『推定脅威』  書籍関係

〔書籍紹介〕

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正体不明の侵入機に対して発進した
スクランブル飛行中の自衛隊航空機TF−1が墜落した。
その半年後、再び侵入機を追っていた同じ機種が墜落し、
パイロットは緊急脱出をする。

最新型の自衛隊機が、
なぜ墜落事故を続けて起こしたのか?
防衛省は機体を製造する航空機メーカー、
四星工業にその検証を依頼する。
四星工業では入社三年目の技術者・沢本由佳が
上司の永田とともに業務に当たる。
シュミレーションの結果、
事故原因はパイロットの単純な誤操作によるものだと判断されたが、
航空機メーカーの技術者たちは、どこか不可解なものを感じる。
永田は沢本が言った何気ない一言が気になり、
すでに会社を辞めてデザイナーをしている同期の倉崎に話を持ちかける。

一方、講習会の講師をつとめた沢本は、
第2の事故の当事者であるパイロットから
事故が起きるように
侵入機に誘導されたような気がする、
との感触を聞かされる。

真相を追う沢木の前に
TF−1設計時に官(防衛省)と民(航空機メーカー)が
それぞれ抱え込んでいた闇が見えて来、
ある人物の姿が浮かび上がる。

侵入機の正体は何か。
その意図するところはどこにあるのか?
第3の侵入機を追うTF−1は事故を起こさなかったが、
第4の侵入という「推定脅威」に向かって、
技術陣、パイロット合同での準備が進む・・・。

作者の未須本有生氏は、
東京大学工学部航空学科卒業後、
大手メーカーで航空機の設計に携わった人。
それだけに航空機、戦闘機についての知識は半端ではなく、
その知識を総動員した精密な描写が続く。
素人にはついていけないところもあるが、
飛行機の設計思想、メカニズム、
メーカーとユーザーの微妙な関係、
パイロットの思考など、
分からないながら、そんなものかと読み続ければ
それなりのカタストロフィーは味わえる。

ただ、技術面の充実度に比べ、
登場人物の描き方がいまいちで、魅力に欠ける。
戦闘機の飛翔シーンがいいのに、
役者が大根で興をそぐ、という感じ。
ところどころ挟まる、
犯人の心境の独白は不要。
登場人物間の恋愛模様、
ましてベッドシーンも不要。

まあ、後は修練を重ねて、
登場人物の魅力を両輪の輪の一つとした
航空ミステリーを書いてほしいものだ。

第21回松本清張賞受賞作

第4の侵入を迎える準備段階での
次の議論は笑える。

倉崎が提案を持ちかけた後の二人のやりとりは、
漫才みたいで楽しかった。
倉崎が
「神階が陰謀の首謀者である確率は
50パーセントくらいで、
次に何かを仕掛けてくる可能性も
50パーセントくらいだと思う」
と言うと、後藤は
「そんな雲をつかむような不確定なことのために、
こんな手の込んだことをするのか?」
と詰め寄った。
それに対して倉崎は、
「ほぼ100パーセント有り得ない脅威
からの攻撃に備えて、
日々膨大な経費を使って訓練をしている
自衛隊の隊長の言葉とも思えない」
と、したり顔で応戦したのだ。
これには後藤も
「それを言っちゃあ、身も蓋もないじゃないか」
と苦笑いするしかなかたっのだ。
あの時、沢本はついふき出してしまったが、
平岡も
「これは、防衛という概念そのものに関わる問題だ」
と困惑気味だった。





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