釜山の慰安婦像と『一つの中国』  政治関係

釜山の日本総領事館前に設置された慰安婦像をめぐり、

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日本政府の立場を明確に示す当面の措置として
下記4点を実施することになった。

@長嶺駐韓国大使および森本在釜山総領事の一時帰国
A日韓通貨スワップ協定再開の協議の中断
B日韓ハイレベル経済協議の延期
C在釜山日本総領事館が参加する交流事業の参加見合わせ

日本の毅然とした対応を受け、韓国側はやや動揺しているようだ。

韓国外務省
「困難な問題があっても、
両政府間の信頼関係を基に
韓日関係を持続的に発展させていかなければならない」
という報道官論評を出した。
意外な低姿勢。
というより、官僚だから、
国際的に結んだ政府間合意の重さは分かっているのだろう。

大統領代行を務める黄教安( ファン・ギョアン) 首相は、
「状況悪化を招く言動は自制することが、
日韓関係の未来指向的発展のために望ましい」
と述べた。
黄首相は、10日の閣議で、慰安婦問題をめぐる「日韓合意」について、
「日本政府の責任を認定し、謝罪と反省が表明された」
と評価。
そのうえで、日韓関係の悪化に懸念を示し、
「日韓両政府だけでなく、全ての当事者が、
合意の精神を尊重して、
関係発展のために努力することが必要だ」
と言っている。

しかし、問題の第一原因を作ったのは、
民間団体といえども、
韓国の人々が
合意の精神に反する行為をしたことなのだから、
まず韓国国内をおさめることが重要だろう。
他人事ではないのだ。

韓国メディアはもっと強硬で、
ハンギョレ紙は社説で、
「不適切を超え、
盗人たけだけしいに近い。
理解しがたい」

と断じ、
「日本政府は元慰安婦被害者に対する法的責任認定をはじめ、
全体に必要な措置をとらなかった」
とし、
慰安婦問題をめぐる日韓合意に「根本原因」があり、
「日本政府がこれを直視せねばならない」
と主張。
「日本は報復措置を即刻止めるのが当然」
とした。

中央日報は、釜山の慰安婦像を設置したのは、
「韓国政府ではなく市民団体だ」
と指摘。
「韓国当局は防ごうとしたが
爆発寸前の世論に押された。
これを勘案せずに
即刻、大使召還という超強硬手段をとったことで
日本政府は両国間の葛藤をあおった」
と批判。

次の大統領候補である野党の人物は、
「10億円を返して、合意を白紙に戻す」
と言っている。

こうした強硬な主張は、
今回日本政府が取った措置が
効果的であったことを逆に示している。

ここで、昨年12月の「日韓合意」の内容を確認してみよう。
整理すると、合意点は4つ。

@日本政府は同問題への旧日本軍の関与を認め、
 「責任を痛感」するとともに、
 安倍晋三首相が「心からおわびと反省の気持ち」を表明。
A元慰安婦支援のため、
 韓国政府が財団を設立し、
 日本政府の予算で10億円程度の資金を一括拠出する。
B合意に基づく解決策が「最終的かつ不可逆的」であることを確認。
 今後、国連など国際社会において
 この問題に対する相互非難、批判を自制する。
C在韓国日本大使館前の少女像に対し、
 韓国政府としても可能な対応方法に対し、
 関連団体との協議等を通じて適切に解決されるよう努力する。

簡単にいうと、
安倍首相があやまり、
それだけではなく、
10億渡すから、
もう問題を蒸し返すことはやめよう
ということを国際的に表明したもの。

日本政府は@とAは既にしており、
あとは韓国政府が「誠実に実行」することを待つのみという立場。
今度の釜山の領事館の慰安婦像設置については、
BとCに違反する、という指摘だ。

なお、韓国国民の半数以上が「合意」には反対だというが、
それは日本が「法的責任」を認めていないから、というわけで、
@では不十分ということだという。
極論すれば、
日本が国際社会で法的責任を認めて謝罪することを求めている。
これについては、
事実関係で日本側に(正当な)言い分があり、
合意での@はぎりぎりの譲歩なのだった。

今回は釜山の領事館前に「民間団体」が慰安婦像を設置、
それを韓国世論が支持する、
という形で
韓国国民全体で、BとCを反故にしたことになる。
政府同士がどんなに「合意」しても、
民間レベルで、合意に違反することを意味する。

要するに、
韓国国民は「慰安婦問題」を問題のまま残しておきたい
ということだろう。
これが解決してしまったら、
日本を攻撃する材料がなくなってしまう。
反日のための有効なツールである「慰安婦問題」を
失いたくないのだから、
どんな「合意」も認めたくないのだ。

その意味では、設置者の「民間団体」の目的は
十分果たされたといえよう。
「合意」以来、急速に回復していた日韓関係が
一挙に元に戻ってしまったのだから、
設置者の思う壺だ。
だって、慰安婦像の設置は、
合意を無力化し、
日韓関係を悪化させるのが目的なのだから。

今回のことは、政府間の「合意」が
民間レベルで破られたことで、
「合意」の実効性は喪失したといえよう。

日本政府が行った4つの措置だが、
「大使召還」といえば歴史的に、
両国関係が戦争寸前にまで至ったことを意味するという。
しかし、抗議の意思を明確にする、という点ではよかったが、
いずれは元に戻らざるを得ず、
時間の問題なのだから、
あまり効果はないといえる。

