『ゴールデンボーイ』(『ショーシャンクの空に』原作本)  書籍関係

〔書籍紹介〕

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スティーヴン・キングによる
作品集「恐怖の四季」の中の2編を収録。
この作品集は、題名通り
春夏秋冬を背景とする4つの中編を収めたものだが、
とても一冊には収まりきらないため、
二分冊で刊行。
前半の春夏編は
「刑務所のリタ・ヘイワース」
「ゴールデンボーイ」
後半の秋冬編は
「スタンド・バイ・ミー」
「マンハッタンの奇譚クラブ」
の2編ずつを収録。

12月12日のブログ↓に掲載した

http://star.ap.teacup.com/applet/shokuniku/20141212/archive

「ショーシャンクの空に」の原作に当たるのが、
「刑務所のリタ・ヘイワース」
原題は『Rita Hayworth and Shawshank Redemption』
(リタ・ヘイワースとショーシャンクの贖い)で、
映画の「ショーシャンクの空に」は、日本で付けた題名。
日本で本が出た頃はまだ映画化されていなかったので、
この「刑務所のリタ・ヘイワース」が
刊を重ねても踏襲されている。

妻と愛人を殺したという冤罪で
ショーシャンク刑務所に服役した銀行家のアンディー・デュフレーンが
その才覚で刑務所を変え、
絶望的な状況の中で脱獄を成功させるまでの顛末を
同じ終身刑で刑務所内の調達屋のレッドの口を通じて語られる。

脱獄ものといえば、
書き古されたジャンルだが、
スティーヴン・キングらしい語り口で
人物も生き生きと描かれる。
そして、その脱獄の手口にこめられた
アンディーの執拗な希望追究の姿に
読者は感心すると共に快哉を叫ぶ。
読後感がすこぶるいい作品

映画化作品、舞台化作品共に
多少の改変は加えられているものの、
ストーリーそのものは原作通りで、
ストーリー・テラーとしてのキングの面目躍如の作品。


「ゴールデンボーイ」は、
原題は『Apt Pupil 』(かしこい生徒、飲み込みの早い教え子等の意味)で、
「ゴールデンボーイ」は日本で付けた題名。
映画化作品にも「ゴールデンボーイ」の邦題が付けられた。

こちらは三人称で語られる。

ナチによる強制収容所の所業に異常に関心を寄せる少年トッドは、
バスの中で一人の老人の姿に旧ナチの残党を発見する。
アーサー・デンカーと名前を変えたその男は、
アウシュヴィッツの副所長で、
その後、パティンの強制収容所の所長をつとめて
「吸血鬼」と呼ばれ、
戦後、ドイツを脱出し、アルゼンチンやメキシコを転々とし、
今はカリフォルニアの片田舎の町にひっそりと暮らす
クルト・ドゥサンダーだった。
イスラエル発行の指名手配書にあった指紋と照合したトッドは
ドゥサンダーであることを確信し、
ある日、ドゥサンダーの家の呼び鈴を鳴らす。
最初別人だと言っていたドゥサンダーは
トッドの脅迫に、ついに認め、
要求は何だと言うと、
トッドの要求は、
真相をばらさない代わりに、
強制収容所の出来事を全て話してくれ、
というものだった。
実際に何があったのか、
虐殺はどのようにして行われたのか、
ガス室の様子はどうだったのか、と。

こうして、トッドの求めに応じて
収容所での悲惨な実態を説明すると、
ドゥサンダーの中で封印された過去が蘇って来る。
そして、それはトッドにとっても同様の悪夢の始まりだった・・・。

ナチの悪行に異常な関心を持つ少年にとって
その現場にいた人物の詳細な描写が
甘美な喜びを見出す、
という点で、異常心理の話なのだが、
誰の心の深いところにもある秘めた願望が表れて震撼とさせる。

始めトッドがドゥサンダーを脅迫していたのが、
ある一点からドゥサンダーがトッドを脅迫する逆転も面白い。
衣裳屋から調達したSS将校の服をドゥサンダーに着せて
行進させると、
次第にドゥサンダーの姿が鬼気を帯びて来るあたりはゾッとさせる。
成績が落ちたトッドに対して対応するカウンセラーとのくだり、
心臓発作のドゥサンダーが
そのままでは病院に連絡できず、
トッドの力を借りなければならない事情など、
サスペンスも働く。
そして、いつドゥサンダーの正体がばれるかという緊張感。

聞けば、スティーヴン・キングはこの小説を2週間で書いたという。
本当にキングの上には
「創作の神様」が宿っているのがよく分かる。

ラストはちょっと納得しかねるが、
長丁場を飽きさせずに
最後まで引っ張る、やはりストーリー・テラーの力業である。


〔旧作を観る〕

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上の小説「ゴールデン・ボーイ」を
ブライアン・シンガー監督で映画化したのがこの作品。
1998年。
邦題は小説を踏襲。
トッドにブラッド・レンフロー

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ドゥサンダーにイアン・マッケラン(適役)。

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短い時間に完結しなければならないので、
展開はやや駆け足。
特に、封印した過去を話すことで
ドゥサンダーに起こった変化が
悪夢の描写もなくスルーされているのが不満。

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後半の浮浪者殺しもちゃんと理由づけがなされ、
トッドの連続殺人や銃での殺傷もなくなり、
まともな展開。
特にラストの改変は論議を呼ぶところだが、
原作はやや主人公を異常者として追い込んでいく感があり、
映画の描き方の方が
普通の一人の高校生の抱いた心の闇として納得性がある。






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