小説『不発弾』  書籍関係

[書籍紹介]

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相場英雄による企業小説

発端は大手電機メーカー、三田電機が明らかにした
1500億円にのぼる「不適切会計」
7年で1500億という途方もない損失は、
立派な粉飾決算だが、
本来なら上場廃止にあたる「粉飾決算」が、
「不適切会計」という穏当な表現になった背景には、
何かが隠されているのではないか──
警視庁捜査二課で第三知能犯捜査係を統括する
小堀秀明は内偵を始める。

捜査の途中、古賀遼という人物が関係していることが分かる。
その人物の周囲では
不審な事故死や自殺が起きていることも判明する。
この人物は何者なのか。
そして、事件にどう関わっているのか・・・。

というわけで、2015年から2016年にわたる小堀による調査と
1977年(昭和52年)から物語の終結までに至る
古賀(本名古賀良樹)の証券マンとしての人生とを並列に描く。

福岡県大牟田市の高校生だった古賀は
高校の先輩の勧めで証券会社に就職、
取引所の場立ちから始めて、都下の支店に配属され、
ここで先輩の中野の薫陶を得て、
実績をあげていく。
その過程で三田電機の将来の社長になる、東田と知り合う。
NTT株の上場などで日本列島がバブルに突っ走る経験をし、
ブラック・マンデーを通過し、
やがて当局の政策転換で、一任勘定を禁止され、
大蔵省の総量規制で不動産バブルがはじけ、
株価が急速に下落、
北海道の開発銀行や山屋の破綻も飛び出す。
山屋とは、もちろん山一証券だ。

企業コンサルタントとして独立した古賀は、
損を出した企業のために
仕組債を使って不良債権の処理を先送りし、
海外に「飛ばし」て、企業の損失隠しに手を染めるようになる。

この過程で様々な企業が登場して来る。
三田電機は東芝だし、ゼウスはオリンパス
ノアレはヤクルトがモデルだと分かる。
選挙に出る前の安倍晋三らしき人物も登場する。

古賀は世の中には
全く苦労を知らずに育った人種があることを感じた。

体格の良い芦原だが、
その手は存外に柔らかかった。

芦原の柔らかく白い手に触れた瞬間、
古賀はすべてを悟った。
この国は、こうした
白く柔らかい手を持つ人間が支配している。

というわけで、
日本の戦後の経済の歴史をたどる、この小説
当時をリアルタイムに生きた私なぞは、
目が洗われる思いがした。

前に勤めていた組織で
仕組債を導入して
黒字転換したのだが、
仕組債に、本書で描くような
負債隠しの活用法があるとは知らなかった。
もっとも、私が扱ったのは、
素性の良い仕組債に限定していたのだが・・

いずれにせよ、
バブル崩壊という日本経済の一大事件を背景に、
その時に適切な処理ができなかった損失が
今だに不発弾のように潜在していることを感じさせて
不気味な予感を与える小説である。

著者は語る。

日本人は、やっぱり隠蔽体質なんですよね。
都合の悪いものは、隠してしまおうという。
直接そういった案件にかかわっている人たちは
一サラリーマンなので、
異動などで順送りになると、負債はどんどん膨らんでしまいます。
このまま放置すれば、日本経済が終わってしまうような規模の
大事件になってしまう。

やはり、本質は、そこか

著者の15年にわたる取材で、
厚みのある、深い小説が出来上がった。

しかし、悪人は古賀なのだが、
著者は古賀の方に肩入れしているように見え、
反対に小堀の方の影が薄いのはどういうわけだろう。





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