小説『特命指揮官』  書籍関係

[書籍紹介]

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東京・渋谷の井の頭通りの入り口にある新世界銀行で
行員と客を人質にした立てこもり事件が発生。
犯人はアロハ姿の男と目出し帽で顔を隠した2人の3人組。
警察との交渉窓口として犯人グループが指名したのは、
警視庁捜査二課刑事、郷間彩香だった。
全くの畑違いで、強行犯捜査とは無縁の立場だ。
戸惑いながらも現場に急行した彩香は、
交渉役及び現場の指揮官に任命される。
現場には、過去に確執のあったSIT(特殊捜査班)隊長の後藤、
本来捜査に介入しないはずの警察庁キャリアの吉田、
更にはSAT(特殊急襲部隊)の腕利きスナイパーの如月まで配置されていた。
犯人の指名の意図が分からないながら、
彩香は犯人と交渉を開始するが・・・・

やがて分かって来たのは、
主犯格が捜査二課にいた元刑事の國井であること、
銀行の地下貸金庫に重大な秘密のものが預けられており、
警察庁の会議室で見守る警察庁のナンバー2と3の
警察庁次長の百瀬と官房長の佐伯、
それに新世界銀行の寺内会長、
救民党の重鎮、伊藤らも事件に関わりがあるらしい。
その会議室には、彩香に特命指揮官を任命した
野呂刑事部長も同席している。

事件は井の頭通り入れ口の銀行と
警察庁の会議室を舞台に展開し、
予想外の進展を迎える。

主人公・郷間彩香の造形が面白い。
警視庁捜査二課主任代理で階級は警部補。
年齢は32歳、容姿は決して悪くないが男運が無いと嘆いている。
交通課→地域課→捜査三課を経て現職と
まずまずの出世だが、
その代わりに女の幸せを捨てたと言われている。
刑事であった亡き父から
「血の通ったコミュニケーションがすべてを変える」
との薫陶を受けた。
贈収賄や詐欺、横領などの知能犯罪を追っており、
数字に手がかりを求めて電卓ばかり叩いているため、
「電卓女」と呼ばれている。

SIT隊長の後藤は、
口が悪くセクハラ、パワハラを問わない言動をとるが、
職務には熱い。

吉田は、捜査に介入するはずのない立場でありながら、
渋谷の現場で彩香につきまとい、
終止謎の行動をとる。
彩香は内心吉田に惹かれている。

彩香の上司に当たる野呂刑事部長は
彩香の父親代わりで、
子供の頃から彩香を知っており、暖かく見守る。

人質の一人となる丸山は、
伊藤のスキャンダル報道でミソを付け、
今はつまらない取材をメシの種にしている。
人質になったことで、起死回生の記事を書こうとする。

第1章は発端、
第2章は進展、
そして第3章は解明で、
第3章で様々な謎が明らかになり、
真相が判明する。
一つ驚きの展開が待っているが、
海千山千のミステリー読みには、容易に想像がつく。
丸山の活用や
「電卓女」の特技がプロフェッショナルとして
生かされていない不満が残る。

伊藤らの陰謀や
貸金庫の秘密などの
真相については、やや無理あり、の感。
ただ、文章は達者で、読ませる。

梶永正史によるこの本は、
第12回「このミステリーがすごい! 」大賞の大賞受賞作。
先に紹介した八木圭一の「一千兆円の身代金」との大賞ダブル受賞だったが、
こちらの方が面白い。
応募時のタイトルは「真相を暴くための面倒な手続き」という
選考委員に「こりゃ、駄目だ」と先入観を持たせるものだったが、
入選後、タイトルを変えて出版。
当然。

2016年10月22日、
松下奈緒の主演により「特命指揮官郷間彩香」のタイトルで
フジテレビ「土曜プレミアム」でドラマ化された。

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いろいろ改変が加えられたのが逆効果の上、
俳優の演技も陳腐で、
つまらなかった。





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