『村上海賊の娘』  

今日は午後、
クレジットカードの会社に次々電話をかけて、
解約を申し出。
使わないカードで年会費だけ支払っていたものの整理をした次第。

「当社のカードに何か不都合がありましたでしょうか」
と訊かれたのが2社。
「ああ、そんなことはありません。
ただ、使わないので。
老い先も短いので、
そろそろ整理しようかと思いまして」
と安心させてやります。

結局、マイルを貯めているユナイテッドのカード、
もう20年以上使っている信用度抜群のカード、
旅行代金の支払いで3%割引になるカード、
舞浜のイクスピアリのカード(駐車料金が2時間無料に)、
TOHOシネマズのマイレージ兼用カード、
それに青山のカードで年会費分クーポンが付いて来るカード
の5社だけが残りました。

数年前に銀行口座も整理して、
今は4行を残すのみ。
徐々に終末に向かいつつあります。


〔書籍紹介〕

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天正4年(1576年)の木津川合戦(第1次)を題材とした歴史小説。
木津川合戦とは、
織田信長軍の攻囲を受けた本願寺への
兵糧搬入を目的とした
毛利水軍・小早川水軍・村上水軍を中心とする
瀬戸内の水軍戦力と、
それを阻止せんとする織田方の水軍戦力が
大阪湾木津川河口で激突した戦のこと。
毛利方の水軍の使用する焙烙玉、
雑賀衆の使用する焙烙火矢の前に
織田方の水軍は壊滅的な打撃を受け、
本願寺への兵糧搬入という当初の目的を
毛利方が果たす結果となった。
交戦勢力は約1000隻程度と言われる。

主人公は村上景(むらかみ・きょう)。
瀬戸内の大半を勢力下におさめ、
村上海賊を最盛期に導いた村上武吉の娘。
20歳だが、嫁のもらい手がない。
というのは、醜女だったから。
と言っても、
目鼻立ちがはっきりして彫りが深い、欧米人的な顔で、
当時の美女はおたふくなので、
醜女とみなされていた。
まあ、ローラみたいな顔だちの女性が
戦国時代にいたら、
醜女に見えたと思えばいい。

嫁のもらい手がない、もう一つの理由は、
男よりも男まさりな性格。
父の配下の男達に混じって海に出て
船を襲うという海賊働きも行い、
その体躯で誰よりも強い。
本人は海賊(できれば美男の)に嫁いで、
夫と一緒に戦に出ることを夢見ている。

本願寺から兵糧入れの依頼をされた毛利家は、
村上海賊に力を貸してくれるよう依頼する。
村上武吉への使者に立つのは、
小早川隆景の海賊衆(警固衆)を束ねる乃美宗勝(のみ・むねかつ)。
もう1人は、毛利輝元直属の警固衆(水軍)の長・児玉就英(こだま・なりひで)。
武吉は児玉就英が景を嫁にもらってくれるなら協力しても良いと答え、
就英は怒って帰るが、
後で、就英は毛利家のために
景を妻とすることを承知させられてしまう。

本願寺へ船で兵糧を運ぼうとする一向宗の信者達が
他の海賊に船を乗っ取られてしまう。
景は海賊を倒し、信者の源爺留吉少年に出会う。
源爺から自分たちを本願寺まで送ってほしいと頼まれた景は、
信者達を廻船に乗せて、
大坂本願寺へ向けて出航する。

源爺たちを本願寺方の木津砦に送り届けた後、
景は、織田方の天王寺砦に入り、
真鍋海賊の首領、真鍋七五三兵衛(まなべ・しめのひょうえ)に出会い、
泉州侍達に同行して、織田軍vs本願寺の戦を観戦する。

木津川砦の責任者である一向宗の下間頼龍(しもつま・らいりゅう)が、
信者達をもっと戦わせるために
「進めば極楽往生、退かば無間地獄」
という旗を立てる。
信者達を騙していると、景は怒り、
留吉を救おうと木津砦に向かう。
しかし、留吉に
「自分達は脅されて戦っているのではない。
既に成仏を約束され、
そのお礼に御仏の敵と戦うために来たのだ」
と罵られる。
景は七五三兵衛から、
男達は皆、家の存続のため非情となって戦っているのに、
ただ戦に憧れているだけの甘っちょろい女だ、と断定される。
傷心を抱えて、島に戻った景は、
「もう戦はいやだ」と
女中達と遊び暮らす生活を送る。

村上水軍は10万石の米を積んで、
本願寺に立てこもる信徒を救うために大阪に向かう。
しかし、武吉は上杉謙信が参戦しない限り、
戦端を開かないつもりで、
淡路島近辺で待機するのみ。
そのことを知った景は、
留吉を救いたいという強い意志に突き動かされ、
再び戦場に向かう。
兄・元吉が率いる村上海賊達が
引き返すことを決めた夜、
景は一人で抜け出し
雑賀孫市の助けを借りて、
七五三兵衛が率いる真鍋海賊に戦いを挑む。

しかし、島に帰る途中、
「村上海賊でただ一人、
真鍋海賊に戦を仕掛けた者がいる。
それが、景姫である!」
と聞いた村上海賊達は、
一人残らず咆哮をあげ、
命令に反して船の向きを変えて
大阪へ向かう。

その後は、村上海賊と真鍋海賊の死闘が延々と描かれる。

登場人物は、
顕如(けんにょ)
下間頼龍
村上吉継(むらかみ・よしつぐ)
村上吉充(よしみつ)
村上景親(かげちか)
乃美宗勝
児玉就英
眞鍋七五三兵衛
眞鍋道夢斎(まなべ・どうむさい)
雑賀(鈴木)孫市
など、実在の人物。
その背後に織田信長が控える。

