『めぐり逢わせのお弁当』  映画関係

〔映画紹介〕

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世界には珍しい職業というのがあるが、
インドのムンバイの「ダッバーワーラー」もその一つ。
ダッバーとは、ヒンディー語で「箱、容器」、
ワーラーは、「〜する人」で、
意味は「弁当箱の運び屋」
お昼の弁当を弁当屋から配達する仕事なら日本にもあるが、
ダッバーワーラーの違うところは、
家庭で奥さんが調理した弁当を個別に集め、
ご主人の勤務先へ届ける、というところ。

勤務先で供される食事が嗜好にあわないというだけでなく、
ヒンズー教やイスラム教の禁忌に触れたり、
カースト制の問題もある。
下位のカースト出身者が作った食事を食べるのに抵抗があるのだ。
確実なのは、奥さんが作った料理を食べること。
だったら、日本のように愛妻弁当を持参したらいいようなものだが、
配達料金が安いため、
運ばせた方が便利、ということらしい。

こうして、毎日17万5千個以上の弁当箱が
利用客の自宅とオフィスの間を行き来する。
配達先が遠方の場合には
一度都市単位に集めてから鉄道に乗せ、
最寄り駅から配送担当者に渡すという方式を取り、
毎日4千〜5千人のダッバーワーラーたちが
ランチタイムに間に合わせて配達している。
一ヶ月の賃金は約2千〜4千ルピー(3300円〜6700円)。
配達間違い600万個に一つの割合でしか起きていないとの事、
つまり、1月に1件である。

前向きが長くなったが、
この映画は、その600万個に一つの誤配達の物語。

主婦イラが、
最近冷たくなった夫の愛情を取り戻すために腕を振るった
4段重ねのお弁当。
回収され、自転車と電車で運ばれ、
届いたところは
保険業務に従事する勤続35年で
早期退職を控えた男やもめのサージャンの元。
契約していた弁当屋のものと思って食べたが、
そのおいしさにびっくり。
一方、帰宅したイラの夫が感想を言う料理が
自分の作ったのとは別物で、
どうやら間違って届いているらしいと気づいたイラは
翌日のお弁当に手紙を忍ばせる。
感想の返信をするサージャン。
こうして顔を知らぬ同士の、弁当箱を介した文通が始まり、
やがてイラは夫の浮気に対しての愚痴を、
サージャンは亡くなった妻との想い出を書き、
二人の心は次第に近づいていく。
「二人で一緒にブータンに行って幸福になろう」
「一度逢いましょう」という提案を受け、
カフェで二人は待ち合わせをするが・・・。

このあたりからの展開が切ない
二人の間にあったのは、
別の障害・・・。
同じ年齢層の者としてはウルウル来た。
最後のあたりは涙があふれて止まらず、困った。

サージャンを演ずるのは、
「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」で
大人になったパイを演じた
イルファーン・カーン
妻を失い、一人暮らしの中、
隣の家の家族団欒を羨ましげに眺める
男やもめを演じて味わい深い。
最初の方では窓を閉められてしまったサージャンだが、
最後は団欒の場から手を振られるのもうまい。
独身男が手料理に舌鼓を打つ心理を説得力豊かに演ずる。
最初偏屈だったサージャンが
毎日おいしい弁当を食べている間に、
次第に後輩にも心を開く様子も手に取るよう。
イラを演ずるニムラト・カウルは、
新人だが、
適度な美しさが丁度いい。
地に足のついたインドの主婦役を巧みに演ずる。
サージャンの後任者シャイクを演ずる
ナワーズッディーン・シッディーキーは、
若手の新進。
インド映画独特の笑わせ役で
孤児の頑張り屋を明るく演ずる。
「人は間違った電車に乗っても、正しい場所にたどり着く」という
大切なメッセージを伝える。
イラの階上に住む「おばさん」は
夫の介護に生きる生活で
ついに顔を出さないが、
面白い味つけ役。
このあたりも上手だ。

監督・脚本のリテーシュ・バトラは、
この作品で長編デビュー。
私の「持病」の眠気を出させない
確実な絵作りだ。

インド映画がミュージカルばかりではないことを知らせる
貴重な作品。
まさに「珠玉の一篇」の称号がふさわしい映画だ。

5段階評価の「4. 5」

予告編は、↓をクリック。

http://www.youtube.com/watch?v=EVsWqdauGHw&feature=player_embedded


なお、興味のある方のために掲載すると、
↓が標準的なステンレス製の3段重ねのダッバー。

                                           クリックすると元のサイズで表示します

こんな缶に入れられて運びます。                            

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大量の弁当をこうやって。   

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列車への積み込み。

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時間が不正確なインドの鉄道なのに、
ちゃんと時間通りに弁当が着くのが不思議。

こうして手押し車で運び、

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最後は自転車で職場へ。

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