映画『ニュースの真相』  映画関係

〔映画紹介〕

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アメリカのテレビ報道を舞台にした実録ドラマ

主人公はCBSニュースのプロデューサー、メアリー・ケイプス。
キャリア20年のベテランで、
伝説的なジャーナリストのダン・ラザーが司会を務める報道番組
「60ミニッツU」で
イラクの刑務所での捕虜虐待事件を
スクープした敏腕プロデューサーだった。

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「60ミニッツU」・・CBSの看板報道番組「60ミニッツ」の姉妹番組。
           「60ミニッツ」の放送開始は1968年、
           「60ミニッツU」は1999年放送開始。
           「60ミニッツ」が日曜日放送に対して、
           「U」は水曜日の放送。
           2005年9月に放送を終了)

ジョージ・W・ブッシュ大統領が再選を目指していた2004年、
メアリー・メイプスは
ブッシュ大統領の軍歴詐称疑惑をスクープする。
11月の大統領選挙を前にした9月8日の時点で。
報道内容は大反響を呼ぶ。

ブッシュの軍歴詐称疑惑は、次のような内容だった。
ブッシュがまだ20代だった1968年(番組当時の36年前)5月に
6年契約でテキサス空軍州兵に入隊したが、
72年春に健康診断を拒否して処分を受けた後、
アラバマに転属。
それから1年間、軍務に就いた形跡はなく、
選挙キャンペーンに参加、
73年9月に9カ月早く早期除隊した。
州兵に入隊すれば、ベトナムに行かなくてすむが、
その頃、ブッシュ氏の父親は、
地元テキサスでは既に有力政治家だった。
ブッシュ大統領に対する疑惑は、
父親の七光りで特別扱いされ、
ベトナム戦争への従軍を逃れるために
テキサス州兵空軍にコネで入隊したのではというもの。
また、職務怠慢疑惑も濃厚だった。

この疑惑を裏付けるような証拠の一つを「60ミニッツ」取材班が入手した。
「キリアン文書」と呼ばれるタイプライター文書のコピーで、
ブッシュ氏の当時の上官であるジェリー・キリアン大佐(その時点で故人)は、
「兵役の免除を上の力を借りて要望した」
「以前の上官からブッシュの評価をよく見せるよう圧力を受けている」
「だが評価対象となる期間、ブッシュはここにいなかった」
「アラバマの航空隊からも何も報告を受けていない」
「ブッシュを評価はしない」
「一時的にパイロットの資格停止処分を受けたのは、
 身体検査を受けなかったからだけではなく、
 その他の面でも空軍の基準に達していないからだ」
などと記されていた。

再選を狙うブッシュ大統領には、
厳しい内容だった。
裏から手を回し兵役から逃れようとした人間であるとのレッテルを貼られれば、
米軍の総指揮官を兼務する大統領にふさわしくないとみなされるからだ。

文書を持ち込んできたのは、
ビル・バーケットという退役軍人で、
熱狂的な「反ブッシュ」の人物。
文書の信用性には疑問がある。

メアリーは、キリアンの当時の上官だった
ロバート・ホッジス将軍から裏を取ろうとし、
18回電話をかけ、ようやく19回目に本人と話すことに成功。
電話口で読み上げるキリアン文書に覚えがあるかと訊くと、
ホッジスの回答は「あるとも」だった。

これで「裏がとれた」と判断したメアリーは
上司に相談し「60ミニッツU」は2004年9月8日、放送された。

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報道直後、文書の信憑性に疑問を持つ有力ブログが掲載された。
キリアン文書は、
フォント(活字の形)、文字間の均等割り、左右揃えなどから見て、
バソコンのワードを使って作製されたものだというのだ。
1972年といえばタイプライターが主流で、
パソコンは使っていなかったはずだ、と。
また、「187th」という単語の「th」部分が小さく表記されている、
という指摘もあった。
現在のワープロソフトを使えば
「何番目」ということを意味する「th」は、
自動的に小さく変換される。
ところが70年代に使われていたほとんどすべてのタイプライターは、
1つの文字セットしか搭載していなかった関係から、
「th」を通常サイズで表記することが一般的だったのだ。

