『祈りの幕が下りる時』  書籍関係

〔書籍紹介〕

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このミステリーがすごい! では10位
週刊文春ミステリーベスト10では2位
第48回吉川英治文学賞受賞した作品。

加賀恭一郎シリーズ10作目。

仙台でスナックを営む宮本康代は、
行き場をなくしていた田島百合子という女性を雇う。
百合子はわけありで、
離婚し、東京に一人息子を残して来たらしい。
数年後、百合子は心臓の病気で亡くなる。
康代は百合子が親しくしていた綿部俊一に連絡をとる。
ここで主人公の加賀恭一郎が登場。
実は百合子は加賀の失踪した母親だった。
綿部は、加賀の住所を突き止め、康代に知らせるが、
そのまま姿を消してしまう。
遺骨の引き取りのために仙台へやってきた加賀は、
康代から生前の百合子の様子を尋ねる。

それから10年の歳月が流れ、
葛飾区にあるアパートの一室で、
滋賀県在住の押谷道子の腐乱死体が発見される。
部屋の住人は越川睦夫という男で、
消息を絶っていた。
押谷道子はなぜ滋賀県から東京へやってきて、
越川睦夫の部屋で殺されることになったのかと、
加賀の従弟の松宮修平が捜査を開始する。
同時期、新小岩の河川敷にあるホームレスの小屋で、
焼死事件があり、
その男性が越川睦夫なのではないかと松宮は疑う。

滋賀県へ出向いての捜査の中、
無銭飲食をし、逃げる途中怪我をした女性がおり、
押谷道子はその女の顔に見覚えがあり、
中学の同級生で演出家の浅居博美さんのお母さんじゃないかと考え、
それで東京に住む博美を訪ねて行ったのだということが分かる。
博美は著名な演出家で、
明治座で「異聞・曽根崎心中」を上演中だった。

加賀は博美と仕事上の付き合いがあった関係で
事件に関わり、
大胆な推理をする。
こうして、浅居博美の過去にかかわる事件があぶり出されて来る・・・

というわけで、
複雑なストーリー
錯綜する人間関係
豊富な伏線
それらが最後に収束して来る様は、
確かにベストセラーを多発し、
映像化作品も多い作者の面目躍如というところ。

越川睦夫の部屋から発見されたカレンダーに、
1月に柳橋、2月に浅草橋、3月に左衛門橋・・・
というように12カ月に渡り橋の名前が書かれている。
その謎も最後になって解けるが、
この部分はなかなかいい。

加賀の失踪した母親との問題も判明し、
シリーズものとしての発展もある。

評論家の中には、
松本清張の「砂の器」との類似を指摘する人もおり、
東野版『砂の器』ともいえる」と評する人もいる。
なるほどとらえ方によってはそうなるか。
明治座で上演している
浅居博美演出の芝居「異聞・曽根崎心中」の50日間にわたる上演日に合わせて
事件が起こり、事件が解決するのだが、
その「異聞・曽根崎心中」が犯人の心象風景になっている点など、
まさに「砂の器」との類似点といえるだろう。

ただ、浅居博美の過去の部分がどうも無理矢理で、
小説の上での作り事のように見えてしまうところが難。
捜査の部分が
都合よく浅居博美の回想になるところも不整合。

私は元々東野圭吾の文章は嫌いで、
ああだった、こうだった、
そうなって、こうなった式の
味気無いシナリオのような描写が好みに合わない。
ただ、大きなストーリーを遅滞なく進めていく手腕はあり、
小説家としての力量は認める。

この作品も映像化されると思うが、
よほどうまく脚色し、
巧みに演出しないと
無残な結果になってしまうような気がしてならない。
傑作とのすれすれのところに行きそうだ。






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