評論『英国人記者が見た 世界に比類なき日本文化』  書籍関係

[書籍紹介]

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前回(7/13)、
「英国人記者が見た
連合国戦勝史観の虚妄」
の紹介でも書いたが、
著者のヘンリー・スコット・ストークス氏は
1938年生まれの英国人で、
オックスフォード大学修士課程修了後、
フィナンシャル・タイムズ社に入社、
東京支局初代支局長をつとめた後、
ザ・タイムズ東京支局長、
ニューヨーク・タイムズ東京支局長を歴任。
三島由紀夫と最も親しかった外国人記者としても知られる。
妻は日本人である。

「英国人記者が見た
連合国戦勝史観の虚妄」
と違い、
この本は外国人の視点で見た
日本の文化の素晴らしさを記している。

加瀬英明氏との共著で、
前半の第1部 日本文化は人類にとっての財産
をストークス氏が、
後半の第2部 岐路に立つ日本文化
を加瀬氏が書いている。

加瀬英明氏は
1936年生まれの外交評論家。
慶応義塾大、エール大学、コロンビア大学で学び、
福田・中曽根内閣で首相特別顧問を務め方。

ストークス氏は、まえがきで、
来日前は日本と日本人を誤解していた。
また、来日した当初は
日本人がはっきり意見を言わず、
曖昧で、何を考えているのかわからない国民だと思ったという。
しかし、こう書く。

だが、いまは違う。
はっきり意見を言わないのは、
自己主張を押さえることで諍いを避け、
他人との調和を第一に考えるからだった。
曖昧な態度を取るのも、
はっきり言わずとも
相手に察してもらえる文化であるからだった。
宗教的に厳格な規範がなくとも、
日本には数千年来の確固とした道徳律があって、
それが国民の暮らしを律していることも分かった。
「男尊女卑」の国であるどころか、
これほど女性が自由で、
生き生きと活躍できる国であるというのも驚きだった。
こうしたことが分かってくると、
日本は世界でも類を見ない、
洗練された平和な文化を育んできた国であり、
これほど素晴らしい歴史と文化を持った国は、
他にないと思うようになった。
そしてイギリス人として、
日本に心からの慈しみを、感じるようになった。
さらには日本文化には、
世界が取り入れるべき規範があると、
確信するにいたった。


なるほど、そう言われてみれば、
それは日本人の美点であるかもしれない、と思えて来る。
そして、その中心となるものに、
「和」を指摘するのだ。

世界で他にまったく見られない、
日本の素晴らしい長所を挙げれば、
何といっても、人々のあいだの「和」である。
この人と機微とのあいだの「和」は、
このひろい世界の中で、
日本にしか存在していない。

日本民族は異なるものを、
二律背反的な対立構造でとらえなかった。
大きく「和の心」をもって共存させ、
全体の調和を保つことによって、
独自の文化を織りなしてきた。


そのような日本文化の起源として、
縄文時代を挙げる。
石器をつくられたのが3万年前。
土器は1万数千年前。
古代四大文明である
エジプト文明(紀元前3千年頃)
メソポタミア文明(紀元前3千5百年頃)
インダス文明(紀元前2千3百年頃)
黄河文明(紀元前5千年頃)
よりも古い文明が日本にはあったのだ。

「縄文時代」についていえば、
その遺跡から、
戦争のための武器がほとんど出土しないことは、
特筆すべきことだ。
もちろん、そのあいだに
流血の抗争もしばしば起こったことだろう。
しかし、それを示すような遺物はなく、
日本列島では、
日本の外の世界に較べて、
流血の抗争が少なかったと推測される。
それにしても、
一万年以上もほぼ平和が続いた文明は、
われわれの想像を絶する。
縄文人は山海の幸に恵まれ、
シカ、イノシシ、ウサギなどの
多くの動物が生息していたため、
狩猟や漁労も盛んで、
食べ物に不自由しなかった。
自然の恵みが豊かだったことも、
抗争が少なかった理由を、
説明するものだろう。
きっと、日本人の「和」を大切にする文化は、
この縄文時代に育まれたのだろう。