その信長登場のシーンが印象的だ。

騎馬が、大将の着る陣羽織を身にまとっていたからではない。
面を伏せているゆえ、
その容貌も知れなかった。
にもかかわらず、
鳴りを潜めたのは、
この武者の発する猛気が尋常一様のものではなかったからだ。
景にもそれが分かった。
男の猛気で、
その周囲だけ空気が歪んだかと思うほどである。
自らの正面で男が馬を止めたのを認めると、
景は思わず息を止めた。
この勝気な女が戦慄していた。
なぜなのか、景自身にも分からない。
どうしようもないほどに身が竦み、
肌は粟立ち、
総身のうぶ毛までが逆立った。
横にいる景親にも男の異様さが伝わっているのだろう、
これも傍目にも分かるほどに身を震わせていた。
すでに景は、騎馬武者の正体に気付いている。
「あれが──」
絞り出すように言ったが、
二の句が継げない。
あれほど気を揉んでいた
源爺たちのことさえ頭から離れ、
恐れだけが心を占めていた。
「──織田信長か」
やっと口を開いた。

登場人物が、みんな男前、というのが特色で、
海賊のメンタリティがよく表れている。
男前だから、
意気に感ずる
だから、景が一人で戦いに向かったことを聞くと、
船を反転して戦場に向かう、
などということが起こるのだ。

当時は人間の命が今よりもずっと軽んじられていたことが分かる。
というか、「如何に生きるか」よりも「如何に死ぬか」が重要だったのだ。
だから、怖じ気づいて戦線を離脱して、
その後、後悔と慙愧の念で生きるよりは
潔く戦って死ぬ方を選ぶ。
そして、一向宗の信者たちにとっては、
それが極楽浄土での成仏だった。

血湧き肉躍る、という表現がぴったりな部分が2度ある。

一度は、
戦の現実に打ちのめされて、
島に戻って嫁入りの支度をしていた景が
父親の口から
出陣はしたが、上杉謙信が軍を動かすまでは戦端を開かない、
多分上杉は出陣しないだろう、
という話を聞いて、
それでは本願寺の信徒が犬死にになる、
と奮起して船を出し、
大阪に向かうところ。

「誰も彼ものか自分のためだ。
七五三兵衛も、雑賀の孫市もそうだった。
兄上もそうだ。
皆、自分のためにしか戦っておらなんだ」
「戦や武家とはそういうものだ。
自らに利がなければ戦う者などおらぬ」
「オレが馬鹿だった。
難波に行ってそのことがよく分かった。
でもな父上」
景はきっと顔を上げた。
「留吉は違う。
源も違った。
門徒の奴らだけが違うんだ。
あいつらだけは他人のために戦おうとしているんだ」
「それは違う」
武吉は娘と同じ巨眼を剥いた。
「門徒どもは後生のために戦うしおるに過ぎぬ。
自らのためにしておることじゃ」
「そうじゃない」
景は激しくかぶりを振った。
「瀬戸内を出たとき、
あいつらは極楽往生がすでに決まっていると信じていた。
それでも弥陀の御恩に報いるために、
行かぬでもいい戦いに行って命を捧げたんだ。
戦場では退けば地獄だと脅され、
話が違うと知っても、
あいつらは仏の恩義を忘れようとはしなかった。
オレは見事だと思った。
立派だと思った。
オレはそういう立派な奴らを助けてやりたい。
オレはあいつらのために戦ってやりたい」

そして結局武吉は景を送り出し、
「俺の子だなあ」と笑うのである。

そしてもう一つは、
帰国のために西に向かって船を進める船団が
景が戦場に向かったと知って
方向転換する場面。

「しおらしく女子が戦うに、
これを見捨てる男など、
村上海賊には
一人たりともおりはせぬ」
「貴様、何をする気じゃ」
「兄上、覚悟なされよ。
戦に参りまする」
言うや、景親は全軍に届けとばかりに、
「者ども聞け」と
大音声に叫んだ。
「我が能島村上の者が一人、
敵の軍勢に戦を仕掛けた。
知らぬとあれば心して聞け。
その者こそ、
能島の主、
村上武吉の娘にして我が姉、
景姫である」
船団は静まり返っている。
船の舳先は水を切り続け、
波音だけが聞こえていた。
(なぜだ)
と景親が辺りを見渡したときである。
突如、兵どもが獣と化した。
正気を失ったとしか思えない。
関船に従う小早の上で、
能島の兵は卒然として立ち上がり、
夜空に向かって一斉に咆哮を上げ始めた。
耳を聾する甲高い咆哮だ。
まるで狼の群れが上げる遠吠えのごとき叫び声であった。

上下2巻で、千ページ近い。
「週刊新潮」に2011年5月5日、12日合併号から
2013年3月7日号まで
1年10カ月に渡って連載。
2014年本屋大賞を受賞。

巻末に主要参考文献として、
84冊にのぼる本が記されている。
その中には「信長公記」「石山軍記」「フロイス日本史」などの有名どころから
各市歴史、水軍史などがあり、
戦いの描写はごく精密。
まさに「講釈師、見てきたような嘘を言い」の世界。
史実に裏打ちされながら、
和田竜が想像の翼を広げた労作である。

サイトでは、
勝手に映画化の話を進め、
勝手に配役したりしている。
景を演ずる女優として、
杏、綾瀬はるか、宮崎あおい、
能年玲奈、満島ひかり
などがあげられている。
いっそのこと外人を起用して、
シャーロット・ケイト・フォックスや
ユマ・サーマンの名前をあげる人もいる。
まさかねえ。






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