短編集『あくむ』  書籍関係

[書籍紹介]

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悪夢のような体験をつづった短編集。
井上夢人1993年の作品。

「ホワイトノイズ」

レストラン勤めの主人公は、
ディスカウント・ストアで
衝動的にエアバンド・レシーバーを購入する。
警察無線や自動車電話や携帯電話の電波を捕捉し、
盗聴する機械だ。
他人の会話を盗み聞きすることで、
突然生活に張り合いが生ずる。
常にレシーバーを携帯し、
イヤホンで盗聴する毎日。

そんな中、ひょんなことから
夫の部下と不倫をした女性の会話を盗聴し、
しかも、喫茶店で会っているのを目撃してしまう。
その上、脅迫者が現れ、
その主婦を脅迫し始めたのだ。
脅迫者は主婦に20万円を要求し、
置き場所を指定する。
指定場所の公園に行った主人公は、
主婦がお金を置いたのを横取りしてしまう。
脅迫者は主婦に再度金を要求する。
また同じ場所だ。
夜、公園に潜んだ主人公は・・・

というわけで、盗聴という行為が
脅迫という行為に転化していく様を描いた一篇。

「ブラックライト」

個展前に交通事故にあった画家が病室で目を覚ます。
体が固定され、目には繃帯が巻かれている。
失明したのだという。
しかし、画家はそれを疑う。
次第に手足も動き、目も見えていることが分かる。
病室と思っていたのは、屋敷の屋根裏部屋だった。
自分は誘拐されたのだ、と逃走を企てるが、
途中で捕まってしまう。
しかし、一味の中の女性がまた逃がしてくれるが・・・

最後に、自分の失明が受け入れられない画家の
妄想の逃走劇だったことが判明する。

「ブルーブラッド」

高校教師の主人公は、
実は吸血鬼の血筋で、
血を吸いたくて仕方がない。
しかし、犯罪になるから、
鳥の首を切り、その血を飲んで我慢し、
教え子の女子高校生の首筋に、夢の中で食らいついている。

そんな中、新任の音楽教師の依田優子が現れ、
夢の中で親しくなり、
最後には、その首にアイスピックを刺して、
噴出する血を吸い尽くす夢を見る。
しかし、最後は夢なのか現実なのか分からなくなり・・・

「ゴールデンゲージ」

裕福な家庭に育った優介は学校で問題ばかり起こしている。
反対に兄の賢介は常にトップで、将来を嘱望されていた。
その賢介の体に異変が起こる。
体の各所に筋のようなものが出来、延びていくのだ。
カッターで切り開いてみると、
その部分から短い回虫のようなが出現する。
虫を殺しても、筋は増え続け、
体を網のように走る。
筋を切ってみると、
そこにはびっしりと卵がついていた。
それを燃やすが、
それよりも早いスピードで虫が増殖し・・・

この本の中で最も戦慄する内容。
体の皮膚の下に住み着いた虫。
想像しただけで震える。

「インビジブルドリーム」

劇団員の大野は、
同じ劇団の女の子、ミライの見た夢の話を聞き、
その夢のとおりの出来事に出会う。
一度は壁にめりこむ腕の夢で、
固まっていない道路のコンクリートの中に手をめり込ませる。
続いて、天から槍が降って来る夢で、
ドラマの撮影時、事故で大道具係の腰の工具入れから落ちた
錐が足に刺さる。
一度は大きな猫に襲われる夢で、
バックして来た宅配便のトラックにぶつかる。
そのトラックには大きな黒猫が描かれていた。
そうしたことが続き、
最後にミライはナマコになった夢を見る。
そして・・・

という夢が現実になるという恐ろしい話。


どの話をとっても、
今まで読んだことのない話で、
井上夢人の引き出しの多さが分かる作品群である。





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