明という老人からで、
戦前の満州で、
天皇陛下の料理番だった山形直太朗が作り上げた
「大日本帝国食菜全席」のレシピを再現してほしいと言うのだ。
その料理は満州国への天皇行幸の際の晩餐会で
お披露目されるものだったという。
老人はそのレシピ作りに携わったが、
今、そのレシピは失われているというのだ。

充はつてを辿って、
直太朗と共に満州に渡り、
料理の助手をしていた鎌田正太郎などから話を聞く。

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こうして、現代の日本と戦前の満州を交互に描きながら、
充は直太朗がレシピ作りに腐心した跡を辿ることになる・・・

かなりスケールの大きい話だし、
至高の料理に向けての人々の関わりが
濃密なドラマを生む。
題材としては、映画化に値する内容だ。

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私好みの話なのだが、
乗れなかった

その理由は、細部に見逃せない手抜きが散見されるからだ。

[以下、観る予定の人は読まない方がいいでしょう]

たとえば、冒頭に、
余命いくばくもない財産家が
妻と初デートの時食べたオムライスを
充に再現してもらい、
食べて満足を得る、という場面がある。
となれば、「一度食べた料理の味を忘れない」はずの充は、
いつその料理を口にしたのか
財産家の青春時代のことで、
食べたのはその人物で、充ではない。
ならば、そもそも同じ味のオムライスを作ることなど、
不可能ではないか?

充が経営するレストランでの厨房の情景が出て、
充が助手の作った味付けが気に入らず、廃棄を命令し、
あげくの果てに、望む味が出ないから
客に帰ってもらえ、
などと言う。
横暴な暴君で、性格破綻者だ。
こんな人物なら、修業時代にも同様なことをしていて、
開業にまでは至れないだろう。

途中で「大日本帝国食菜全席」を巡る陰謀が明らかになり、
直太朗がレシピを燃やすが、
その時、周囲に人が沢山いるのに、
誰一人火を消そうとしない
著しくリアリティが欠ける描写だ。

毒を盛る、という話が出るが、
そんなことは勝手に手下にやらせればいいのであって、
直太朗の了解など不要。
これは、直太朗が何らかの形でその陰謀を知るという形で十分。

そもそも、毒味によって発覚するのなら、
その晩餐会そのものが中止になり、
関東軍の不祥事になる。
いくら戦争を起こす策略としても、
全く現実味がない。

幸子が開店したレストランが貰い火で焼け、
レシピを守るために火に飛び込んだ幸子が
焼け死んだことになっているが、
では、レシピはどうやって救出したのか
充に渡されるレシピが
焼け焦げの跡一つない、というのは、どういうわけか。
他の所に保管してあったのを
幸子が店にあると思って火の中に飛び込んだとしたら、まったく不自然。
そもそも大切なレシピだ。
コピーしておくなどという措置はしていなかったのだろうか。

こうした疑問が撮影時に誰からも出なかったとは思えない。
出なかったとすれば、スタッフが無能だし、
出たのにきかなかったとすれば、
監督が、誰も言えないワンマンだったからだ。
              
「麒麟の舌」と呼ばれる究極の味覚を持つ料理人の
幻のレシピを巡る着想は優れているし、
現代と過去をつなぐ部分は意表をつくが、
細部のリアリティが欠如していては説得力が失せる。

映画は「大きな嘘」と「細部のリアリティ」が調和して成り立つ。
細部のリアリティで手を抜けば、
大きな嘘まで成立しなくなってしまう。

突っ込み所満載の映画はあり、
逆にそれを楽しむムキもあるが、
たいていはSFかアクション、又は喜劇であって、
このような歴史をからめた作品には向かない。

そういうわけで、
5段階評価の「3」をつけざるを得ない。

基本的にこのブログでは
あまりけなさないようにしているが、
今回のように、期待作で、評価も高い作品には、
ついひと言申し上げたくなってしまった。

ただ、充の友人役の綾野剛は、
何をやらせても役柄を膨らますことが出来、感心した。

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直太朗の西島秀俊は、最後まで料理人には見えなかった。

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田中隆一の原作を映画化。

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余分なことだが、
当時「レシピ」などという言葉があっただろうか?
レシピが一般化するのは、この2、30年のことではないか?
当時は「調理法」などとは言わなかったか?

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/mJfQ0JOePFU


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