北朝鮮考・その3  政治関係

世の中は、今日から5連休らしい。
まあ、こちらは365連休ですが。

そういえば、去年は娘と一緒にインド旅行をしましたね。
もう一年たつのか。

娘は今日から、
昨年行き損なった
中欧旅行に出掛けました。
プラハウィーンを回ります。
プラハ→ウィーン間は
列車の旅。

無事帰国を祈ります。


さて、北朝鮮考第3弾


北朝鮮内部を報道する石丸次郎氏(アジアプレス大阪事務所代表)のレポート。

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肝心の国民は
金正恩氏をどう評価しているのか?

北朝鮮報道に携わっていながらこう言うと不謹慎かもしれないが、
もう、げっぶが出そうである。

2月にマレーシアで発生した金正男氏殺害事件、
相次ぐミサイル発射実験、
そして「四月危機説」と、
テレビも新聞も北朝鮮問題を途切れなく大きく扱っている。
明らかに過剰だと思う。
そして、大切な部分が抜け落ちていると思う。
肝心の北朝鮮国内の事情だ。

今回は、金正恩氏のことを
北朝鮮の人々がどう評価しているのかについて書きたい。

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実質的に金正恩政権が発足してからの5年間、
アジアプレス内で筆者が主宰する北朝鮮取材チームは、
国内で調査を担っている取材パートナー10数人を含めて、
のべ約600回、70人以上の北朝鮮の人々と接触してきた。
北朝鮮の民心は、
私が特別に関心をもって調べてきたことでもある。
結論から言うと、夫人の李雪主氏に対する不評も加わって、
現在の金正恩氏の評判は散々だと言っていい。

1984年生まれとされる金正恩氏が
北朝鮮の党と国家のトップに就いたのは2012年、
推定28歳の時だった。
三代にわたる権力世襲を世界は奇怪と受け止め
非難の視線を向けたが、
北朝鮮の人々からは、執権の初期、
多くの反対の意見と共に、私にも意外だったのだが、
金正恩氏に期待する声もあったのである。
曰く、
「若い人だから新しい政治をやってくれるかもしれない」
「外国生活の経験があるらしいので、
もしかしたら改革開放に向かってくれるのではないか」
と言うのだった。
(金正恩氏は小中学時代に4年間スイスに滞在)

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ほぼ65年続いた金日成〜金正日の統治の間、
北朝鮮政権はずっと「朝鮮革命」のために国民を動員してきた。
「米国の植民地状態にある韓国を解放して
社会主義の下で統一する」ことを国是としてきたのだ。
だが世界は変わった。
冷戦構造が崩壊し、
同じく社会主義を標榜する中国が
目覚ましい経済発展を遂げたことを
北朝鮮の人々はよく知っており、
若い金正恩氏に変化を期待したのである。

それから5年、
北朝鮮の政治は何も変わらなかった。
国民は今も「朝鮮革命」の戦士であることを求められ、
唯一人の指導者たる金正恩氏に、
無条件に絶対忠誠、絶対服従することを
制度として強いられている。
2013年末に叔父で実力者の張成沢氏を粛清・処刑した頃から、
金正恩氏の評価は急落、
失望と反発の声ばかりが届くようになった。

最近、電話やメールで話を聞かせてもらった
北朝鮮の人々の声の例を紹介しよう。 
(北朝鮮国内に中国の携帯電話を密かに投入して連絡を取り合っている) 。

「叔父だけでなく義兄(金正男氏)まで殺すなんて恐ろしい。
人の道にもとる」
という道徳的非難。

「あんな若造に政治や世の中のことの何がわかる。
祖父(金日成)真似ばかりしている」
という侮りと反発。

「水害復興作業や農村などで
労働奉仕動員の負担が増えて困る。
電気・水道の麻痺が酷くなった」
という経済への不満。

「些細なことですぐ拘束される。
粛清も多く幹部たちはいつも震えている」
という恐怖。

これらが、庶民〜中堅幹部層がほぼ共通して、
まず口にする金正恩氏と政権に対する評価だ。

内外で不埒に走る金正恩氏に、
隣国の民の心はすっかり離れてしまったと思う。
(ただ、いわゆる特権層には我々はアクセスできていない) 。



次に、高英起氏(デイリーNKジャパン編集長)のレポート。

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金正恩氏の外見を遠慮なくけなし始めた
北朝鮮の若者たち

北朝鮮には、
「チャンマダン(農民市場)世代」と呼ばれる人々がいる。
概ね1990年代半ば以降に生まれた若者たちだ。

かつての北朝鮮では、
国家が食べ物や日用品の配給を握り、
それをもって国民を支配していた。
しかし90年代の大飢饉「苦難の行軍」により
配給システムが崩壊。
半ばなし崩し的に市場での商売が解禁され、
国民は本来なら禁じられているはずの
私有財産を蓄えるようになった。

その流れの中で、
人々は国家への依存から脱して自律性を強めてきたわけだが、
とりわけ「以前の北朝鮮」を知らない若者たちは、
年長の世代よりも強い自我を持っているとされる。
彼らは国や社会のことよりも、
個人の暮らしを大切にし、
現状に対しては非常に批判的で、
大人たちを慌てさせる場面も少なくない。

