『孤獨の人』  書籍関係

〔書籍紹介〕

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この作品が発表されたのは、昭和31年の春。
学習院で学ばれた皇太子(現天皇)を取り巻く人間模様を描く。

ちなみに、
皇太子は先帝(昭和天皇)とは大きく違う少年時代を過ごした。
先帝は初等科から数名の学友と共に
東宮御学問所で学ばれたが、
GHQが東宮御学問所の設立を許可しなかったことから
皇太子は学習院で初等科から中等科、高等科へと進む。
この物語は、
学習院高等科ですごす皇太子の姿を
級友の視点で描いている。
小説の中に皇太子が登場するなど珍しいことで、
この前後の例を知らない。

級友たちは元華族や政府高官の息子たちで占められ、
その中で皇太子の歓心を買おうという動きが働く。
その学生たち相互の葛藤と共に、
「ご学友」を売り物にする親戚たちとの葛藤も描かれるが、
どちらかというと、その部分の描写は古い。
登場人物の一人吉彦とその叔母との恋愛模様や
吉彦の父親との相剋など、
今読んだら恥ずかしくなるようなものだ。
学生同士の観念的な会話も鼻につく。

ただ、皇太子が登場する場面は異彩を放つ。
学友と共に寮を抜け出し、
電車に乗って、銀座でカフェに入るシーン。
東北地方に修学旅行に出掛けた皇太子と学友たちを
仙台市民が歓呼の声が迎えるシーン。
皇太子18歳の誕生パーティーで
皇太子を巡る学友たちの確執。
おそらく、事実に基づいて描かれたと思われ、
臨場感がある。

こうしたシーンは
興味もあって未知のものに触れる新鮮さがある。

古臭い小説だが、
かつてない人物に焦点を当てた点で特筆される小説だろう。
あの時代にこのような小説が登場したことの驚き。
かえって今の方が
描きづらくなっているのは、何故だろう。





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