『凶悪』  映画関係

〔映画紹介〕

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ノンフィクション「凶悪−ある死刑囚の告発−」の映画化。
つまり、実話をベースとした作品。

雑誌「明潮24」の記者・藤井修一は
追っていた事件の取材停止を上司に命令されてくさっていた。
編集部に死刑囚・須藤純次から手紙が届き、
上司の指示で須藤に面会した藤井は驚愕の事実を知らされる。
警察も知らない須藤の余罪、3件の殺人事件
その首謀者である木村孝雄の存在。
「自分だけが捕らえられ、
主犯がのうのうと世間で暮らしているのが許せない」
と主張する須藤の告白に、
当初は半信半疑だった藤井も、
取材を進めるうちにその告発に信憑性があると感ずるようになる。
しかし、上司はもっと確かな証拠がなければ、と言い、
藤井は取材に没頭して行く。

この話に、藤井の家庭環境がからむ。
藤井の母は認知症で、
その世話を任された妻・洋子との間に軋轢が生まれていたのだ。

映画は取材を続ける藤井の姿を追い、
ある時点で木村や須藤たちの犯罪の現場に跳躍する。
この展開はあざやかだ。
借金の揉め事で殺してしまった男を焼却炉で焼く。
広大な土地を所有する老人を生き埋めにしてしまう。
そして、経営の立ち行かない電器店の店主を
家族の依頼で殺し、
保険金をせしめようとする。

この部分がやや長い。
木村や須藤、その舎弟たちの狂態が延々と描かれる。
見ていて苦痛になるほどだ。
ここは途中、藤井の取材を挟み込み、
木村が人の世話をする人格者で、
「先生」と呼ばれる人物であることで
現実との落差を埋めきれない藤井、
という描き方もできたのではないか。

ただ、この間の木村を演ずるリリー・フランキー
須藤を演ずるピエール瀧は抜群で、
他の分野で活躍する二人にこのような演技をされたのでは、
職業俳優は顔色を無くすだろう。
同時期に公開された「そして父になる」で暖かい父親を演じたリリー・フランキー、
テレビドラマ「あまちゃん」で懐の深い寿司屋の大将を演じたピエール瀧。
その落差が大きいだけに
演技の幅の広さが際立つ。
特に、法廷で再会した二人の睨み合いは
背筋が寒くなるほどだ。

生活苦、借金地獄にあえぐ家族の要請で
保険金殺人に走り、
それが警察も見抜けない。
そこに老人問題がからみ、
「人の命を金に変える錬金術師」と言われた男が生き延びる。
今でも表に出ない形で行われているであろう事件を描いて
現代を切り取った。

ただ、私には、
木村が遊戯的に殺人にも手を出す
軽薄な人物として描かれているために、
「先生」と呼ばれる理由が分からなかった。
ここは世間的な顔と凶悪な顔を対立させた方が
戦慄は深いような気がする。

また、記者・藤井が家庭を破綻させ、
会社の取材ルールを無視してまで
事件にのめりこみ、
果ては単独で死体を発掘(やり過ぎ)しようとする努力の
動機が分からなかった。
家庭での妻と母の暴力的対立などで
誰の心にも内在する「凶悪」を描こうとしたのかもしれないが、
無駄な創作だったような気がする。

また、「須藤は懲役20年の判決」という説明があるが、
死刑から減刑されたのだと誤解を与える。
別の殺人事件で死刑は確定しており、
20年とは本件での判決、
ただし、死刑囚に刑は執行されない、
という説明もなく、
これも不要と感じた。

だが、身の毛もよだつ実在の事件を背景に
人間の持つ冷血と凶悪な面を描き、
それが市中に内在している事件だとする本作は
奥が深く、力作であることは間違いない。

5段階評価の「4」。

なお、事件をテレビで取り上げた「アンビリバボー」の映像は、
映画と実際の違いが分かって興味深い。
映画を観た後にどうぞ。↓

                                        
http://v.youku.com/v_show/id_XMzM1MTkxOTIw.html?firsttime=1420



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