映画『エルネスト』  映画関係

[映画紹介]

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チェ・ゲバラと共にボリビアの反政府ゲリラ活動をした
日系人のフレディ前村を描くドラマ。

映画は冒頭、
キューバ革命から約半年が経過した1959年夏、
使節団として訪日したゲバラ(当時31歳)が、
スケジュールを変更して広島に足を伸ばした実話を描く。
映画は夜行列車で行ったことになっているが、
飛行機で行ったという説もある。
広島県職員案内の下、
広島平和記念公園内の原爆死没者慰霊碑に献花し、
原爆資料館と原爆病院を訪れた他、
広島県庁を来訪し、広島県知事と会談している。
知名度もなく、注目もされなかったが、
「中国新聞」の森記者が単独取材で同行し、
記録を残した。
その際ゲバラは、原爆の悲惨さを伝える展示物を見て、
「日本人はアメリカにこんなひどい目にあわされて、
どうして怒らないのか」
と問うたという。

帰国後、キューバ危機が起こり、
核戦争が現実のものとなる中、
キューバ人で唯一人、
原爆の悲惨さを知っていた人物がゲバラだった、
ということになる。

展示に打たれて写真を撮ることを忘れたゲバラが、
慰霊碑を再び一人で訪れた時、
撮った写真が映画の中に出て来る。

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鹿児島からボリビアに移民した父母を持つ
日系二世のフレディ前村は、
医者になって人々を救うためにキューバのハバナ大学に留学したが、
入学から5日目にして、キューバ危機に直面する。

(キューバ危機とは、1962年10月から11月にかけて、
キューバにソ連の核ミサイル基地の建設が明らかになったことから
アメリカがカリブ海で海上封鎖を実施し、
アメリカとソ連が対立して
全面核戦争寸前まで達した危機的な状況のこと。)

留学生まで戦闘準備に駆り出されるような混乱の中、
チェ・ゲバラと出会ったフレディは、
その理念やカリスマ性に感銘を受ける。

ゲバラやカストロといった革命の英雄が
気軽に外国人の学生寮を訪れ、
バスケットボールに興ずる、
という描写は、興味をそそる。

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フレディがゲバラに質問する。
「あなたの絶対的自信はどこから?」
すると、ゲバラの答はこうだった。
「自信とかではなく怒っているんだ、いつも。
怒りは、憎しみとは違う。
憎むな。
憎しみから始まる戦いは勝てない」

また、「今、なすべきことは」と訊くと、
「そんなことを人に訊くな。
いつか、君の心に聞こえて来るものがある」
と言われる。

フレディは医学生として勉強しながら、
社会の不平等に対する怒り、
貧しい者が理不尽な扱いを受けることへの
怒りの炎を燃え上がらせていく。

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1964年に故国ボリビアで軍事クーデターが起き、
フレディは次第にボリビアでの反政府運動に参加する意思を
抑えがたくなっていく。
1966年、偽名でボリビアへ入国し、
チェ・ゲバラ軍に参軍、反政府ゲリラになり、
ゲバラのファーストネームであるエルネストを
戦士名として本人から授けられる。

(ゲバラの本名は、エルネスト・ラファエル・ゲバラ・デ・ラ・セルナ。
「チェ・ゲバラ」の呼び名で知られるが、
「チェ」は主にアルゼンチンやウルグアイ、
パラグアイで使われているスペイン語で
「やぁ」「おい」「お前」「ダチ」といった砕けた呼び掛けの言葉で、
ゲバラが初対面の相手にしばしば
「チェ。エルネスト・ゲバラだ」
と挨拶していたことから、
キューバ人たちが「チェ」の発音を面白がり付けたあだ名である。)

フレディは、ボリビアの軍事政権を倒す戦いに身を投じるが、
ボリビア軍は手強く、ジャングルでの行軍は
希望とは程遠い苦難に満ちたものだった。

1967年8月31日、
渡河の最中、政府軍の待ち伏せ攻撃に遭い負傷。
死亡した他のゲリラ兵士についての身元確認要求を拒否したため、
政府軍により銃殺された。
25歳だった。

原作はフレディの親族が書いた
「革命の侍 チェ・ゲバラの下で戦った日系2世フレディ前村の生涯』(2009)。
2017年、「チェ・ゲバラと共に戦ったある日系二世の生涯革命に生きた侍」
の題で再刊。
この原作を阪本順治が監督した日本・キューバ合作映画。
こういう日本人がいたことは知らなかった。
そのことを伝えるだけでも映画化の意義がある。

カストロの言葉、ゲバラの言葉に影響を受けたフレディが、
医師の道を捨てて、
ボリビアの反政府活動に身を挺することに感銘を受ける。
ついに、「心に呼びかけて来る声」を聞いたのだ。

そして、裏切りに合い、その命を散らすが、
犬死にのように見えたその死が、
ゲバラ霊廟を訪れる友人たちの姿で
意味あるものであったことが分かって、涙した。
フレディがした行動は、
彼らの中に残っていたのだ。

安逸の中にいる日本で、
今だに「心に聞こえて来る声」を聞くことなく、
年齢だけを重ねた。
その立場から、
フレディの生きざまは強く心を動かされた。

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フレディを演ずるオダギリジョー
全編スペイン語のセリフで演技をする。
顔つきがすっかり南米人の顔になっており、
その集中力に感嘆した。
また、ゲバラを演ずる
ファン・ミゲル・バレロ・アコスタ
素晴らしい面構えで、ゲバラ像を造形。

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彼の登場するシーンが引き締まり、胸を打つ。
深い内面からの演技だからだろう。

神田順治の演出は手堅く、
現地での撮影の苦労がしのばれる。

最後に、ゲバラの言葉。

もし私たちが空想家のようだと言われるならば、
救い難い理想主義者だと言われるならば、
できもしないことを考えていると言われるならば、
何千回でも答えよう、「そのとおりだ」。

私はキリストではないし、
慈善事業家でもない。
キリストとは正反対だ。
正しいと信じるもののために、
手に入る武器は何でも使って戦う。
自分自身が十字架に磔になるよりは、
敵を打ち負かそうと思うんだ。

どこで死に襲われようと、
我々の戦いの雄叫びが誰かの耳に届き、
我々の武器を取るために別の手が差し出され、
他の人たちが立ち上がるなら、
喜んで死を受け入れよう!

5段階評価の「4」
予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/t8J2SXLxL7c

有楽町スバル座他で上映中。

タグ: 映画




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