『クロワッサンで朝食を』  映画関係

〔映画紹介〕

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エストニアに住む中年女性アンヌは、
結婚、離婚、子育ての後、
老人ホームの仕事も
母親の介護でやめ、
とうとう母親も亡くし、
一種の脱け殻状態になっていた。
そんなところに、
パリでの家政婦の仕事が舞い込む。
エストニア人の老婦人の介護だという。

娘の勧めもあって、
あこがれのパリに飛び立つアンヌだったが、
待ち受けていたのは、
高級アパルトマンに住む
気難しく、偏屈で、気位の高い老婦人フリーダで、
さっそく
「家政婦など頼んでいない。
荷物をまとめて帰ってくれ」
と言われる。
実の雇い人で
カフェを経営するステファンに説得され、
留まるものの、
朝の食事を
「プラスチックを食べさせるつもりか。
クロワッサンはスーパーではなく、
パン屋で買うものだ

と注文が付く。
睡眠薬で自殺しないように
預かった薬箱の鍵についても
「ここは私の家だ、鍵をよこせ」
と迫られる。

そんなアンヌの慰めは、
夫人が眠った後、
夜のパリを散歩することだった。
やがて、ステファンがフリーダの若い愛人だったことや
カフェはフリーダがステファンに贈ったものだ、
などという事情が飲み込めて来る。
誠実に尽くすアンヌにフリーダも次第に心を開いてくれるようになるが、
よかれと思ってしたアンヌの計らいが
思わぬ結果を招いて・・・。

というわけで、
女性版「最強のふたり」のような作品。
違うのが、
パリに住む異邦人の孤独が扱われていることで、
映画のフランス語題は「Une Estonienne a Paris」。
つまり、「パリのエストニア女」
「クロワッサンで朝食を」は、
日本で付けたもので、
うまい題名をつけたものだ。

エストニアでの事情から
パリでの老夫人との出会い、
反発、融和の経過が
大変ていねいに描かれており、
納得できる。
フリーダを
往年の名女優ジャンヌ・モロー
憎たらしく、そして可愛らしく演ずる。
85歳の主演映画だ。
アンヌを演ずるのは、
エストニアの女優ライネ・マギ
始め野暮ったかったアンヌが
パリの町になじんで次第にきれいになっていくところが見物。
ステファンを
パトリック・ピノー男前に演ずる。
ほとんど三人が中心の話だが、
役者の魅力が開花すると、
このような見事な映画が誕生する。

エッフェル塔をはじめ、
パリという町が魅力的に描かれ、
この町だからこそ
片隅に存在する異邦人の孤独が光を発するのだと分かる。

終盤、
アンヌがスーツケースを引きずって
夜のパリを彷徨する一方、
ステファンがフリーダに添い寝するあたりで
涙が止まらなくなった。
観光客がいなくなったシャイヨー宮で
たった一人でアンヌが眺めるエッフェル塔の美しいこと。

大都会の片隅で行われている
どこにでもある孤独と人の触れ合いによる癒しのドラマ
ちょっぴり苦く、少しだけ甘く、
その味加減がとてもいい。

監督はエストニアの新鋭イルマル・ラーグ
期待できる。

エストニアでは、家では靴を脱ぐんだと初めて知った。
また、映画の後、
スーパーではなく、
パン屋で大きなクロワッサンを買ったら、
本当においしかった。

5段階評価の「5」

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