『妖櫻忌』  書籍関係

〔書籍紹介〕

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大作家・大原鳳月(おおはら・ほうげつ)が亡くなる。
気鋭の演出家と一緒にいた時、
自宅の茶室から出た火事に巻き込まれたのだ。
鳳月には優秀な秘書・若桑律子がおり、
律子は大学で期待される研究者だったが、
その職を捨てて鳳月の秘書となり、
資料集めから原稿の清書まで引き受けていた。

アテナ書房の堀口は
鳳月の連載を担当しており、
鳳月が死んだことにより、
連載が未完となったことを恐れるが、
葬儀から帰った時、
鳳月からの残りの原稿が届いていた。
まるで自分の死を予期していたかのように。

原稿の校了が終わる頃、
編集部を若桑律子が訪ねて来る。
小説を書いたというのだ。
読んでみると、
鳳月らしき人物が登場する作家の人生を描いたものだった。
堀口はこの人物を大原鳳月に特定した小説に変え、
「独占手記 我が師・大原鳳月」との題名にして
書き直すことを要請する。

書き直した原稿は
アテナ書房の文芸誌の大原鳳月追悼特集号の巻頭を飾り、増刷となった。
2回目の原稿を受け取った時、
堀口は違和感を抱く。
律子の文章が鳳月のものと似ているのだ。
読ませた同僚も同じ感想を抱く。
もしかして、鳳月には未刊の原稿があり、
それを律子が書き写しているだけではないのか、
と堀口は疑惑を持つ。
そして、回を進むにつれて、
律子の持って来る原稿は、
まるで鳳月が書いたものとしか思えないほどに変化して来る・・・

というわけで、
亡くなった大作家とその秘書の
隠された秘密が次第に明らかになって来る。
サスペンスというより、
先に進むほどにホラーの色彩が強くなる。
「レクイエム」作曲の途中死んだモーツアルトと
後半部分を作曲したジェスマイヤーの話も出て来る。
作家という特殊な職業、
作家の書くという魂の具現、
更に「女」であることの宿業のようなものなど、
重層的な内容で、
やはり篠田節子、只者ではないと思わせる小説だった。

一度刊行され、文庫に収録されたものだが、
それでも校正漏れが残る。
17ページ3行目、
主人公の「堀口」となるべきところが、
「堀内が頭を下げても、律子は小さくうなずくだけで〜」
と「堀内」と書かれている。
沢山の人の目を通りながら、
誰も気づかなかったのだろうか。





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