AとBは経済的な制裁で、
これは効くだろう。
しかし、民間レベルでは
その重要性を理解することはあまりないだろう。
韓国政府があわてるほど、
また、韓国メディアが敏感に反応するほど、
民間レベルでは、
いつもの「日本に対しては何をしても許される」のままなのだ。

今回の日本政府の措置は、
「日本に対しては何をしても許されるわけではない」
ことを示したといえるが、
これが民間レベルまで理解されるのは、
容易なことではない。
日本政府の強硬な反応に
韓国国民は逆に怒るだけだろう。
                         
日韓合意以降も慰安婦像が撤去されるどころか、
増え続けているという。
実際、日韓合意後、最低15体の像を新設したという調査もある。

韓国では今なお複数の組織、団体が
慰安婦像の設置を計画している。
韓国国内にはすでに40以上の慰安婦像が設置されているほか、
米国やカナダ、オーストラリア、中国など
世界には50以上の慰安婦像が存在する。

設置直後に自治体が撤去したが、
そのままにしておけばよかったのに、
設置を認めたからこうなったのだ。
自治体の弱腰が一因である。

これからも慰安婦像は
「民間団体」によって設置され続けるだろう。
像一つ置くことで、
日韓関係にくさびを打つことが出来るのだから、
こんな便利なものを手放すはずがない。
それは、北朝鮮が核を手放さないのと同じだ。

つまり、慰安婦問題に出口はない
ただ、せっかくの「合意」だから、
日本政府は、毅然として、実行を要求すればいいのだ。


ここで、中国が口を出す。

中国外務省の陸慷報道局長は、
「日本の指導者ははるばる真珠湾に行き、
『慰霊』をしたが、大戦中に最も被害を受け、
傷付けられたアジアの隣国は無視している」
と安倍首相のハワイ訪問にケチをつけ、
今回の問題は日本と韓国の「2国間の問題だ」としたうえで、
「慰安婦問題は日本の軍国主義が起こした深刻で非人道的な罪だ」
と批判。
さらに、
「日本が歴史の重荷を下ろしたければ深く反省し、
具体的な行動を取る必要がある」
だと。

また「反省」か。
そもそも「2国間の問題」というなら、
口出しするんじゃない。

その中国だが、
トランプ次期大統領が
中国の「一つの中国」について疑念を表したことに敏感に反応している。

台湾の蔡英文総統が中米4カ国訪問のため
経由地のヒューストンに立ち寄り、
8日に共和党有力議員らと会談したことも
神経を逆撫でされているらしい。
中国は米国に対し、
「一つの中国」の原則に従い
蔡総統の入国や政府との公式協議を認めないよう要請していたそうだ。

環球時報は8日の論説で
「一つの中国の原則堅持は、
中国から米大統領に対する気まぐれな要請ではなく、
両国関係の維持とアジア太平洋地域の秩序尊重に向けた
米国大統領の義務である」
と主張し、
9日には、
「もしトランプ氏が大統領就任後に一つの中国政策を守らないなら、
中国国民は政府に報復を求めるだろう。
交渉の余地はない」
と警告した。

報復? 何を?
経済的報復?
中国の最大輸出国はアメリカだが、
その相手国に対して、報復?
不利益をこうむるのは中国だぞ。
それとも戦争でも起こそうというのか?

台湾(中華民国)は、
1971年10月25日の国際連合総会にて、
「中国」の代表権を喪失したが、
国家が国土、国民、主権の総合体だとしたら、
台湾はれっきとした主権国家だ。
それどころか、
GDP世界第22位であり、
外貨準備高は世界第3位を誇る。
中国がどんな原則を口にしようと、
「二つの中国」が存在して、
既に70年の歳月が経つ。
その現実を中国こそ直視すべきだろう。

この「一つの中国」について、
賢人・曽野綾子さんが、
産経新聞のコラムで、興味あることを書いているので、
以下に抜粋する。
               
私が感慨深いのは、
日本のマスコミと一部のオピニオンリーダーたちもまた、
長い間中国政府への気をかねて
「一つの中国」という考え方のお先棒を担いでいたことだ。

何十年も前から今日まで、
チャイニーズと呼ばれる人たちは、
中国本土にもおり、
台湾にもいて
別の政治的体制と思想を持っていた。
それは、彼ら自身の選択だった。
だから中国は現実として一つではない。
彼らチャイニーズたちが自分で選んだ結果だ、
と私は日付の記憶もないほど昔に、
署名のある小コラムで書いたのだ。
それは東京新聞に連載されるはずの記事だったのだが、
編集部は私の書いた内容は認められない、
と言って記事を引き下ろした。
「一つの中国」を標榜する中国の手前、
そのような意見は載せられないのだという。

東京新聞はなぜ唯々諾々として
中国政府のご機嫌を取り続けようとしたのか。
そして戦後の日本が保ち続けようとした、
個人の自由な言論を、
自らの手で閉めだそうとしたのか。
このマスコミの卑屈な姿勢は、
今もなお一部では続いている。

「中国が一つではないことは、
チャイニーズたちが自ら選んだことなんですよ」
と何年ぶりかで、
私は心の中で呟いた。
それを客観的に再確認する日がくるとは、
実のところ思ってもいなかった。

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それにしても作家を怒らせると恐い。
なにしろ、

あれ以来、
私の住む世界に東京新聞はない。

などと書かれるのだから。

せっかく日韓両国政府が苦労してこぎつけた「合意」を
国民レベルで反故にする。
そして、日韓関係は改善されず、
韓国の国際的信用は失墜する。
それもコリアンたちが自ら選んだこと
と書かれる日が来るのだろうか。





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