なるほど、「和」の紀元は、
日本列島の豊富な食材にあったか、
と膝を打ちたくなるような展開である。

604年に聖徳太子によって制定された
「十七条憲法」では、
その第十七条で
「大切なことは、みんなでよく相談して決めなさい。
全員が合意したことは、正しい」
と定めている。
これは、世界最古の民主憲法だといえる。
だが、聖徳太子がある日、
思いついて書いたものではないだろう。
当時の日本人がいだいていた考え方を、
太子が述べたものであるはずだ。

二宮金次郎は
「君ありて、のち民あるにあらず。
民ありて、のち君おこる。
蓮ありて、のち沼あるにあらず」
と書いている。
このような民主的発想は、
同じ時代のアジアやヨーロッパでは、
とうてい考えることができない。
二宮金次郎が、革命家であったわけではない。
日本人なら誰でも、
そのような思いをいだいていたのだった。


日本人は和を尊ぶために、
できるだけ自己を主張しないように、つとめる。
誰にとっても、
私欲を抑えることが、美徳となっている。
日本以外では、庶民も利己的で、
できるだけ財を手に入れたいと望む。
中国人の理想といえば、
一族が栄え、食生活をとっても貪欲に享楽を求め、
現金であれ、不動産であれ、
金銀宝石を蓄財することだ。
これは、習近平国家主席をはじめとする、
中国歴代の最高指導者と、
その一族のありかたを見れば、分かることだ。

日本ではお喋りな男は、
無教養であるとか、
軽々しいとか、
野卑だと思われ、見下される。
日本人の場合は、
外の世界の人々よりも、
もっと洗練されていて、
互いに相手を察し合う、
「和の文化」だからだ。
日本には、「以心伝心」とか、
「空気を読む」という方法がある。
はじめから、同じ「心」を分かち合っているから、できることだ。
自己を主張するのではなく、
相手の立場に立って、
相手の思いを「察する」のだ。
譲り合いは、
日本にとって、
人間関係の基本である。
きわめて日本的なものだ。


他に、
日本を「男尊女卑」とするのは正しくない。
その証拠に平安時代の女流作家たちの活躍を見よ、という。
「源氏物語」は世界初の女性による小説だし、
「万葉集」にも女性の歌が多く収められている。
なにより、日本の女性の平均寿命は世界一だ。

日本ほど平等な社会はない。
イギリスやヨーロッパは階級社会だ。
格差の少なさも世界の中で飛び抜けている。

日本では、
自分だけの幸せを追求することがあったら、
肩身が狭いと思う、
「和の心」から発している。


そして、絢爛として花開いた江戸文化
欧米の文化が貴族によるものだったのと違い、
日本文化は庶民の文化なのだ。

私ははじめて一輪挿しの花を見た時に、
強い衝撃を受けた。
西洋にも「フラワー・アレンジメント」があるが、
花をいっぱいに盛って、美しく飾りたてる。
たった一輪の花を美しいと感じる日本人の感性に、
驚いたのだった。
その時私は、一輪の花が、
ほんとうに美しく感じた。


そして、

これほどまでに、
自制を尊んでいる文化は、
世界に類例がない。


とし、そのあらわれとして、
マーチン・バロー
東日本大震災の時、
日本人の姿に感動して、
「日本から学ぶべき10項目」
を挙げた内容を紹介している。

一、おだやかさ
号泣し、泣きわめく姿をまったく見ることがなかった。
個人の悲しみを内に秘め、悲しみそのものを昇華させた。
二、尊厳
整然と列をつくって、水や食料が渡されるのを待った。
罵詈雑言や、奪い合いは、一切なかった。
三、能力
驚くべき建築技術。
建物は揺れたものの、倒壊しなかった。
四、気品
人々は、必要なものだけを購入した。
買い占めることなく、そのため、
すべての人が必要なものを手にすることができた。
五、秩序
車がクラクションを鳴らしたり、
道路を占拠したりすることがまったくなかった。
六、犠牲的行為
福島第一原発で事故が起きた時に、
50名の作業員が海水を注入するために、
逃げずにその場で作業を続けた。
彼らの犠牲的行為は、どう報いてあげられるだろうか。
七、優しさ
食堂は値段を下げ、ATMには警備がつくこともなく、
そのまま使えるようにされた。
弱者には、特に助けが差しのべられた。
八、訓練
老若男女の別け隔てなく、
すべての人々がどうすればよいかが分かっており、
その通りに行動した。
九、媒体
メディアは、冷静かつ穏やかに報道した。
十、良心
店で買い物をしている人たちは、
停電になると、
手にしていた商品を棚に戻して、店を出た。

