『透明カメレオン』  書籍関係

〔書籍紹介〕

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主人公の桐畑恭太郎はラジオのパーソナリティ。
毎晩「1UPライフ」という3時間番組を受け持っている。
番組のホームページで姿をさらさないのは、
魅力的な声に反して、
容貌がちんちくりんで冴えないからだ。

という設定は面白い。

毎晩深夜1時に放送が終了するので、
うらぶれたビルの4階にある
「if」という小さなバーで始発まで時間をつぶす。
そこは一癖ありそうな輝美(てるみ)ママと
美形のオカマのレイカ、
妊娠中のキャバクラ嬢百花(ももか)、
害虫駆除の仕事をしている痔持ちの石之崎、
仏壇屋の重松といった常連がたむろしている。

ある夜、そのバーに突然入ってきた女性が
「コースター」という謎の言葉を残して消え去る。
三梶恵というその女性は、やがて「if」の常連になる。
恭太郎の番組のファンだという恵に対して
容貌を気にした恭太郎がレイカと入れ替わるなどという一幕があり、
だましたお詫びとして、
恵のある計画に協力することになる。
それは、恵の父親を自殺に追い込んだ
違法の産業廃棄物業者をこらしめることだった・・・

というわけで、
恵の計画に恭太郎たちが付き合うことになるのだが、
その計画が何とも偶然に依存するもので、
全然リアリティがない。
おいおい、それは無理だろう、という感じの連続。
話も「if」を中心に展開して、なかなか広がらない。
その上、「if」の常連たちがあまり魅力的とは言えない。
容貌に問題ありで声だけ素晴らしいという恭太郎の設定が生きない。
つまり、物語が弾まないのだ。
「月と蟹」で直木賞を取った道尾秀介の作品だが、
ちょっと今までの路線と違い、
コミカルな要素を取り入れたのが裏目に出た感じだ。

最後の奥多摩での産廃業者との対決はさすがに読ませるが、
「if」のメンバーの集結の段取りに無理がある。
「if」のメンバーが現場に行かなかったら、
この話、どうなっていたのか。

番組の中での恭太郎の話の真実も
最後に明かされるが、
「えっ、そんな」という感じ。
恭太郎自身の告白は意外だが、
それも相当無理がある。
無理矢理の不幸話には読者は共感しない。

そういうわけで、
道尾秀介にしては・・・
という残念な作品だった。






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