『冬の旅』  書籍関係

〔書籍紹介〕                     
                
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物語は、緒方隆雄が刑務所から出所するところから始まる。
最初にしたかったことは、時刻表を買うこと。
そして、次にしたいことは、
なんば花月の近くの店で「肉吸い」を食べること。

こうして、緒方の過去が語られる。
県立高校を出て、専門学校に通い、
アルバイト先の中華チェーン店に就職し、
店長候補として嘱望されながら、
店員との男色関係を疑われて解雇され、
次には新興宗教の広報誌作成の仕事につく。
そこで、阪神・淡路大震災に対して
教団からの救援隊に従事し、
そこで知り合った女性、鳥海ゆかりと結婚するものの、
女性が突然の失踪。
その上、経費の不正が明るみに出て、解雇。

仕事と家と家族を失った緒方は、
お好み焼き屋の女主人にみこまれて住み込みになるが、
店が火事で消失、
悪い仲間に誘われて強盗の見張りをして逮捕、服役。
出所したものの、
受け入れ先もなく、
唯一の財産であったキャリーバックも盗まれて、
一文無し状態になり、
行き着く先は・・・

この回想を縦軸に、
関わった人間たちの人生も語られる。

最初に男色関係を疑われ、
緒方の転落のきっかけを作った白鳥満は、
恋人に向かい、
「これから聖地巡礼の旅に出る。
そのあいだるきっと僕は神をみつけるだろう」
という言葉を残してアメリカに渡り、
マンソン事件の現場、
ブランチ・ダヴィディアン教団事件の現場、
ケネディ暗殺事件の現場、
人民寺院事件の起こったガイアナのジャングルまで訪れる。
白鳥満の言う「聖地」とは、
そのような凄惨な事件現場だった。
そして、帰国後、輸入会社に就職するも、
行きずりの男をマンションで撲殺する。

緒方と結婚したゆかりは、
実はSMクラブの「女王様」で、
緒方との幸福な生活の中でも足を洗えず、
その世界に舞い戻っていく。
そして、緒方の家を出る時聞いていたフォルクローレを聞きながら、
マンションの窓から飛び下りる・・・。

緒方と同房になった老人・久島は、
妻との介護の生活に苦しみ、
ついに妻の首を締めて服役する。
しかし緒方は知らなかったが、
久島とは、
不思議な縁で結ばれていた。

このように緒方と関わった人物たちの悲惨な人生が解きあかされる中、
緒方自身もついに行き着くところまで行ってしまう。

阪神・淡路大震災の被災地を救援隊で訪れる場面がリアル。
また、久島が雑居房で緒方に語ってきかせる仏教説話が印象深い。
極悪人が坊主の説教を聞いて発心し、
刀、槍、弓を捨てて頭を剃り、
引き止める手下たちに別れを告げて西に向かう。
陸地の果てに行き着いた男は、
そこにあった木に登り、
そのまま死に絶える。
死者の口からは真っ白な蓮華の花が一輪、生い出ていた・・。

久島と緒方は次のような会話をする。
「この世は浄土ぞ」
「まさか、地獄やないか」
「いや、仏さまの曇りなき目には、
この世はきっと浄土に映っとる」
「おれたちには地獄で、
仏さんには浄土とは、
訳が分からん」


そのとおり地獄の中の浄土を歩いた
一人の人物の転落の人生を描きながら、
不思議な諦念に満ちた作品。

これは次回の直木賞候補だろう、
と思ったら、
作者の辻原登、
既に1990年、芥川賞を受賞していた。
やはり作品の深みが違う。


ブダペスト  旅行関係

アムステルダム経由でブダペストにはいり、
今日は観光初日。
英雄広場、王宮、漁夫の砦などを回りました。
昼食後は、
5時間にわたる自由時間。
くさり橋、オペラ座の見学ツァー、
地下鉄、中央市場などをたっぷり。
ヨーロッパで2番目に長い
ドナウ川が町の中央をゆったり流れ、
かつてのオーストリア•ハンガリー帝国の
黄金時代の夢を思わされました。




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