第2部「岐路に立つ日本文化」は、
加瀬英明氏により、ストークス氏の主張が肉付けされている。

ストークス氏は、
日本が世界でただ一国、
和の社会を形成しており、
日本語の和や、心という言葉を、
そのまま英語や、外国語に訳することができないと、
説いている。
日本人の心が和によってつくられ、
心が和をつくってきた。
私たちが日常、当たり前のことだと思っている和は、
日本だけの独特なものである。


外国に行くと、
人々が大声で話し合う喧騒の中に置かれる。
その原因は、これらの国々が
常に異民族と接触しなければならず、
王朝が交代して、違う支配者のもと、
生き延びるため、常に主張しなければならなかったからだという。
それに較べ、日本人は島国の中で
侵略にさらされることなく、
互いを尊重しながら生きてきたという。

日本人は和によって、結ばれてきたから、
いつだって謙虚で、控え目に振る舞い、
寡黙なのだ。
そこで、大きな声を出したり、
大袈裟な身振りをすることを嫌う。

日本人が寡黙なのは、
日本社会においては、
自己主張する必要がないからなのだ。

ストークス氏は
日本に、人を罵る語彙が、
わずか10語あまりしかないことが、
世界のなかで珍しいと述べている。

日本人は、いつの時代をとっても、
美意識が突出して発達していた。
私たちは善悪よりも、
美か、穢れか、ということを、
尺度として生きてきた。

私は外国から友人がくると、
和食の店に案内する。
和食の美しさは、
世界に類がない。

ストークス氏は、
このところ、
日本が、品性を欠いた
アメリカの低俗な物質文明によって
蝕まれているといって、
憂えている。
私も、同感だ。

今日の日本は、
物の豊かさが満ちあふれているかたわら、
心が貧しくなった。
いつになっても、人々が満たされることがない。

欲しいものが、何でも手に入るようになったというのに、
この国から希望だけが、なくなった。

ハンチントン教授が、
日本を世界の八大文明として定義したことに、
ストークス氏が触れている。
他の七つの文明が
それぞれ多くの国々から構成されているのに対して、
日本は独立した文明であって、
ただ、一国で成り立っている。
日本文化はどこにも、属していない。
だから、仲間がいない。
そのうえ、日本の文化があまりに独特であるために、
日本は世界のなかで孤立しやすい、
あるいは、苛められやすいという、
大きな弱点を抱えている。
これは、日本が持って生まれた宿命だ。
だからこそ、日本を守るために、
日本に共感する国々と、外国人を、
力を尽くして
一国でも、一人でも多く、
獲得しなければならない。

ストークス氏と私は、
日本経済はさておいて、
日本の「和の文化」こそが、
世界一──ナンバー・ワンであって、
世界が日本文化を手本にするようになれば、
世界平和が実現されるものと、信じている。

まことに示唆に富んだ本である。

このような優れた日本文化を
貶めようとする動きがある。
慰安婦問題や南京大虐殺がそれだ。
彼らは、日本人が
残虐で悪辣な人種であると、世界で宣伝する。
そのために、
70年以上前のことを持ち出して、
というか、70年以上前のことでしか
日本の失敗を探し出せないのだ。

そして、それに呼応するような「反日」の国内の動き。
日本人でありながら、日本を貶めようとする動き。
それはもしかしたら、
彼らの中にあるDNAがそうさせているのではないかと
推測させてしまうほど、
感情的なものだ。

そういう動きに負けずに、
ストークスさんの著作に励まされて、
日本人も誇りを持ってもらいたいものだ。





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