『悲しみのイレーヌ』  書籍関係

〔書籍紹介〕

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以前、「その女アレックス」という本を紹介↓したが、

http://star.ap.teacup.com/applet/shokuniku/20150717/archive
          
その本の主人公であるカミーユ・ヴェルヴェーン警部が初登場したのが、この本。
つまり、「その女アレックス」の前日談に当たる。
翻訳の順序は行き違いになったが、
著者ピエール・ルメートルのデビュー作でもある。
デビュー作にして、
コニャック・ミステリ大賞ほか
4つの賞を受賞。

実は、第2作「その女アレックス」を読むと、
本作のネタバレになるので、
「その女アレックス」を未読の方は、
「悲しみのイレーヌ」を先に読むことをお勧めする。
ついでながら、
「悲しみのイレーヌ」という題名そのものがネタバレで、
原題は「Travail Soigne」。
「入念な仕事」とか「丁寧な仕事」という意味。
邦題を付けるのには配慮が必要だと思うが。

有名な画家を母に持ち、
自らも絵心があって、
尋問の最中に、
容疑者の顔をメモに描くクセのある警部カミーユ・ヴェルヴェーン。
パリ警視庁犯罪捜査部部長を務める優秀な警察官だが、
著しい特色がある。
身長が145センチしかないのだ。
その上、人から見下ろされるのが大嫌いときている。
しかし、40歳になって10歳年下で美人の奥さんを得て、
近く子供の出産を控えている。

ある日、カミーユの下に、
部下のルイから連絡が入る。
「こんなのは見たことがない」というルイの言葉に
現場に駆けつけてみると、
賃貸ロフトは血の海で、
2人の女性が体をばらばらに切り刻まれていた。
酸で下腹部に穴をあけられ、
骨が折られ、乳房は切り取られ
一人の頭は壁に釘打ち機で頬を貫通して打ちつけられていた。
そして血文字で「わたしは戻った」と書かれ、
血の指紋までスタンプで押してある。

被害者はエヴリン・ルーヴレとジョジアーヌ・ドゥブフという娼婦。
3Pのために現場に赴き、殺されたようだ。

現場には全く犯人の手掛かりがない。
新品の家具や謎のビデオテープなど作為的なものがある。
そしてわざわざ指紋のスタンプ。
スタンプの指紋は
2年ほど前に起きた殺人事件で採取されたものと一致した。

その事件も被害者は売春婦で、
胴体を真っ二つに切られ、
太腿の肉がえぐられて
不思議なことに
血はきれいに洗浄され
髪はなぜか死後に洗ってある。
さらに内臓がごっそり無くなっていた。
口が耳元まで裂けてまるで笑っているようだった。

ある朝、カミーユは、
耳まで切り裂かれた被害者の顔が
何か見覚えがあることに気づいた。
そして・・・

と、書けるのはここまで。
数々の事件が、
あるモノを踏襲される形で進行していくのだが、
それは、本書を読んで確かめて下さい。

「その女アレックス」は、
第一部〜第三部は章が進むたびに
物語が意外な方向に展開するが、
本作も長い第一部と短い第二部の間で、
意表をつく展開がある。
「そ、そうなのか」
というほど驚き、前の方のページに戻って確かめたりする。

そして、後はページをめくるのがもどかしいほど。

他に楽しみは、
カミーユの部下が魅力的に描かれていること。
若く金持ちでその上ハンサムの優秀な刑事のルイ、
極端なケチで人から物をもらうのが大好きで、
だが粘り強い捜査で定評あるアルマン、
美男子だが、浪費家であるのが欠点のマレヴァル、
そして、カミーユの上司に当たるル・グエン警視。

「フランス人の半分は作家のなりそこないで、
残りの半分は画家のなりそこないなんだ」
などというセリフも出てくる。

ジェイムズ・エルロイ「ブラック・ダリア」
ブレット・イーストン・エリス「アメリカン・サイコ」
などを既読の方には
なおいっそうの楽しみがある。





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