米政府系のラジオ・フリー・アジアによれば、
最近中国を訪れた平壌在住の情報筋から、
「最近の若者は大胆過ぎる」との言葉が聞かれたという。

若者は中高年層に比べると開放的で、
批判精神にも富み、
プライベートな場では
金正恩党委員長や体制に対する批判も平気でする。
もちろん、バレたら大変なことになる。
政治犯収容所に送られるか、公開処刑になるかもしれない。

もちろん、そのことは若者たちも知っている。
そのため、誰かの発言が外に漏れて問題になると、
仲間を売った密告者を探し出して徹底的に問い詰め、
報復するという。
具体的にどのように報復をするかについて
情報筋は触れていないが、
恐ろしくて二度と密告する気が起きないほどのことをされるようだ。

気になるのは、北朝鮮の若者たちの批判が、
いまどこへ向いているかだ。情報筋が説明する。

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「当局は、貧富の差がないのが社会主義で、
貧富の差が激しい資本主義の国は
人の住むところではないと宣伝している。
それなのに、国内でも貧富の差が日に日に大きくなっている。
これではわが国こそ、
もはや資本主義国家ではないかと憤っているのだ」

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平安北道の情報筋によると、
金正恩氏を称える「足取り」という歌に出てくる
「金大将」という歌詞を
「キム・トゥンボ」(トゥンボは太った人のことを指す)
に変えて歌う若者もいるという。

当局は、こうした替え歌問題を深刻に受け止めているようで、
国家保衛省は「替え歌禁止令」を出している。

平壌出身で現在は韓国に住んでいる脱北者のイさんは、
今時の若者について次のように説明した。

「北朝鮮の人々の中に、
社会主義と資本主義の正確な概念を理解している人は多くない。
外国からの情報に頻繁に接している若者たちは、
庶民にとって暮らしにくいのは
自分たちの国の方だと感じている。
そのため、社会主義と資本主義の概念はさておいて、
とにかく北朝鮮の体制がいけないのだと、
ことあるごとに批判の声を上げるのだ」

その怒りが、
金正恩体制をひっくり返すほどに強くなる日が待ち遠しい。



再び、石丸次郎氏のレポート。

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「人民軍に全面戦争なんて絶対できない」 
北朝鮮住民が語る軍の弱体化

北朝鮮の核、ミサイル開発に対して、
米国トランプ政権が先制攻撃をするのではないか、
北朝鮮は報復に日本にミサイルを撃ち込むのではないか…。
この一月間、
こんな「朝鮮半島四月危機説」を多くのメディアが報じてきた。

それでは、戦争勃発の可能性を
北朝鮮の人々はどう受け止めていたのだろうか?
国内に住む取材協力者たちに4月に入って以降、
集中して聞いている。
金正恩政権も、住民に対し戦争勃発の危機を訴えて
非常警戒訓練を実施し、緊張を煽っていた。

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しかし、北朝鮮の人たちの反応はいたって冷静、
というか冷淡であった。

「本当に戦争が起こると考える人は誰もいないのでは?
上から命じられるから訓練に出て行きますが、
皆、関心もないし怖いとも思っていませんよ」

4月中旬にメールで連絡を取った北部地域に住む女性の言葉だ。
他の取材パートナーたちも概ね同じ意見だった。

この拍子抜けするような反応の理由の一つは
「戦争不感症」だろう。
冷戦時代以来、北朝鮮政権は、
ずっと「戦争が起こる」と国民に負担と緊張を強いてきた。
実際、何度か米国と一触即発の事態になったこともある。 (※)

金正恩政権になって最初の核実験(2013年2月) 後、
内外に「戦争が起こる」という大キャンペーンが展開された。
国内では防空訓練や民間武力の総動員態勢を取るなど
国民に緊張を強いた。
だが、結果的に戦争は一度も起こらなかった。
戦争準備を口実に国内の緊張を高めて
人民統制を強化するのが政権の目的だと、
住民たちは考えるようになった。
「戦争が起こる」という政府の言葉は、
もはや信じられなくなっている。

人民軍に全面戦争は無理

戦争に対する緊張が薄いもう一つの、そして重要な理由は、
今の朝鮮人民軍に全面戦争ができるはずがないと、
北朝鮮の人たち自身が考えていることだ。
人民軍の実情について定期的に調査しているが、
送られて来る報告で、ほとんどの人が最初に触れるのは
兵士の栄養状態の悪さ。
そして劣悪な装備についてだ。

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「今年に入って栄養失調で家に戻される兵隊が目立ちます。
近所でも3人が戻されてきた。
その1人は
『飢えて死ぬくらいなら親のそばで死んだほうがいい。
軍生活はもうできない』
と言うんです」

「油がなくて軍の輸送には今でも木炭車が欠かせない」

人民軍に栄養失調が蔓延しているのは20余年前からのことだ。
人民軍の兵員は100万人超、人口の5%に及ぶ。
この大人数を食べさせる食糧を、
金正恩政権は財政難で確保できないでいる。
また支給された食糧も、
軍の幹部たちが横領して売り飛ばしてしまう
不正行為が横行していて、
末端の兵士にまで行き届かないのだ。

「本当に戦争する軍隊は別にあるんだよ」
兵士たちの間で、こんな「自虐ギャグ」が交わされている。

金正恩政権は、「軍事強国」というイメージ作りのために、
ミサイル発射場面や兵士の勇ましい行進の映像を
巧みに使ってきた。
核とミサイルの脅威はもちろん深刻だが、
人民軍の実像については冷静に見ていく必要がある。


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