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この様な指摘に対してメアリーたちは反証に狂奔する。
文書提供者の退役軍人から改めて訊くと、
その入手経路は信憑性の欠けるものだった。

文書提供者のインタビューでは、
退役軍人に「ウソをついた」と言わせようと、
メアリーたちは
質問するダンにメモを渡し続ける。

その意図的をインタヴューの後、
退役軍人の妻から
厳しい批判を受けるシーンはなかなかだ。

しかも、裏取りの決め手、ホッジス将軍が
「キリアン文書は偽物」と言い出して万事休す。

そして9月20日。
ダン・ラダー氏は「これらの文書を引き続き
ジャーナリスティックに保証する自信がなくなった。
(中略)判断ミスを犯してしまった。
申し訳なく思っている」との声明を発表し、謝罪した。

ラダー氏は、メーンキャスターを降板することも明らかにし、
番組も終了。
内部調査委員会が設置され、
報道を担当したメアリー・メープスは解雇され、
CBSのニュース部門担当上級副社長、
同番組のエグゼクティブ・プロデュサー、
シニア・プロデューサーたちは
責任を取って辞任することとなった。

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ただし、調査委員会に出席したメアリーは、
「ウォーターゲート事件の情報提供者ディープソロートの
信頼性はどうか。
今度の件で、これほど内部に通じた人物が
パソコンで文書を作るなどという失敗をするだろうか」
と疑問を呈する。
つまり、「自分ははめられた」と言いたいのだ。

ブッシュは再選された。

というわけで、「60ミニッツU」側の敗北だった。

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この経過は、報道機関が誤報した時
どのような態度を取るか

という興味深い実例を示している。

これは私自身がBSE騒動で
報道陣と接触して感じたことだが、
3点ほど問題がある。

まず1点目。
取材の時には、あらかじめストーリーが出来ており、
それに沿うような取材がされる。
情報の取捨選択はストーリーによって歪曲される。
場合によっては、イタビューで、
そういう方向に話を強引に持っていこうとする。
私も「ちょっとカメラを止めて。
どうしてそういうことを無理に言わせようとするのか」
と言ったことが再三だった。

2点目。
一度報道した内容に間違いが判明した時、
決してそのことを認めようとしない
断固として正当であることを主張し、へ理屈をこねる。
その潔くない姿勢は何度も見た。
大体報道関係者は
事件が起きてからのにわか勉強で知識が足りなく、
間違いを犯しやすいことを肝に命ずべきだ。

メアリー・メイプスが陥った罠もまさにそれで、
ブッシュの軍歴詐称の証拠をかき集め、
一定の方向にまとめてしまう。
重要な裏取りを
安易な電話口の読み上げで済まそうとする。
署名についても専門家の判断は疑問を呈しているにもかかわらず、
それを報道してしまう。

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3点目。
「正義は我にあり」という良く言えば自負心、
悪く言えばおごりが判断を誤らせる。
そして、「権力は悪いものであり、報道は正しい」という姿勢で、
権力者に責任転嫁しやすい。

これは、このブログで紹介した
「殺人教師事件」
「いじめ自殺事件」
の報道が、
その罠に落ちた事例である。

その紹介ブログは、↓をクリック。

http://star.ap.teacup.com/applet/shokuniku/20160421/archive

http://star.ap.teacup.com/applet/shokuniku/20160718/archive

監督は「ゾディアック」などの脚本家ジェームズ・ヴァンダービルト
メアリーはケイト・ブランシェット

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ダンをロバート・レッドフォードが演じる。

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この二人の演技が大変魅力的で、
物語を引っ張る。
かつて「大統領の陰謀」で、
ロバート・レッドフォードが記者を演じ、
情報提供者「ディープスロート」と秘密に会って、
ニクソンを追い詰めていく側を演じたことを知っているものにとっては、
この配役は妙味といえる。

また、メアリーとダグの関係も、
父親とのことで心に傷を持つメアリーにとって
父親のような存在であったこともよく表現されている。
メアリーの夫の存在も味を添える。

展開はスピーディーでていねい。
濃厚な人間ドラマで、至福の2時間だった。

5段階評価の「4」

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/C4L9IhmE4IM

タグ: 映画




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