小説『社長室の冬』  書籍関係

[書籍紹介]

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先日紹介した「紙の城」と同様、
新聞社の買収を巡る企業小説。

「紙の城」の紹介ブログは、↓をクリック。

紙の城

新聞記者の南康祐を主人公とした
「警察回りの夏」「蛮政の秋」に続く
「メディアシリーズ」第3作にして完結編。

伝統ある新聞社・日本新報
発行部数の激減、広告収入の低迷から
身売りは不可避と判断する。
相手は外資系メディア企業AMC。
社長の小寺政夫の手によって計画は推進されていたが、
小寺は心筋梗塞で急死し、
後任の社長・新里(にいざと)明に交渉は引き継がれるが、
AMCが提示した条件には重大な問題が含まれていた・・・

日本で最も古い新聞で、発行部数300万部、
ということなので、毎日新聞がモデルと思われる。

物語は3つの視点から展開する。
一つは日本新報の社長室
社長の新里や社長室勤務の南が主な人物。
南は山梨支局にいた時の誘拐報道で誤報をしてしまい、
要注意人物として社長室に置いて監視するという境遇におり、
記者の立場を剥奪されたデスクワークで、
取材も記事も書けないことに悩んでいる。
社長室の同僚・酒井優奈(ゆうな)との恋模様もある。

一つはAMCの日本法人
社長の青井聡太
総務マネージャーの高鳥亜都子(あつこ)が主な人物。
青井は20年前は日本新報の記者で、
海外勤務の予定が反故にされて、
新設のメディア事業に回されたことから
辞表を提出した過去を持つ。
そのため、日本新報の買収が
意趣返し
ではないかと疑われている。
その上、青井に人事異動の命令を伝えたのが
小里だったという因縁もある。
アメリカの本社CEOのアリッサ・デリーロが来日する。

もう一つは、日本新報の筆頭株主の長澤英昭。
創業者一族で将来は社長を目指していたが、
社内クーデターでその道を閉ざされ、
文化事業である日新美術館館長をしているが、
日本新報に対する恨みがあり、
身売りには反対の立場を明らかにする。
これに国会議員の三池高志がからむ。
三池はネットの規制を意図した人物で、
AMCに圧力をかけることを企む。

という三者の視点から描いていく。

「紙の城」同様、
紙としての新聞発行の行方という重大も問題が提起される。

というのは、AMC側が提示した条件が、
紙の新聞発行を停止し、
全面的に電子版に移行するというものだったからだ。
当然宅配は廃止し、
印刷部門、配送部門のリストラに繋がる。
販売部門もスリム化できる。
其れを聞いた労働組合はアンケートを取り、反対に回る。

瓦版以来、紙に印刷して配付することで成り立っていた新聞が、
速報性においてテレビにその座を譲り、
多様性においてネットにその座を奪われている現実の中、
紙媒体、更に日本独特の宅配制の維持が
時代の変化に即するものかどうか・・・
既に新聞を取らず、ネットでニュースを把握し、
コメントでそのニュースに参加している若者たちの前で、
どれほど今のままの形態が維持できるか・・・

特に、新聞社内部の記者たちにとって、
ネットの中でやがては消えていくものと、
印刷物として残るものとの葛藤は大きい。

登場人物の一人は言う。

「今みたいな取材のシステムや新聞の作り方は、
百年以上かかってできあがったものだろう?
でも、社会はすっかり変わってしまった。
新聞のシステムだけが古びて、
制度疲労を起こしていると思うんだ」

「新聞は、民主主義の根幹なんだ」
という意見には、南はこう思う。

それはあまりにも綺麗事だ。
新聞が自由に記事を掲載する──
それが民主主義の基本だった時代は確かにあった。
しかし今は、状況が違う。
遠慮して書かないこともあるし、
民主主義の基本である「多彩な言論」は、
レベルの問題はともかくとして、
ネット空間で実現している。
新聞が言論の主役だった時代は、
とうに終わっているのだ。

収賄をAMCのネットニュースで暴露されて
三池が議員辞職、政界引退を表明する記者会見の場で、
南はこう感ずる。

自分たち(新聞)はできなかった。
ネットに先を越された。

青井と新里の会話。

「紙の新聞がなくなることは、認めるんですか」
「否定できません。
しかしそれがいつになるかは分からない。
十年後か、二十年後か、五十年待つのか」

提起された問題の大きさに対して、
物語の展開は、案外鈍い。
その原因は主人公の南に魅力がないことが挙げられる。
南の立ち位置は微妙で、
この問題に強く対する立場にはいない。
これが主人公としては決定的に弱い。
如何に小里に信頼され、
青井に能力を買われても、
優柔不断さが                                  
その力をそぐのでは話にならない。
そう言い出せば、青井も小里も
絶対的な決定権がない立場なので、
物語がはずみようがない、と言えよう。

WOWOWで30日からドラマ化され、放映中。

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5回連続。

主人公が青井に変更され、
三上博史が演ずる。

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原作よりエキセントリックな人物に変更されている。
WOWOWのホームページには、
「まるでドナルド・トランプを彷彿とさせるような“暴君”を演じる」
と書かれている。

南を演ずるのは福士誠治

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社長の小里は笹野高史
ちょっとイメージが違う。

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亜都子は北乃きい

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青井と亜都子が親子はいう設定になっていて、びっくり。

CEOのアリッサはシャーロット・ケイト・フォックス

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これは原作を読んだ時、この人がやるのではないかと思っていた。
ただ、AMCはネット通販の会社に変更されている。






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