『「三面楚歌」にようやく気づいた韓国』  書籍関係

〔書籍紹介〕

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著者の鈴置高史氏は、
日本経済新聞社編集委員。
87年〜92年ソウル特派員をつとめる。
著書に「中国に立ち向かう日本、つき従う韓国」
「中国という蟻地獄に落ちた韓国」
「『踏み絵』迫る米国 『逆切れ』する韓国」
など、中国、韓国を扱ったものが多い。

この本は、
韓国の米国離れによる「二股外交」
更に「離米従中」への転換を扱ったものである。

「三面楚歌」とは、
北朝鮮、日本に加え、
米国からもにらまれた状態を示す。

要するに、韓国の中国への傾斜によってもたらされた状況を示す。

中国の力が大きくなるにつれ、
韓国には「米国離れ」「中国重視政策」を唱える人が多くなった。
元々、東アジアの防衛線は、
米国〜日本〜韓国の結束で保たれるものだった。
韓国の中国への傾斜は
その均衡を破るものとなる。

「韓国人と会うのはいやだ。疲れる」
とこぼす米国の外交関係者が増えた。
2013年に朴槿恵政権がスタートして以降の話だ。
日韓関係にしろ、
米国との交渉事にしろ、
韓国の主張をまくしたてるだけで
一切、人の話を聞かない。
「何であんなに強気になったのだろう?」
と首を傾げ、
日本の専門家に問う人もいる。
答えは簡単だ。
韓国人は
「言うことを聞いてくれないなら、
中国側に行くと米国を脅せばいい」
と考え始めたからだ。

米中を天秤にかけ、
利を得ようとする韓国の真意を知って、
「生意気な」と怒りだす米国人もいる。
「韓国は米国が日本から解放して造った国だ。
朝鮮戦争という存亡の危機も
米国が救った」
との意識が残っているためだろう。

とあるとおり、
韓国が米国から離反するなどと、
米国の世界戦略、
特に西太平洋戦略では考えられないことだった。

朝鮮戦争では、
北に攻められて、
釜山だけを残して占領された。
それを救ったのは、
マッカーサー率いる連合軍の仁川上陸作戦だ。
南軍は北に攻め入り、
鴨緑江まで至った。
ここで戦局が一転。
鴨緑江を越えて中国軍が進軍して来たからだ。
このように、韓国の国土は中国軍の蹂躙を受けた。
その過去を忘れ、
中国にすり寄るなどということは米国には考えられないことだった。

米国の有力なアジア専門家は、
「このままでは中国の属国になるぞ。
それでいいのだな」
と韓国を叱ったのだが、
効き目はどうか。
今の朴槿恵大統領の中国へのすり寄りは止まっていない。

韓国の米国離れを決定的に印象付けたのが、
米国と約束したミサイル防衛(MD)導入の先延ばしだ。
中国が反対しているからだ。
米国は「韓国が導入しないなら、
自前でTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)を配備する」と宣言した。
また、韓国は中国と連携して、
日本の集団的自衛権の行使容認を批判した。
日本の集団的自衛権は韓国にもプラスのはずなのに、
中国に配慮して、あるいは中国の言いなりになって反対したのである。

この根底には韓国伝統の事大主義がある。
事大主義とは、
勢力の大きな者ニ 着き従って自分の存立を維持すること。
中国の影響力が小さい間は良かったが、
中国が強大になるにつれ、
中国への傾斜を強めたのである。

本書は、鈴置氏らに質問して答える形式で進む。
THAADについては、このように書く。

──もし韓国がTHAAD配備に公式に反対したら?
鈴置 それを機に韓国を見限るかもしれません。
直ちに同盟打ち切りとはならないにしろ、
在韓米軍の大幅削減や撤収に動く可能性があります。
北朝鮮や中国の弾道ミサイルから
我が身を守るTHAADを持つな、
と韓国に言われることを意味しますから。
「それなら自国の防衛は自分でやれ」というわけです。

そもそも在韓米軍の存在の意味そのものが米韓で食い違っている、
と筆者は指摘する。
韓国は対北朝鮮だが、
米国は対中国。
その認識の違いは大きく、
そこから齟齬が生ずるというのである。

──韓国人は中国には「NO」と言えないのに、
米国には言えるのですね。
鈴置 中国人が怖いからです。
何をしてくるか分からない国だからです。
その点、米国人や日本人は相当に怒っても、
滅茶苦茶なイジメはしてこない、
と思われている。
──韓国はどうなるのでしょう。
鈴置 分かりません。
韓国人自身だって分からないのですから。

