『総理の夫』  書籍関係

〔書籍紹介〕

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長い間与党だった「民権党」の分裂で
民権党の元幹事長だった原久郎一派が党を割って
内閣不信任案に賛成し、
解散総選挙。
その結果、
原が立ち上げた「民心党」他4党が連立政権を樹立。
しかし、原は総理にはならず、
与党第2党である「直進党」の党首を総理に担ぎ上げた。
それは、日本の憲政史上前代未聞の出来事だった。
総理に指名されたのは、相馬凛子
史上最年少にして、初の女性総理の誕生である。

という、架空の、というか、
近未来の設定で、
女性総理誕生の顛末とその後、
を描くのがこの小説。

本書は、題名にあるとおり、
その総理の夫
相馬日和(ひより)の視点から
日記形式で描く。

なにしろファースト・レディならぬ
ファースト・ジェントルマン
勤務先の鳥類研究所に電車に乗って出勤もままならず、
党差し向けの車で出勤するはめになる。
「総理の夫担当」の広報係がつき、
夫の動向はGPSで常に監視される。

職場は別、と言っても
公務の性質によっては夫君同伴でなければならないこともあり、
やがて総理公邸に引っ越せば、
ますますプライバシーも夫婦の団欒もなくなる。

実は、凛子が総理になったのも、
腹黒いベテラン政治家・原の陰謀で、
凛子に消費税率上げの法案をやらせたあと、
後釜に原が座る予定だった。
しかし、凛乎の支持率が80%を越える高率を維持したことから
その計画にも狂いが生ずる。
というのも、
凛子の「日本の政治を変える」「日本を変える」という
「本気度」が国民に浸透したからだ。

凛子は最年少で開田川賞(芥川賞のことか)を受賞した父と
国際政治学者を母に持ち、
東京大学法学部卒、ハーバード大学で博士号を取り、
シンクタンクの研究員を務めたのち、
政治家に転身。
そのしがらみのなさと、
曲がったものが大嫌いな性質とで、
次々と日本の政治の慣行を打破していく。
演説がうまく、原稿を見ない、
その上、美人。

対する日和は、東京大学卒で博士号も取得、
日本を代表する大財閥相馬一族を実家に持つ。

絵に描いたようなエリート夫婦で、
その周辺に起こることは、
女性向けの小説のようだが、
日本の政治に対する批判は鋭い。

凛子の改革の大鉈は、まず足下に振り下ろされた。
閣僚も含めて、
全議員の給与を削減。
JR券・航空券等の無料配付、
議員宿舎の無料配布、
海外視察、議員年金等、
国会議員の特権の見直し、廃止。
ほとんど議員全員を敵に回したねない断行であったが、
「私たちは本気で国民の痛みを分かちあっていますか?」
と、凛子は問いかけた。
ちなみに、
「自分の給与は、任期中、
研究員時代の給与レベルに戻す」ことにした。
国家予算歳出の徹底的な見直し。
これは、かつて民権党内閣が行った「仕分け」とは一線を引くもので、
官僚の天下り先となっていた
かたちばかりの政府系財団法人や、
どう見ても必要のない公共事業など、
予算的にインパクトのある案件を
廃止したり凍結させたりを断行した。
これは、第一次相馬内閣のときから徐々に実行され、
一年経っていっそう大掛かりに見直されることになった。

こうしたやり方は
古い利害調整型の政治家や
しがらみにがんじがらめになった政治家にはできないことだ。
「誰が(首相に)なっても同じ」
というのが、自民党時代、
次々と総理の顔が代わった時に言われたことだが、
安倍総理になって、何かが変わった。
リーダーの「本気度」が
国の行方を左右する。
凛子の登場はそれと同じだった。
総理の本気度に国民が共鳴した時、
政治は変化を遂げる。

しかし、いざ消費税増税法案提出間際になって、
原が約束を違える。
凛子の危機。
それをどうやって乗り切ったか。
そして、第2次内閣組閣後、
凛子の上に襲った変調は・・・

そのあたりは読むのを楽しみにしてほしいが、
とにかく政治を変えるのは、
しがらみにとらわれず、
古臭い政治手法によらず、
リーダーの確信と
国を動かす情熱だということが分かる。
国民がそれに応える姿が嬉しい。

日和の母親、大財閥の背後の操縦者、
相馬崇子の存在も魅力的。
最後のくだりで崇子が活躍するのも納得出来る。

隣の国では一足早く女性大統領が誕生しているし、
着眼点が素晴らしく良く、
非常にタイムリーな小説
しかも、読み物として面白い。





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