「韓国異質論」についての、
京都府立大学の岡本隆司准教授との対話。

岡本 「中国と日本」「韓国と日本」は、
恐らく「フランスと英国」以上に違います。
鈴置 韓国の異質性に関しては
少しずつですが、
世界で認識され始めたと思います。
これまで韓国は「中華帝国の一部だった国」ではなく、
「第2の日本」と見られてきました。
冷戦期には極めつけの反共国家で、
西側に属していたからです。
冷戦末期の1987年には
民主国家群にも滑り込みました。
西洋人──ことに米国人にとっては、
自分をモデルに頑張る可愛らしい国に映っていたのです。
ただ中国の台頭とともに、
アジア専門家の間では
韓国に対する違和感が生まれてきました。
外交的に米国から離れ、
独裁国家の中国に従う。
そのうえで平気で言論弾圧し、
法治には関心を持たない。
どうやら、韓国は西欧的な国家を目指していないようだ・・・。
(中略)
130年前に書かれた、
福沢諭吉の脱亜論が今、注目されています。
日本人が韓国から「異質さ」を感じ取ったからと思います。
福沢は当時から「韓国人は西洋型の国家を作らない」
と読み切っていたのです。
(中略)
岡本 中韓と日本は現在、摩擦を繰り返しています。
安倍晋三と習近平・朴槿恵との仲の悪さが
それを代表し、また助長してもいます。
けれどもその摩擦は、
決して政権の個性によるものだけではないと思います。
歴史的にずっと潜んでいた「違い」が今、
先鋭に浮かび上がってきたと見るべきです。

卓見といえよう。

「中立化」については、次のように述べる。

鈴置 ご承知のように、
中国は韓国に対し、
「米国のTHAAD配備は認めるな」
とおおっぴらに圧力をかけています。
一方、米国は
「中国のアジア支配の武器である
AIIBに加盟したら、
米韓関係に重大な影響が出るぞ」
と脅しました。
米中の間で綱渡りを余儀なくされる中、
「板挟みの苦しみから逃れるためには
中立化しかない」
と韓国人は考え始めたのです。
中立化すれば
米軍は撤収するのでTHAAD配備計画も当然なくなる。
米国に守ってもらうのをやめれば、
AIIBに加盟しても怒られない──というわけです。

この本が出たのは今年の3月。
韓国はその後、AIIBに加盟した。
存在感を発揮できると思ったら、
出資国ランク5位で、
米国に背中を向けて中国に恭順の姿勢を示したにしては
冷遇されている。

岡本 中国は韓国に同盟を結べとも要求し始めたのでしたね。
歴史的に中国への恐怖心が骨がらみになっている韓国は、
中国の要求を無視することは難しい。
(中略)
鈴置 韓国が米中双方と同盟を結ぶことが可能なのか、
誰しも首を傾げます。
しかし仮に実現したら──
制度上、韓国は米中どちらをも敵としない、
つまり中立を明確にすることになります。
一方、韓国が「米中双方と同盟を結ぶなんて、非現実だ」
と抗弁したら、
「だったら、米軍を撤収しろ。
そうしてこそ初めて米中が平等になる」
と中国は言い出すでしょう。
中韓同盟を実現できなくても、
米韓同盟を解体させればいいわけです。
中国とすれば。
それこそ本当の中立化ですから。
また、中韓の政府協議の場で
中国の役人が「朝貢外交を復活せよ」──
つまり「属国に戻れ」といい始めています。
これも中立化要求の一種です。

──いずれ韓国政府も「中立化」を言い出すのでしょうか。
岡本 韓国にとって最も有利なのが、
現在の二股外交を続けることです。
米中の間で曖昧な立場を貫ければ、
双方から多くの利を得られると期待できます。
フリーハンドを維持しプライドも保てます。
だから韓国は、ぎりぎりまで二股を貫くでしょうが、
どうしようもなくなる時が来るかもしれません。
その時はどちらかの陣営に属すると立場を鮮明にするか、
あるいは周辺国に対して
法的な「中立化」を認めてくれと言い出すか──
の決断を迫られることになります。

最終章の最後の冒頭には、
次のように書いてある。

2014年春、
朴槿恵政権がスタートして1年経った頃の話だ。
日本の指導層の一人から
「韓国がこの政権である間に、
日本がやっておくべきことは何か」と聞かれた。
上品な聞き方だが、要は
「離米従中に突き進む指導者が韓国に登場した。
これをどう生かすか」との質問だった。
外交音痴の日本でさえそう考えるのだから、
普通の国はもっと露骨に朴槿恵外交を利用するだろうな、
と思ったものだ。
千載一遇の機会とばかりに、
それを生かそうとするのは中国だ。
外交常識を超えて、
自分にすり寄ってくれる政権が韓国に登場したのだ。
それも中国が周辺国との激しい摩擦で友人を減らしている時に、である。

私はこのブログでもたびたび朴槿恵大統領のことを
史上最低の愚かな大統領と呼ぶが、
韓国解放、朝鮮戦争という二つの恩を忘れた政権に未来はない。
個人的には、
韓国が中国の属国になってもかまわないし、
それを見てみたいという意地悪な気持ちもあるが、
そうなればなったで、
中国の尖兵となって
日本に無理難題をふっかけてきそうで、
それは避けたい気もする。

しかし、世界の平和のためにも、
韓国の動向からは目を離してはならない、
と思う。





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